カランダッシュ 創業80周年記念モデル エクリドール スターリングシルバー レビュー
皆さんこんばんは。
久しぶりにカランダッシュ エクリドール(ボールペン)の記事です。
カランダッシュと言えば、849やバリアス、レマンコレクション等様々なシリーズがラインナップされていますが、デザイン・堅牢性・所有満足感・万人に使いやすいという観点から、最も高コスパなのがエクリドールだと考えています。
伝統的な模様が施された六角軸に、全長128mm、胴軸径9mm、重量26gの金属一体型形成のボディは、ある意味 最もコンパクトで堅牢な筆記システムと言って良いのではないでしょうか。
今まで何本ものエクリドールを使ってきましたが、エクリドールの中でも特に銀軸モデルは、通常の真鍮モデル+3gの重量に加え パラジウムコーティングのそれとは違った純銀ならではの握りやすさ(滑らなさ)が魅力なのです。
今回レポートするエクリドールは、たまたまオークションに安値で転がっていたものを 運良く手に入れられたもの。
ネットにも情報が少ないため、少し詳細に書いていく必要がありそうです。
そのモデルとは、
「カランダッシュ80周年記念モデル エクリドール スターリングシルバー」
手元にあるのはボールペンのみですが、同じ柄の芯ホルダーがセットとなった製品で、販売数は世界で限定800セットとなっています。
オークションには芯ホルダーも同時に出品されていましたが、社会人としての実用性を踏まえてボールペンをチョイス。(2本両方は価格的に難しかったというのもあります)
やはりゴリアット芯でヌラヌラ書いて仕事するのが楽しいのです。
一般的にエクリドールには、シェブロンやレトロ、マヤなど胴軸の柄に応じたネームが付けられており、柄のコンセプトが明確なものがほとんど。
しかしながら、こちらのカランダッシュ創業80周年記念モデルにはそのような柄のネームがなく、素材名(スターリングシルバー)がネームとなっています。
謎が多いモデルですので、他のエクリドールや同じ銀軸のアンモナイトとも比較をしつつ見ていきましょう。
まずスペックですが、一般的なエクリドールと同じ128mmの全長に、銀軸ならではの29gというしっかりと重みを感じるモデルとなります。
胴軸の彫刻はさすが80周年を記念するモデルだけあって凝ったデザインとなります。
銀軸ならではのクリップ~ノックボタンにかけての情報量の多さ。
同じ銀無垢軸でイメージされるヤード・オ・レッドともまた違った雰囲気の筆記具ですね。
六角軸の六面のうち、三面にこちらの模様、二面にリーニェの彫刻、一面にアニバーサリー刻印が施されており、とてもエレガントな印象です。
このモデルの本当の名前(彫刻の柄の名前)を知るべく、何の柄なのかをかなり調べましたが情報が見つかりません。
同梱されているリーフレットには「彫刻は特に魅力的で、1930年代のモチーフと現代的なギョーシェ模様の組み合わせ」と書かれてはいますがその詳細は不明。
おそらく、現代的なギョーシェ模様=リーニェということになりますが、もう一つの「1930年代のモチーフ」というのが何なのか。
その柄は、アルプスに咲く「リンドウ」の花にも見え、また、スイスの国花である「エーデルワイス」の花びらのようでもあります。
縦に5つ並んだの花びらのようなモチーフを円形に並べれば、エーデルワイスの花のようにならなくもないですが、いかがでしょうか?
胴軸の六面のうち二面には、どことなくリーニェのような現代的なギョーシェ模様が彫刻されています。
リーニェとの違いについて、リーニェ(写真左)は9本のラインに対して、80周年エクリドール(写真右)のラインの数は10本。
この辺りも他のモデルの柄としっかり差別化が図られていることが分かります。
クリップの右側を見ると、エクリドールの銀軸ではお馴染みの刻印が見られます。
スターリングシルバーを表す表記「Ag925」に「カランダッシュのロゴ(旧タイプ)」、その右には小さなセントバーナードの刻印(ジュネーヴの検査所の検査刻印)と、天秤に925のコモンコントロールマーク。
手元にあるもう一本のスターリングシルバー軸「アンモナイト」に比べてハッキリと刻印されているこの2つの刻印。
肉眼ではなかなか判別し辛い刻印ですが、ヨーロッパでの純銀を表す重要な刻印となっています。
クリップと丁度対面となる一面には「1924 – Anniversary Edition – 2004」の記念刻印。
この記念セットの発売年は刻印の通り2004年となっています。
この刻印が表すカランダッシュ80周年記念について、少しばかり気になった事があるので書いていきます。
この1924年という年は、カランダッシュ創業者のアーノルド・シュバイツァーが前身の「エクリドール鉛筆製造所」を買収し、「カランダッシュ スイス鉛筆製造所」としてスタートさせた年です。
所謂、筆記具メーカー「カランダッシュ」としてのスタートともいうべき年。
そして、カランダッシュの前身である「エクリドール鉛筆製造所」は1915年の設立。
筆記具(鉛筆)はその頃から製造されていたことになります。
その一方で、まだ記憶に新しい2015年にも記念モデルが発売されていたことはご存じの方も多いかと思います。
カランダッシュ100周年記念モデルとして5つのコレクションが限定発売されているのです。
その中にもエクリドールがあり、こちらは伝統的なシェブロンの柄を現代的にアレンジした模様が刻まれ、表面にパラジウムコーティングが施されたモデルとなっています。
(これもいつかは手に入れたい…!)
その100周年記念モデルが2015年に発売されています。
2015年の100年前となると、1915年なんですよね。
もうお気づきかと思います。
・80周年記念のエクリドールが発売された年は2004年で、創業年のカウントが1924年(カランダッシュ スイス鉛筆製造所の創業年)
・100周年記念のエクリドールが発売された年は2015年で、創業年のカウントが1915年(エクリドール鉛筆製造所の設立年)
となっているのです。
2つの創業記念モデルが発売されていますが、それぞれカウント年が違うというところが非常に興味深い。
これはどちらかが間違いということではなく、カランダッシュ創業(筆記具製造のスタートか、会社のスタートか)のニュアンスの違いだと認識しています。
ちなみに、メタル缶に入った50周年記念モデルもありますが、こちらはエクリドール誕生50周年記念モデルとなります。
柄はレトロで、ショートクリップに仏語の刻印(CARAN D’ACHE FABRICATION SUISSE)が入るモデルとなります。
非常にややこしいですが、合計3つの記念モデルを下記にまとめると…
・エクリドール誕生50周年記念モデル
…シルバープレートのエクリドールレトロ(クリップに仏語刻印)。メタルケース入り。
・カランダッシュ創業80周年記念モデル
…スターリングシルバーのエクリドール。アニバーサリー刻印、芯ホルダーとボールペンのセットで木製ケース入り世界800セット限定。
・カランダッシュ100周年記念モデル
…パラジウムコートのエクリドールシェブロン(特別柄)。1930年代に使用されていた紙製のギフトボックスをアレンジしたケース。
エクリドール(ボールペン)の他に、テクノグラフ(鉛筆)、フィックスペンシル(芯ホルダー)、プリズマロ(水溶性色鉛筆)、849(ボールペン)の全5コレクションが発売。
このようにアニバーサリーモデルと言っても、何のアニバーサリーなのかということを見ていくと新たな発見があるかも知れません。
さて、軸のデザインに話を戻して刻印を見ていきましょう。
アニバーサリー刻印の上にはシリアルナンバーがあり、「***/800」となります。
シリアルナンバーが刻印されているエクリドールは少なく、他で覚えがあるのはスイス建国700周年記念のエクリドールでしょうか。
(1991年日本未発売モデル、スイス建国700周年公式ロゴ入り)
また、ノックボタンの「CARAN D’ACHE」ロゴについても特別仕様。
左上が80周年記念モデルで、右上が現行品。
下段は過去モデルとなります。
ペン先をくりだした状態でノックボタンが沈む仕様ですが、いずれのエクリドールのモデルもちゃんとメーカーロゴが良い塩梅に残るところがニクい。
ちなみにノックボタン天面に「CdA」や「ペンシルマーク」のようなロゴはなくフラットとなっています。
ノックボタンを左周りに回転させて外すと、ノック機構が出てきます。
ノック機構のパーツは通常モデルと同じで真鍮。上部のノックボタンにあたるカバーがスターリングシルバーとなります。
刻印は上部に「Ag925」、胴軸に隠れる部分に「CARAN D’ACHE SWISS MADE」。
右のアンモナイトに比べると刻印が深めで、色も濃くなっています。
アンモナイトと80周年記念モデル。
パターンが整然と並んだ様はやはり美しく、これぞエクリドールと思わせてくれます。
80周年記念モデルの刻印は結構深めですので、硫化させると映えそう。
銀軸はグリップ感が魅力。
パラジウムコートのエクリドールをお持ちで、滑りやすいと同じの方はシルバープレート(過去モデル)やスターリングシルバーの軸をお勧めします。
書き味ぬらぬらなゴリアット芯は少し重めな銀軸との相性も良く、それも銀軸エクリドールを使う理由になります。
さて、今回はエクリドールのボールペン「カランダッシュ 創業80周年記念 エクリドール スターリングシルバー」をレポートしました。
自身としてはアンモナイトに続く2本目の銀軸のエクリドールで、やはり銀軸ボディは素晴らしく使いやすいと再認識させてくれるに値する一本でした。
1930年代のモチーフが刻まれたボディはまだ謎が多いですが、その答えに辿り着けるようにこの先も1930年代のカランダッシュを探求し続けていきたいと思います。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
ディスカッション
コメント一覧
はじめまして。
私は80周年記念モデル エクリドール スターリングシルバー芯ホルダーをオークションで入手しました。
その時にボールペンも出品されてて両方とも入札するかどうか迷いましたが、カランダッシュの1,18mmシャープと2mm芯ホルダーの収集をしていましたので一本だけ入札しました。幸いなことに他に入札者もなくて、入手できました。落札後、ボールペンも落札しなかった事が気になっていました。箱があれば、両方入札していたでしょうが。
因みにシリアルナンバー550/800です。同じ落札日ですね。
Ucchyさん
コメントありがとうございます。
まさか、あの芯ホルダーを落札された方からコメントを頂けるとは思いもしませんでした…!
やはりセットでの保有が一番ですが、仰る通りボックスが無かったのが実用品として持ちたい私には逆に好都合だったと考えています。
芯ホルダーはエクリドールの歴史そのもの。まさにUcchyさんにとって収集冥利に尽きるのではないでしょうか。
芯が軸内に貼りついているというようなコメントもありましたが、おそらく直してお使いになられているのではと思います。
ボールペンの方も、私が予想した通りクリップのコーティング剥がれではなく、加水分解したペンケースの破片が貼りついているだけでした。
記事にも書いた通り、こちらの80周年記念モデルは謎が多い製品だと思っています。
軸の模様を考察したり、銀軸の手触りを楽しみながら手の中を転がしているだけでも愉しい軸です。
何かこの軸(の模様)について情報が得られましたら、またコメントを頂けると幸いです。
それでは、引き続き良いコレクションがお手元に揃いますよう願っております。
芯の固着は修理するほどの事なく、正常に動作ししました。傷に見えた所は汚れの付着でした。
模様は、趣味の文具箱VOL.2のP.27によれば1930年創業当時の文様を再現とだけ記されていて、文様の名称はありません。
因みに、発売当時の本体価格はボールペンとクラッチペンシルのセットで150,000円となっています。
すみません、返信の方法が分からなくて匿名になってしまっていました。