ワインを愉しむ時間を特別なひとときにする至高の道具「Toru.Yamamotoのソムリエナイフ」
皆さんこんばんは。
今回の記事は文房具から少し離れ、番外編のアイテムレビューとなります。
当ブログの番外編だと、DAPなどの音響機器やカメラに関するレポートが多いのですが、今回は「ソムリエナイフ」についての記事となります。
ソムリエナイフについては、もうかなり前にフランスはペルスヴァルの「ル・ソムリエ」をレポートしました。
その頃からソムリエナイフの魅力に本格的に取り憑かれ、様々なメーカーのモデルを入手しては使用感の比較等を行っているこの頃です。
ソムリエナイフの良さは、なんといっても少し短めなボールペンほどのサイズに、ワインのコルクを抜栓するための3つの機能がコンパクトに盛り込まれているということ。
携行できるプロフェッショナルな道具として非常によくまとまっており、ワインの栓を抜く以外にも簡易的なカッターナイフとしても使えます。(バッグに忍ばせておくと、いざカッターが必要なときに何かと便利なんですよね)
それでいて、メーカー、サイズ、形状、素材等バリエーションが豊富で、筆記具にも通じるところがあると思うのです。
今までは、ワインの本場フランスのティエール地方で作られたソムリエナイフ、例えばシャトー・ラギオールやフォルジュ・ド・ライヨール、ラギオール・アン・オブラックといったメジャーなメーカーに加え、ペルスヴァルのようなカトラリーブランドのソムリエナイフに目がいきがちでしたが、日本国内でも素晴らしいソムリエナイフが作られています。
上記のようなフランス製の高級ソムリエナイフにも匹敵する精度や操作感の日本製ソムリエナイフで、最も有名なのが岐阜県関市で作られる「ATHRO(アスロ)」製のソムリエナイフ、そして料理包丁で信頼のある貝印製のソムリエナイフ「旬」ではないでしょうか。
これらのメーカーは一貫した生産体勢のもと作られ、いずれも職人による手作業での素材削り出しや組み上げが行われています。
一方、メーカー製ソムリエナイフでは実現できない、素材や製造過程に拘りが詰まったソムリエナイフ作家によって作られるソムリエナイフもあり、それが今回の記事の主役。
メーカー製では製産コストの関係でどうしても実現不可能な、希少素材の利用やカスタム性、手作業による金属削り出し工程等が魅力であり、完成する作品はもはや「実用可能な工芸品」の域となっています。
少し前置きが長くなりましたが、今回レポートするソムリエナイフは、T.Yamamoto(山本徹 氏)のソムリエナイフ。
使われる素材とサイズ感・使いやすさにおいて、名実共に日本で最も価値のあるソムリエナイフではないでしょうか。
カスタムナイフ作家の山本徹氏が一本一本丁寧に素材を削り出し時間をかけて作られる名品は、まさに一生モノ。ワインを愉しむ一時を特別な時間にしてくれます。
当記事では、T.Yamamoto製ソムリエナイフの各部詳細や他のソムリエナイフとの比較、そして、参考にワインの抜栓方法(ソムリエナイフの使い方)に分けてレポートしていきます。
Toru.Yamamotoのソムリエナイフのデザイン
山本徹氏のソムリエナイフは、ボディ全体を通して滑らかに磨かれた流線型デザイン。
そして、全てのパーツが美しくデザインされています。
ハンドルとフックの間は段差のないシームレスな構造。
鏡面仕上げの金属パーツとハンドルのスタビライズドウッドのコントラストがとても爽やかな作品。ハンドル材は、スタビライズドウッド以外にもスタッグ(鹿角)や樹脂系素材、木材と樹脂のコンビネーションなど様々で、いずれも一点もの。
このソムリエナイフは山本氏の初期の作品で、ボルスターの形状やスクリューの形状が現行の作品と少し異なっています。
作品にはNo.○○○のナンバリングが与えられますが、このモデルのナンバーが何だったかは不明…。
(ご存じの方がおられたら是非コメントを…!)
この至高のソムリエナイフを見ていくにあたり、各部の名称を簡単に掲載しておきましょう。
各パーツの展開図。
それぞれの部品には役割があり、それがわずか十数センチのボディに凝縮されています。
ハンドルはコルクを抜く時だけでなく、ナイフやスクリューを操作する時にも使う重要な部分。
磨かれた木材や樹脂は手触りが滑らかで、スタッグなど角系のハンドルはグリップ感が良いなど特徴があります。
先ほども触れたとおり、こちらの作品は山本徹氏の作品でも初期の頃の作品で、中村英二氏が手掛けるレザーフィールド セフィア(Leather field SEFIA)のレザーケースが付属しています。
グリーンのヌメ革で作られたハイクオリティな専用レザーケースは、サイズがジャストなのはもちろんのこと、ソムリエナイフを傷めないための裏地のスエードや、コバの仕上げが非常に美しい逸品。
ケースとソムリエナイフとのカラーマッチ、コレがたまりません。
このレザーケースは裏地のスエードが表に返してあり、どう転んでもソムリエナイフを優しく包み込むデザイン。
それにしても、ハンドル部分のスタビライズドウッドの杢目の向きと使われる部位。まるで太陽からの七色の光が射しているようにも見えます。
そして、個人的な最注目点はハンドルとボスルターの繋ぎ目の部分!
真っ直ぐなラインではなく2段になっています。このような複雑なデザインでありながら木材と金属の異素材が狂わず嵌合していることに拘りと技術の高さを感じざるを得ません。
次の項ではそれぞれの役割を担った各部分を詳しく見ていきます。
ソムリエナイフの各部パーツ
▲改めてソムリエナイフを展開
基本、各機能はボルスターの内外に折りたたまれており、使う順に展開していくことになります。
昔 中学生の時にウェンガの十徳ナイフが流行ってました(というよりロマンで持ってる人が多かった)が、そのような感じで使う、ソムリエナイフはワイン抜栓専用の折りたたみツールというわけです。
ナイフはハンドルの背の部分に収納されており、爪で簡単に引き出せるように凹みが設けてあります。
大抵のソムリエナイフはこのような形で、何かしらひっかかりのある凹みや出っ張りがついていて、日本製ソムリエナイフはどちらかというと出っ張りが多い中、山本氏のソムリエナイフは海外製品によく見られる凹みがあるタイプ。
爪を入れずにそのままつまみ上げることも可能です。
ナイフの付け根には「T.Yam(Toru.Yamamoto)」のロゴ。
ブレードはギザのあるタイプで、先端は鋭利。ギザがある方がキャップシールを剥がす際に程良い引っかかりができるため個人的には好みです。
ちなみにソムリエナイフの刃渡りは、どのメーカーのものでもだいたい40~50mm程度のため、携帯しても銃刀法違反にはならないのです。(刃渡り60mm以上だと銃刀法違反にあたるため禁止されています)
ナイフの裏側。
「ATS-34」の刻印がありますが、これは旧日立金属(現:プロテリアル)が開発した高級ステンレス刃物鋼。
高い硬度と優れた耐腐食性があり、カスタムナイフ等の高級品に多く使われていました。
なぜ過去形なのかというと、日立金属は2017年頃にナイフ用鋼材の製造を中止しているため。
現在カスタムナイフの素材の主流は粉末ステンレス鋼となっているようです。
そして、私がこの山本徹氏作のソムリエナイフで一番気に入っている部分が、このコルクスクリュー。
めちゃくちゃ美しい螺旋状です。
通常のソムリエナイフに見られる鋼の渦巻きではなく、螺旋階段のような美しい巻き貝の貝殻のような、素晴らしい加工。
しかも、これはヤスリにより手作業で削られているとのこと(!!)。
とんでもない精度の技術!
最後の項で抜栓の手順を追っていくのですが、抜き終わったコルクとコルクスクリュー。
ものすごくスムーズにコルクに刺し込まれていくため、乾燥気味のコルクでも破損なく抜栓できるのです。
同じ構造の螺旋状コルクスクリューを持つペルスヴァルの「ル・ソムリエ」と。
初期の山本徹氏製ソムリエナイフのコルクスクリューは先細りの構造。現在作られている作品は根元と先端で同じ幅となります。
螺旋から螺旋までの幅はペルスヴァルと比べると、長めに設定されているように思います。
通常のスクリューと比べると引き出す際に少し指が痛気持ちいい螺旋階段型のスクリュー。
山本氏のスクリューはスクリュー部分全体を広く掴めるため痛くないのですが、ペルスヴァルはスクリュー自体がコンパクトなため、そのままスクリューを掴んで引き出すより根元を掴んで引き出すほうが痛くなくて安全です。
コルクを刺し込んだあとはフックの出番。
美しい曲線を描くフックはシルバー925のインゴッドから削り出して形成するという拘り。
ステンレスとはまた違う、温かみを帯びたシルバー特有の色合いがたまりません。
内側にはシルバー925を表す「SILVER」の刻印。
この素材の厚みにこの加工精度。通常のソムリエナイフはフックにステンレス等の金属素材が使われますが、シルバー925を用いる利点として、硫化による素材表面の保護膜成形により、経年利用でも「フックの硬さ」を維持できることではないかと考えています。
クロ・ラギオールのようなフックの緩みを再調整できる構造のソムリエナイフであれば問題ありませんが、そうした機能を持たない一般的なソムリエナイフはどうしても経年使用によりフックが緩んできます。(フックがプラプラと動いて保持されないことも…)
ところが山本徹氏のソムリエナイフのフックは、利用回数を重ねても今のところ緩んでプラプラすることもなく、良好なホールド感(硬さ)を維持しています。
これこそが素材選択の妙ではないかと思うのです。
ハンドル部分の厚み。
こちらも素材の美しさが際立っています。通常見る木材の瘤はこちらから見た柄になりますね。
よく磨かれて滑らかな表面はいつまでも触っていたくなります。
ボルスターの流れるような曲面も見とれてしまうポイント。
ソムリエナイフの各部分の詳細を見てきましたが、ハンドメイドのカスタムナイフならではの拘りと技術の詰め込みが随所に見られ、良好な操作感と唯一無二の所有満足感に繋がっていると感じます。
決して安い買い物ではないですが、ソムリエナイフが好きな方には是非一度手に取って頂きたい作品です。
ソムリエナイフのサイズ比較
続いては他のソムリエナイフを用いてサイズの比較を行っていきます。
私はソムリエではないので仕事でソムリエナイフを使うわけではありません。あくまでプライベートの素敵なひとときに。
仕事でソムリエナイフを使う方にとって、サイズ感や重量はとても重要なセクションではないでしょうか。
もちろん、私のようなソムリエナイフ愛好家が使う場合でも、最高のひとときのために自分の手に合った道具を選びたいもの。
ここでは各メーカーの代表的なソムリエナイフのデザインとスペックの比較をしてみます。
ぜひソムリエナイフ選びの参考にして頂ければと思います。
▲国内外の主要な7メーカーのソムリエナイフと並べてみました。
左に行くほどサイズが大きくなります。
重量はハンドルの素材によって大きく変わるためご参考程度に。
高級ソムリエナイフの大御所といえば、シャトーラギオール、フォルジュ ド ライヨール、ラギオール アン オブラックの3メーカーではないでしょうか。
これらのメーカーのソムリエナイフもいずれ記事にしようと思うのですが、ソムリエナイフの平均的なサイズはというとだいたいが120mm~125mmの間となります。
基準となる120mmを切るとコンパクトな部類で、125mmを超えると少し大きめと言えます。
(130mmだったとしても、一般的なボールペンに比べると短いですが…)
山本徹氏のソムリエナイフの素晴らしい点のひとつが、115mmのコンパクトなサイズ感ではないかと思うのです。シャトーラギオールと同サイズ。
ただ本体が小さくなるほど、コルク抜栓の際 大きめのソムリエナイフよりも力の入れどころ(バランス取り)が難しく、玄人向けになると思います。
逆に、ハンドルのサイズが大きくなる(=全長が長い)と楽にコルクが抜けるため、ソムリエナイフを使い慣れていない方は まずは大きめのソムリエナイフで慣れるのが良いかと考えます。
現に、コルクを抜くという動作については左側の2本が相当楽です。
キャップシールを剥がす際の動作について、これは使うソムリエナイフのボルスターからブレードまでの距離が短いほど扱いやすく、長くなるほど使用難易度が上がるように感じます。
ブレードまでの距離が長いソムリエナイフのナイフ部分には、栓抜きが設けてある場合がほとんどですので、キャップシールを剥がすのが苦手な方は、栓抜きのないナイフを持つソムリエナイフを選ぶほうが得策です。
必ず栓抜きが欲しいという方は、右から4番目のセパージュ ラギオールのようにフックに栓抜き機能がついているものを選択するのも手かもしれません。
これらは全て右利き用のソムリエナイフですが、コルクスクリューの巻きが反対の「左利き用」もあるため、左利きの方が購入される際は右利き用を買わないように注意が必要です。
【参考】ソムリエナイフの使い方
それでは山本氏のソムリエナイフを使ってワイン抜栓の手順を見ていきます。
この動作が愉しくてわざわざキャップシールで封されたワインを買うのです。
(スクリューキャップのワインを飲む場合は、この素晴らしい道具の出番がありませんから…)
今回抜栓するのは、チリ産のコスパ最強ワイン「INDOMITA(インドミタ)」。
白ワインを飲むときは大抵インドミタを買ってますね。写真のものはシャルドネですが、ソーヴィニョンブランの方がお勧めです。
まずソムリエナイフのブレードを展開して、ボトルネックの下の方の段に切り込みを入れます。
力を込めやすいようにナイフと親指でしっかりと固定してブレードを回していきます。
最初の一太刀で10時の方向から6時の方向まで時計回りに一気に刃を通し、続いて180°掌を返して、残りの3分の1部分をカットします。
(手の返しは以前のペルスヴァルの記事もご参考に)
それほど力まなくてもキャップシールは切れますが、確実に一周切り目が入っているように。
キャップシールを一周カットできたら、次は縦に一本の切り目を加えます。
これで剥がす準備は万端。
切り目からナイフを入れ、一気に剥がします。
手前方向に引きながらひと思いに剥がすのがコツ。ナイフ先の形状によっても剥がしやすさが異なります。
キャップシールを剥がした後はボトルネックの汚れをティッシュや布で拭き取りましょう。
続いてフックとコルクスクリューを展開して、先端をコルクの真ん中に差し込みます。
コルクの先端は斜めを向いていますので、ボトルを傾けてコルクスクリューの先をコルクの真ん中にしっかりと刺し、固定しましょう。
ボトルを垂直に戻し、しっかりとボトルネックを抑えつつ、ボトルに向かって真っ直ぐにスクリューを差し込んでいきます。
軽くスクリューを押しながら差し込むと綺麗に差し込めます。
シングルアクションのソムリエナイフの場合は、スクリューの根元まで差し込む方がうまくいきます。
ダブルアクションの場合はコルクスクリューの8割くらいまで。
差し込めたらフックを写真のようにボトルネックに引っかけます。
たまに中古のシングルアクションのソムリエナイフでスクリューが外側に曲がった個体を見かけますが、コルクへの差し込みが足りず力任せにコルクを抜いてしまった結果、曲がってしまったものと思われます。
テコの原理でそれほど力を加えずにコルクを抜くのがソムリエナイフの役割でもあります。ハンドルを持ち上げた際、コルクがびくともしない場合は差し込み足らずか差し込みすぎのため、無理に引き抜かず調整してからゆっくりと引き抜いて下さい。
左手でボトルネックとフックをしっかりと固定して、ハンドルを上方向へゆっくりと持ち上げます。
そうするとヌルッとコルクが持ち上がっていき、抜栓の瞬間となります。
コルクが持ち上がっていくほど、フックがコルクに近づいていることが分かります。
テコの原理を意識して操作することで、大きな力を必要とすることなくコルクを引き抜けるのです。
最後はコルクごとソムリエナイフを掴み、腕の力でゆっくりとコルクを引き抜いて抜栓完了!
ポンと音を立てて勢いよく引き抜くのではなく、音を立てずに優しく引き抜きます。
ワインが驚いてしまいますからね(ソムリエ漫画風に言えば)!
コルクには通常のコルクと樹脂コルクの2種類がありますが、螺旋型のコルクスクリューの場合どちらにおいてもスムーズに刺せる気がします。
あとはワインを愉しむだけです。
ワインを飲まない方でも、ワインを飲む家族や身近な人のためにソムリエナイフを扱えるようになっておくととても格好良いと思います。
以上、ワインの抜栓方法でした。
社会人になってもう随分と経ちますが、年を重ねていくうちに“人生は長いようで短い”と感じるようになります。
その短い人生の中で、いかに自分にフィットしたアイテムを探して使えるか。
もちろん、そういったアイテムは一時的な消費物ではなく後世にも引き継いで使い続けられる耐久性と、デザイン的な魅力がなくてはなりません。
それは筆記具や他の携行品も同じで、自分が本当に気に入ったモノはたとえそれが高くても買って使う。そこに自分自身としての拘りがなければ、それはとても味気のない人生になってしまうと思うのです。
当ブログサイトではそのようなアイテム(と、まだあなたの知らない世界)を発信していければと考えています。
さて、今回は山本徹氏が作成されているソムリエナイフをレポートしてきました。
螺旋状コルクスクリューのスムーズな使用感や希少素材による所有満足感、手のひらに収まる機能の凝縮感はぜひとも一生のうちで体験していただければと思います。
それでは今回はこの辺で。
長い記事になりましたが、最後までお読み頂きありがとうございました。
山本氏のSNSではカスタムナイフの製作過程や過去の作品を見ることができます。
山本徹氏 SNSリンク
インスタグラム:https://www.instagram.com/toruyamamoto01/
X:https://x.com/KnivesToru
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