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パーカー デュオフォールド ビッグレッド 1920年代ペンシルの魅力【パーカー デュオフォールド JR.(ジュニア) ペンシル レビュー & sotペンケースの裏技】

2024年10月1日

皆さんはパーカー(PARKER)の筆記具はお使いでしょうか?
 
職場や取引先で使われているボールペン事情をみても、利用されている方が多いと感じるパーカーの筆記具。
パーカーは筆記具メーカーとしての歴史も古く、安価に楽しめるエントリーモデルから荘厳なフラッグシップモデルまで幅広い軸のラインナップが魅力で、さらにボールペン・万年筆を問わずインクの性能も優秀だと感じます。
その辺りが、世代を超えて愛される要因なのかも知れません。
 
その中でも、パーカーの歴史を知る上で避けて通ることの出来ないモデルが「DUOFOLD(デュオフォールド)」ではないでしょうか。
 

 
1921年に発売が開始されたデュオフォールドは一度生産が終了しながらも1988年に復刻し、伝統的なデザインを引き継ぎながら、今もなお派生モデルを生み出し続けています。
伝統的なパーカーのデザインを踏襲したフラッグシップモデルとして、2015年にフルモデルチェンジを果たしたデュオフォールド。
クラシックなデザインは約95年あまりの間愛され続け、復刻後においてもマイナーチェンジはありつつ ほぼ全体的なデザインが変わっていないということは凄いことです。
 
そんな歴史深いデュオフォールドの原点とも言える、エボナイト製の軸を持った最初期のデュオフォールド。パーカーファンならば手に入れておきたい逸品と言えます。
かく言う私も、この美しいオレンジエボナイト軸のデュオフォールド「ビッグレッド」には歴史的な価値も含めて憧れがあり、どうせ手に入れるならと 状態の良い個体を5年程探しじっくり吟味して、やっとのことで入手できました。
 
今回の記事は、エボナイトの軸を持つデュオフォールド(万年筆)が発売された1921年から、その後、軸の素材がセルロイドに置き換わる1926年までの間に発売されていた1本のメカニカルペンシル。
 
「パーカー デュオフォールド Jr(ジュニア) ペンシル」
 
デュオフォールドは万年筆を1本、ボールペンを5本所有していますが、ペンシルとしては初となります。
最近、アンティークペンシルを色々試すにあたって必然的に入手となった赤軸(通称:ビッグレッド)のペンシル。
ディティールや使い方を含めデュオフォールド 初期ペンシルの魅力と、後継モデルのボールペンとのデザイン比較を行ってきたいと思います。
 

 

 

 

1920年代デュオフォールドペンシルのディティール

それではまずはじめに、デュオフォールドペンシル誕生時モデルのディティールを見ていきます。
 
デュオフォールドと言えばビッグレッドというくらい、印象的な赤色(オレンジ色?)の軸。1921年の発売時は黒かったデュオフォールドの軸は、この鮮やかな赤色の軸が出たことで一気に知名度を増していきます。
現在のデュオフォールド万年筆はサイズ展開として、センテニアル(大きめサイズ)とインターナショナル(通常サイズ)の二種類があり、ボールペンとペンシルのサイズは一種類です。
 

 
手元のペンシルは「デュオフォールド ジュニア」と呼ばれるモデルで、デュオフォールドの中では小柄なサイズ。
現在のデュオフォールドにはないサイズのモデルとなっています。
 
しかしながら、手元のジュニアの全長は128mmと通常サイズ並み。
実際に、幾つかのデュオフォールドペンシルのスペックを見てみても、ジュニアだからこの全長という決まりはなく、「Jr」が付かないモデルであってもJrより短い軸もあったりと、その仕様は様々なのが面白いところ。
また、軸径も太めの軸、細めの軸などバリエーションがあり、自分の好みに合った軸径の1本を探す楽しみもあります。
 

 
この年代のモデルの一番の堪らないポイントである「エボナイト製の赤軸」。
手前がペンシル(エボナイト)、奥がボールペン(アクリライト)なのですが、同じビッグレッドでも色合いが微妙に異なるのがお分かり頂けるでしょうか。写真は明るめに撮っていますので少し分かりにくいですが、エボナイトの方はテラコッタに近い感じの色となっています。
鮮やかさで言うとアクリライトの方が鮮やか(明るめ)となりますね。
 
エボナイトは生ゴムに硫黄を混ぜて硬化させた物質で、非常に硬く、加工後の外観が黒檀(エボニー)に似ていたことから「エボナイト」と呼ばれるようになったとのこと。筆記具の素材としては「ハードゴム」と呼ばれることもあります。
素材的にも強度があり、触り心地もしっとりと指に馴染むエボナイトは、高級筆記具の軸素材として昨今また注目を集めています。
 

 
この年代のデュオフォールドの軸には、刻印があるものも多く存在し、製造年代によってその種類も様々。
手元の個体には「DUOFOLD JR. GEO.S.PARKER,PENCIL JANESVILLE, WIS. U.S.A PATD」の刻印が刻まれています。
 
刻印を分解して意味を見ていくと、
「DUOFOLD JR.」=デュオフォールド ジュニア(モデル名)
「GEO.S.PARKER」=パーカーの創設者、ジョージ・サフォード・パーカー
「PENCIL」=メカニカルペンシル
「JANESVILLE, WIS. U.S.A」=アメリカ合衆国 ウィスコンシン州 ジェーンズビル(当時の生産工場)
「PATD」=patented(特許権を有する)
 
となります。
 
製造年代によってこちらの刻印は異なりますので、お手元にデュオフォールドをお持ちの方は調べてみると面白いかも知れません。
 

 
初期のデュオフォールドのクリップは玉クリップとなります。
現在の矢羽クリップ(アロークリップ)は1933年に発売されたパーカーの万年筆「バキュマチック」から採用されたクリップで、デュオフォールドのペンシルに実装されたのは1933年以降~1940年頃にかけて。
1940年代になると完全に矢羽クリップのモデルとなり、デュオフォールド ペンシルのデザイン自体もこの玉クリップのデュオフォールドと共に姿を消します。
 
製造工場がU.Kに移ったあとのモデルは、デュオフォールドという名は冠しているものの初期モデルの面影は無く、1988年に初代デザインが復刻されるまではリアルな矢羽クリップに、パーカー51やパーカー75に似たデザインの筆記具となっています。
そのようなこともあり、今はない玉クリップのデュオフォールドは万年筆・ペンシル共にファンも多く、歴史の重みを感じられるモデルとなっているのです。
 

 
クリップにも刻印があり、手元のモデルは少し刻印が切れてしまっていますが、玉クリップモデルでは共通の刻印が入っています。
 
「PAT.SEP 5-16 PARKER」
こちらの意味は、パーカーが「ワッシャークリップ」の特許を取得した日「1916年9月15日」を示す刻印となります。
軸内外を構成するパーツとしてのワッシャーに、クリップを一体化させたもの、ということでしょうか。
今の筆記具では当たり前となっている部品ですが、パーカーがオリジナルとは感慨深いですね。
 

 
口金パーツには宝飾品にも使われる「ミルグレイン」の技法が見られます。まさに当時の職人の手作業が成せる業。
これがデュオフォールドペンシルのデザインのアクセントとなり、ペンシル全体の情報量アップにも一役買っています。モデルによってはこのミルグレインがあるものとないものがありますので、好みにより購入前には確認するのが良いでしょう。
 

 
デュオフォールド(ペンシル/ボールペン)といえば、この操作部を兼ねたキャップの美しさ。
芯やリフィルの回転繰り出し機構を備えているこのキャップは、復刻後、デュオフォールドが2015年にフルモデルチェンジするまでの約94年の間(2022年現在)、不変のデザインとして採用されています。
口金と同じく、アンティークのペンシルには写真のようにミルグレインが施されているモデルもあります。
 

 
キャップトップのディティール。
現在のようなロゴのボタンは無く、鏡面仕上げのキャップトップです。
右側は先ほどの軸色比較でも登場した1991年製造のビッグレッド。
デュオフォールドはこの辺りの年代からキャップトップにロゴボタンが付くようになりました。(現在はエースロゴのボタン)
 
1921年、筆記具としては高めの価格設定で登場したデュオフォールドでしたが、見事にヒットし現在に至ります。
それもひとえに、筆記具=身につけるものとしての宝飾品に通じる新たな価値や、当時のプロモーション(飛行船から落とす等)を通じて道具としての堅牢製が世界の筆記具ファンに受け入れられたからだと考えます。
 
手元のペンシルももうすぐ製造から100年。(1927年製造のもの)
その間に、どのような人の手に渡り使われてきたのか。そして自分がこのデュオフォールドをまた誰かに引き継いでいくと考えると、道具として100年を超えて使えるモノとしての素晴らしさは、現代人としても見習うべき点が多いのではないかとも思えます。
また、それと同時にデュオフォールドの筆記具としての歴史の深さに唸らざるを得ません。
 

 

アンティークペンシルの使い方と書き味

さて、続いてはデュオフォールド ペンシルの使い方と筆記感について。
筆記具に詳しい方からすると初診者向けの内容ですが、振り返りの意味も含めてお付き合い頂ければと思います。
 
まず、芯を出して書くための機構は「回転繰り出し式」となります。
デュオフォールドの場合は、前項にあったキャップを回転させることで無段階に芯を繰り出す造りとなっています。
 

 
使用する芯は1.18mm。ヴィンテージ/アンティークペンシルでは、ほぼこの径の芯が使われます。
過去の芯径といっても、現在でも生産はされており入手は可能。
一般的な文房具店で入手することは難しいですが、大型の店舗やネットショップで入手することができます。
いや-、便利な世の中ですね。
 
時計回りにキャップを回すことで芯を出し、キャップを逆回転させることで収納します。
ノック式の芯繰り出しが主流の現代において、筆記具に馴染みのない方からすると無段階かつスムースに繰り出される芯は、操作していて楽しい!と感じられるのではないでしょうか。
 
芯の交換および補充方法はというと、軸内に数本をストックしてペン先から装填する方式となります。
1930年代以降になると現代のように、頭から補充した芯がノックを繰り返すことでペン先に運ばれる機構が登場しますが、こちらのような回転繰り出し式ペンシル(プロペリングペンシルとも呼ばれます)は、ペン先から芯を補充する仕組みです。
 

 
芯のストックの仕方および芯の装填方法は、デュオフォールドの場合、まずキャップを真っ直ぐに引き抜きます。
天然ゴムの消しゴムが出てきますが、ほぼ100%の個体で硬化して使えません(まあ100年近く経っていますし…)。
 

 
さらに消しゴムがもげないように注意しながら、真っ直ぐ消しゴムを引き抜きます。
そうすると芯保管庫にアクセスできます。
 
ストックするのは全長45mm程のショート芯。
使う際はこちらから芯を取り出し、ペン先から入れてキャップを回し、口金内に収納します。
 

 
手元のデュオフォールド ジュニアの軸径は9mm。1990年代のセルロイド製デュオフォールドのペンシル/ボールペンと同じ軸径のものです。
 
こちらの個体の重量は24g。
程良く手に馴染み、エボナイトのしっとりとした握り心地は極上の筆記体験へと誘ってくれます。
 
デュオフォールドのペンシルは口金が先細デザインのため、筆記時に紙面が見やすいのも良いところ。
書く前にキャップを少し捻り芯を出し、書き、またキャップを捻って芯を戻す。この作法のようなキャップを捻る動作が、書く時間を優雅なものにしてくれているようにも感じます。
 

 
デフォルトで装填されていた芯はブルーの芯でした。
 
今はあまり見かけないカラーのペンシル芯。(というより現代においては、日常使いにボールペンのカラーインクが台頭しているため)
ブルーは少しくすんだブルーブラックのような色合いでノスタルジックです。
1920年から、ボールペンが開発されてペンシルに置き換わる1950年代まではこういったカラー芯が積極的に生産されており、アンティークのペンシルを入手した時にそのまま軸内に残っているケースも珍しくありません。
 
素晴らしいのが、カラー芯でありながらしっかりと消しゴムで消せること。ここが色鉛筆の芯とは違っている点と言えましょう。
書き味はマイルドで、このクラシックなデュオフォールドにもピッタリではないですか。
こうした偶然ながら過去の芯を楽しめるところも、ヴィンテージやアンティークのペンを使う楽しみかも知れません。
 

 

デュオフォールドの歴史を遡る

続いて、今回手元にある初期のデュオフォールドと、それ以降のデュオフォールド(ボールペン)の特徴をまとめて見ていくとしましょう。
歴史の長いペンだからこそ、現在に至るまで様々なマイナーチェンジが繰り返されています。
この項では初代と復刻後におけるデュオフォールド(ペンシル/ボールペン)のデザインの傾向を掴むことができるかと思います。
(この比較レビュー、デュオフォールドのペンが増える度にやっているように思いますが、ぜひお付き合い頂ければと…!)
 
手元のデュオフォールドはペンシルが1本、ボールペンが5本の計6本。左から製造年が古い順に並べてみます。
基本的に、デュオフォールドはボールペンとペンシルのデザインが同じとなっているため、今回は混合でデザインの比較を行っていきます。
 

 
まずはキャップトップのデザイン比較から。
 
改めて並べてみると壮観ですね。
年代と製造国の変化にも注目です。
 
写真にある通り、初代デュオフォールドはキャップトップに装飾は無くフラットな鏡面仕上げ。
デザインの復刻を果たした後は、黒丸→幾何学模様→フラッグ→エースという移り変わりで現在に至ります。
 
ここにある基本デザインのキャップトップ以外にもコラボモデルや限定モデルでは、また違ったボタンが着いている個体もありバリエーションは豊富。
 

 
続いてはクリップについて、初期のペンシルは玉クリップ、1988年の以降のクリップは矢羽クリップに変わっていることが分かります。
先にも書いたとおり、矢羽クリップは1933年に他モデルで採用されたことでスタートし、以降1930年代~40年代にかけてデュオフォールドペンシルにも採用されることとなります。
 
左から2番目の黒い軸を持つボールペンが1990年製のため、一番左の1920年代製ペンシルから年代がかなり飛んでいますが、初代デュオフォールドのデザインは一旦1930年代に途絶え、1988年に復刻しているため。
 

 
次に軸の素材を比較してみます。
初期のデュオフォールドは万年筆・ペンシル共にエボナイト製。その後、1926年から他メーカーに対抗して豊富な軸色が生産できるセルロイド製軸の生産もスタート。
1990年代の復刻モデルではアクリライトが使われており、さらに軸色のバリエーションは増えていきます。
 
2015年以降のフルモデルチェンジ後は、アルミ素材の軸を持ったデュオフォールド(プレステージシリーズ)も発売され、そのバリエーションはさらに広がりを見せています。
 

 
個人的にはグリップポイント付近のリングにも注目で、初代のエボナイトモデルはリング無し、復刻モデルからリングがつき、1990年のモデルには2つの細いリング、1991年のモデルはその細いリング2つが合わさり1つのリングに。
以降は太めのリングが1本となり、2015年のフルモデルチェンジ後はさらに太いリングとなっています。
並べることで分かるリングの変化の軌跡。
 
皆さんはどの時代のモデルが好みでしょうか?
 
 
さて、今回はパーカー デュオフォールドの原点であるビッグレッドのペンシル「デュオフォールド Jr(ジュニア)」を見てきました。しっとりとしたエボナイトの軸に精密な手彫りの刻印、刻印入りのノスタルジックな玉クリップにミルグレインに見られる細かな手作業の跡。
筆記に移るための回転繰り出しに至るまで、誕生100年の歴史の重みを感じる造りとなっています。
私がアンティークペンを愛してやなまいのが、職人の手作業が作り上げた傑作が 今も尚現役で使用できること。
 
現代においても普段使いに優れた1.18mm芯のペンシルとして、ペンケースに加えてみてはいかがでしょう。
 

 

おまけ:ヴィンテージペンシルにもピッタリのペンケース(応用編)

最後に、ツイートで反響があった、手元のヴィンテージペンシル用に購入した「sot(ソット) プエブロ ラウンドファスナーペンケース」のちょい技を備忘録として掲載しておきます。
 
使っているよという方も多い、sotのプエブロペンケース。
筆箱紹介ツイートでもしばしば目にしますが、芯ケースなどで蓋を支えている写真もちらほら。
 

 
また、実際デスク上に開いた状態で置いた場合 蓋となる部分が半分締まり、ペンを交換する際に指で持ち上げる必要が出てきます。
そんな時に使えるちょい技として「持ち手」を蓋の内部に収納することで蓋を固定するという方法。
 

 
ファスナーをいっぱいまで開いたら、金具の部分を指で押してヒンジの内部に入れます。
 

 
あとは持ち手部分をゆっくりとファスナーに沿って内部に押していくだけ。
ピッタリと収納されます。
 

 
持ち手が台形になっているため、指が届かない範囲まで中に入り込んでしまうこともなく、また、その持ち手がヒンジの中で蓋を垂直に支える留め具として機能します。
 

 
机上ですっきりと開いたsotのラウンドファスナー ペンケース。視認性にも優れ、使うペンの交換もし易いです。
 
以上、sotラウンドファスナーペンケースのちょい技でした。
 

 
sot×デュオフォールドビッグレッドコンビのペンケース構成。
ペンシルとボールペンに予備のボールペンリフィル、消しゴムのみシンプルな構成です。
 
アンティークやヴィンテージの筆記具は、ペン自体のサイズが小さいため このペンケースがとてもよく似合うのです。
コンパクトなレザーペンケースをお探しの方は是非。
 
↓こちらの記事もご参考に。
◆シンプルでコンパクトなラウンドジップペンケースを求めて行き着く先【sot プエブロラウンドファスナーペンケース】レビュー
 
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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