ブラックモデルの原点「マイスターシュテュック ウルトラブラック ミッドサイズ」から見る漆黒筆記具のトレンド
皆さんこんばんは。
年度末から年度初めにかけて仕事やらプライベートやらでバタバタしており、気付いたら一ヶ月以上記事を更新できていない状態でした。
春は、桜に菜の花にホタルイカ。そして、柔らかな陽が射す室内でゆったりと物書きを愉しむ季節です。
この春から夏に向かう季節が 一年の中で一番好きかもしれません。これからの雨音を愉しむ梅雨の季節も実に待ち遠しい…。
さて、そんな物書きに適した季節に 久しぶりとなる今回の記事は、私が愛して止まないモンブラン マイスターシュテュック ミッドサイズのバリエーションである「ウルトラブラック」のボールペンについて。
このペンもかなり前に入手して使っているのですが、書こう書こうと思っているうちに随分と月日が流れてしまいました。
当ブログのコンセプトでもある「ビジネスに向く高級筆記具」にも沿った、漆黒のボールペン。
ブラックは筆記具誕生の時から現在に至るまで、ラインナップの基本色として人々に愛されてきました。
そのどんなシーンにでも馴染むブラックの筆記具をさらにデザイン的に昇華させた、オールブラックの筆記具が近年注目を集めています。
▲使う者の印象を引き締める、ブラックの筆記具
ブラックを基調としたカラーラインナップの中でも、オールブラックモデルの位置づけは一部の特殊モデルや限定モデルというケースがほとんど。
ひとえにブラックと言っても色味や加工の種類は数多であり、グロスブラックやマットブラックといった基調でも、金属素材なのか樹脂素材なのかによっても表情は違い、さらにサンドブラスト加工やラッカー塗装、PVDコーティングなどパーツの表面処理の仕方やその組み合わせによっても印象がかわる。実に奥が深いカラーと言えるでしょう。
「黒は300色あんねん」と言われていますが、素材やテクスチャーまで含めるとそれはもう星の数ほどあるのではないかと思います。
それでは、オールブラックやフルブラックといった特殊なモデルは筆記具界においていつから出始めたのでしょうか。気になって調べてみました。
2012年から2026年のはじめにかけて発売された、国内外10社(モンブラン、ペリカン、パーカー、ファーバーカステル、カヴェコ、カランダッシュ、セーラー、パイロット、プラチナ、コクヨ)におけるオールブラックモデルを一覧にしてみました。
左の発売モデル数の詳細が右のメーカー(モデル名)となります。
一覧にすると、国内メーカーのセーラーがいち早くオールブラックモデルをラインナップに取り入れ、2016年以降、各社が毎年入れ替わり立ち替わりコンスタントにオールブラックモデルを発売していることが分かります。(2012年にセーラーとパイロットでそれぞれ1モデル、パーカーで1モデル)
※表は上記10社においてですので、他のメーカーも合わせるとかなりの数のオールブラックモデルが発売されているものと思われます。
しかも、セーラーの「プロフェッショナルギア インペリアルブラック」や「プロフィット ブラックラスター」は今尚発売が続くロングセラーモデル。
この事からも、オールブラックモデルの不変的な人気が覗えます。
海外では、パーカーの「プリミエ モノクロームブラック」を皮切りに、ファーバーカステルの「エモーション ピュアブラック」、カランダッシュの「RNX.316 PVDブラック」が発売。
パーカーのプリミエはヘアライン加工の金属軸にPVDコーティング、カランダッシュのRNX.316もPVDコーティングが施されており、今やオールブラックモデルにおけるトリムの加工としては一般的となった「PVDコーティング」という技術が本格的に筆記具の外観に使われだした事も印象的です。
そして、ドイツを代表する筆記具メーカー モンブランが2016年に発売した「ウルトラブラック」シリーズをきっかけに、オールブラックモデルがトレンドとして本格的に筆記具業界全体に拡大していったものと考えています。
(実際、当時はかなり話題になっていた記憶があります)
先ほどの表をグラフに表してみました。
2016年のモンブラン ウルトラブラック登場以降、ブラックをテーマにした筆記具は増加傾向にあり、2020年代前半にはその数がピークに達している。
特に2019年以降は、フラッグシップモデルからエントリーモデルに至るまで幅広くブラックモデルがラインナップされていることが分かり、ブラックが単なる定番色からデザインコンセプトの一つとして定着したことが覗えます。
そして2025年には国内外10社において最多となる6モデルがラインナップ。
2026年に入ったところで、国内メーカーのプラチナからも初のフルブラックモデルが発売。
もともと筆記具に使われていた「エボナイト」という素材がブラックだった事から レギュラーカラーとして広く親しまれたブラックの筆記具は、一周回ってフルブラックのクールな特別モデルとして認知されることになるという、とてもドラマチックな展開ではないでしょうか。
さて、オールブラックモデルの変遷を辿ってきたところで、当記事の主役である「モンブラン マイスターシュテュック ウルトラブラック ミッドサイズ」ボールペンを見ていきたいと思います。
まずは素材と加工、そしてスペックについて。
私がこのウルトラブラックと共によく使う「トリビュート トゥザ モンブラン」という、これとは真逆のホワイトモデルがあるのですが、そちらが金属素材(ソリテール系)にラッカーという組み合わせ。
対してこのウルトラブラックは、胴軸はベースモデルのマイスターシュテュック ミッドサイズと同様に樹脂製で、トリムにはPVDコーティングが施されています。
そのため、マイスターシュテュックのソリテール系のような重さはなく、27gという誰もが使いやすい無難な重量に止まっているのです。
スペックは、
全長:140mm
重量:27g
軸径:10mm
モンブランのウルトラブラックと言えば、この一切の光を吸収する漆黒のブラック。
サンドブラストでしょうか、非常にきめ細やかなサテン仕上げとなっており、トリムのPVDコーティングと対比がとても美しい一本。
目の粗いサテンとは違った、シルクのような滑らかな触り心地は高級筆記具を扱っているという感覚に浸れます。
一方、手元の個体はまだその兆候はないのですが、経年使用による表面のテカリは発生するものと思われます。グリップ部がテカるまで使い倒したいと思わせるボールペンであると同時に、ミントコレクター泣かせの仕様とも言えるでしょう。
2016年発売の本品は、クリップと反対面のクリップリングに9桁のシリアルナンバーが刻まれています。
この独特なフォント。これぞモンブランの筆記具ですね。
先にも書いたとおりウルトラブラックは樹脂軸ですが、ミレニアム系やソリテール系と同じく天ビスには金属が使われています。
ウルトラブラックのマイスターシュテュックを購入して、一番感動したのがこの天ビスの上部。
いつものホワイトスターが鎮座しているのですが、この樹脂の部分に至るまでサテン仕上げになっていること。
デザインコンセプトを崩さない徹底的な拘り。
これがモンブランが愛される理由の一つでもあります。
ソリテールの天ビスのホワイトスターと比較してみます。
グロッシーなブラック×ホワイトが美しい 艶やかな樹脂も良いですが、ザラッとしたマットブラックの渋い陰影も良いものです。
最近のソリテール等特別モデルは、このホワイトスター周りの樹脂部分がブラック以外(オリンピックシャモニーはレッド)のものもあったりとバリエーション豊か。
1980年代のモンテローザのように、グリーンやグレーの樹脂を使ったホワイトスターというのも見てみたいです。
クリップ裏のデボス刻印は、Pix刻印はなく「Made In Germany」「METAL」のみ。
キャップリングのフォントはミッドサイズ由来の、若干縦に伸びたフォント。
まるでソリテールシリーズのようなキャップリングの、金属のサテン部分と樹脂のサテンがマッチしています。こちらにもPix®の刻印はありません。
ウルトラブラックは、クリップ、キャップリング、天ビス、そして口金の金属パーツにPVDコーティングが施されています。
今や外装パーツにPVDコーティングを使った筆記具も珍しくなくなりましたが、通常のシルバーに比べて見た目の高級感が段違いかつ、通常のクロムメッキに比べて遙かに高い方面強度を誇っており、傷や摩耗に強いのが特徴。
同じドイツの筆記具ですと、ファーバーカステルの筆記具(オールブラックモデル)に良く使われている加工法ではないでしょうか。
シルバー×ブラック系のマイスターシュテュックとも好相性なウルトラブラック。
派手すぎないがしっかりと主張する、特別モデルのマイスターシュテュックは、ビジネスシーンでも映え、適度な重みとバランスの取れた使い心地で所有満足感が高い。
左から、ソリテール シルバーファイバーギョーシェ、ウルトラブラック、セラミックブラックプリズマ。
ちなみにこれらのマイスターシュテュックのサイズは三者三様。
シルバーファイバーギョーシェはクラシック(#164)サイズ。ウルトラブラックは、クラシックとル・グラン(#161)の中間となるミッドサイズ。
右のセラミックブラックプリズマは変わり種で、キャップ部がミッドサイズ、胴軸部がクラシックサイズとなっています。
キャップと胴軸を分けてみます。
こうすると、キャップのサイズと胴軸のサイズがそれぞれ分かりやすく、両端の2本の胴軸が同じ長さ(クラシックサイズ)であることが見て取れます。
キャップリングの下に樹脂部分があるため、やはりウルトラブラックは金属を主体としたソリテール系ではなく、ミッドサイズのマイスターシュテュック亜種ということになりますね。
マイスターシュテュックは、金属胴軸(ソリテール)の場合、ネジ切りが樹脂製ですが、胴軸が樹脂製であるマイスターシュテュックレギュラーモデル亜種のミッドサイズ、およびル・グランはネジ切りパーツが金属製なのが特徴。
後発のモンブランMと並べてみました。
モンブランMもピアノブラックのようなグロスモデルが2015年に発売され、続いて2017年にウルトラブラック、2018年にレッドの発売となっています。
その中でも個人的にはウルトラブラックが好みです。
モンブランM ウルトラブラックのトリムはPVDコーティングではなくクロムメッキ。
手元のウルトラブラックにはロイヤルブルーのリフィルを入れています。
そこはブラックじゃないんかーい、と聞こえてきそうですが、ロイヤルブルーを入れることでビジネスでの稼働率を上げるという意味もあります。(良く使うんですよブルーインク…)
モンブランのインクは本当に書きやすい。
純油性インクですが、ダマにならず、擦れず。軸の重みとインクの粘度が素晴らしいハーモニーを奏でる、これぞモンブランのボールペンなのです。
さて、今回は久しぶりの記事となりました。
ビジネスの相棒、愛すべきモンブランのボールペンから「マイスターシュテュック ウルトラブラック ミッドサイズ」を見てきました。
漆黒と言うにはトリムに輝きがありますが、非常に渋くまとまった一本。
マットな質感と触り心地は、ブラックの筆記具が当たり前だった1920年~1930年代のエボナイト軸の筆記具を想起させます。
モンブランのマイスターシュテュックという定番モデルでありながら、人とは違ったエッセンスを醸し出すウルトラブラックは、まさに漆黒筆記具好き必携のアイテムと言えましょう。
今後も一定数の根強いファンを持ち続けるであろう、オールブラックの筆記具。今年はどのような漆黒筆記具が発売されていくのか、楽しみでなりません。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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