ボールペン・万年筆・メカニカルペンシルなど、文房具好きの購入記を写真多めで比較レビュー。
たまーに気になったガジェットのレポートも。
物欲のままに手に入れたアイテムをレビューしたりしなかったり。

大型ペン先搭載!カヴェコの新作万年筆【カヴェコ オリジナル 250 万年筆】レビュー

2024年9月23日

皆さんこんにちは。
 
2022年9月、カヴェコから新しい筆記具が発売されました。
その名も「Kaweco Original」(カヴェコ オリジナル)
 

 
1950年代に発売されていた「Kaweco Original」の復刻モデルとして、太軸のボディをベースに、大型ペン先を搭載した「250」と通常サイズのペン先を搭載した「060」の万年筆2種類と、ボールペンの計3ラインナップ。
 
いやー、震えました。
限定モデル以外で、久しぶりのレギュラーラインとなるニューモデルのリリース。
 
これを機に、カヴェコオリジナルをベースとした限定モデルへと派生させていってほしいです。
 
ということで、今回は一般的な比較レビューとなります。
スカイラインスポーツ、ALスポーツ、ルックス、スペシャル等の先輩モデルとの比較の他、ペン先のサイズを感じて頂きたいので、モンブランのマイスターシュテュックを例にペン先の比較も行ってきたいと思います。
 
それでは待望のカヴェコ新作万年筆「オリジナル 250」を見ていきましょう。
 

 

 

 

カヴェコ オリジナル 250のデザイン

それではまず、カヴェコ オリジナルのデザインから見ていきます。
 

 
冒頭でも触れたとおり、今回発売されたカヴェコ オリジナルには250(大型ペン先)と060(通常サイズペン先)の2種類のバリエーションがあり、こちらはペン先の大きな250となります。
 
250と060は携帯時の外観は同じで、違いはペン先のサイズが違うことに伴う首軸の長さの違いのみ。
 
販売価格は、
カヴェコ オリジナル 250:17,600円(税込)
カヴェコ オリジナル 060:14,300円(税込)
 
となっており、この万年筆のスペックからするとかなり攻めたなと感じる価格設定。
 
ううむ、もともとスチールペン先の書き味には定評があるカヴェコですが、ペン先が大きくなった事で筆記感や書き味はどのように変わるのか…俄然興味が湧いてきます。
 
ということで、価格は3,300円(税込)の差があるものの 250を選ばない理由はないだろうと思い 250のEF(極細字)をチョイス。
※価格差の3,300円はそのまま大型ペン先の価格でした。
 
 
250のスペックは、
 
全長(携帯時):126mm
全長(筆記時):123mm ※キャップは尻軸にポストできず
重量:26g
胴軸径:12mm
首軸径:10.2mm
ペン先:大型スチールペン先(字幅はBB・B・M・F・EF)
カートリッジ/コンバーター両用式
 
となっています。
 

 
外観はマットなブラッククロームでエッジの効いた八角柱のデザイン。
 
カヴェコスペシャルのようなブラックペイント系ではなく、ほぼそのままスポーツシリーズのALスポーツ(アルスポーツ)のようなサラサラとした触り心地。
 
それでいて、指への吸い付きは良好で滑ることはありません。
(表面処理について、ALスポーツよりも粗めの粒子となっておりグリップ感はオリジナルの方が上)
 
素材も厚みのあるアルミ製のため剛性感が漂います。
 
1950年のカヴェコ オリジナルのデザインの詳細は分かりません(情報が見つかりませんでした…)が、おそらく当時の筆記具事情を踏まえて、樹脂ボディにゴールドトリムで吸入式というスペックだったのではないかと…。
 
ですので今回の復刻も完全復刻という形ではなく、全体的なデザインを復元しながら、現代筆記具としての素材やユーザーがメンテのし易いシステムを採用したリメイクと考えて良いでしょう。
 

 
キャップ、首軸を外してインク補充システムにアクセスします。
私は早速 胴軸内に付属していたお試しのカヴェコブルーインクカートリッジを装填。
 
毎回書いていますが、カヴェコのインクは裏抜けがほぼなく優秀なのです。
 
もちろん、欧州共通規格の通常サイズコンバーターも利用可能。
カートリッジであれば、使用中の1本に加え胴軸内にもう1本スペアカートリッジを入れておけます。
 

 
本体の造りという点で感心するのが、キャップと同軸を繋ぐネジ切りへのOリングの配置。
キャップをしたときの密閉性の確保という意味でもOリングは間違いない仕組みです。
 
また、これがあるお陰でキャップの締め心地が気持ち良い…。
カヴェコスペシャルの万年筆も同様にOリングが配置されていましたので、カヴェコの上級ラインでは仕様として定着していると言えますね。
 

 
もう一つ感心するのが、キャップはじめ胴軸の素材の厚み。
落としてキズがいくことはあるとしても、絶対に凹みそうにない分厚い八角柱のボディ。
これは「道具」としてみたときに大きなアドバンテージとなります。
 
ボディの「Kaweco Original Germany」ロゴはホワイトのペイント。
 

▲手前:スペシャル、中:オリジナル、奥:ALスポーツ
 
ホワイトペイントという部分だけ見ると、良くも悪くもスタンダードなロゴ刻印です。
1万円超えのモデルのため、個人的にはALスポーツ限定モデル(写真奥)のキャップ刻印のようなデボス加工にしてほしかったところ。
 

▲左:オリジナル、右:ルックス
 
キャップはスポーツシリーズに比べて短めで、クリップは備え付けの鰻クリップ(すいません、個人的にこのように呼んでいます)。
 
“オリジナル”という名前をつけるだけあって、ここは湾曲クリップで一気にクラシックな雰囲気に。
しかも、シルバートリムを採用しているため見た目はライトな印象です。
 

 
カヴェコの金属素材万年筆としては大きめサイズ。
 
このオリジナルの素体だけみると疑問が残る価格設定ですが、ペン先を含めた拡張性に期待です。
 
今のところ、カヴェコALスポーツとどう違うの?と聞かれて、なかなか応えに迷ってしまうのがカヴェコオリジナル。
素材や表面処理、インク補充システムが現行品の延長線上にあるため、真新しさは感じません。
 
これは大きなカヴェコALスポーツなのではないか…。そう言われると言い返す言葉に詰まります。
どうもカランダッシュ849ローラーボールの二の舞をイメージしてしまうのです。
 
私の考えとしては、このご時世だからこそ、このサイズで吸入式としてリリースして欲しかったな、と。
 
吸入式でかつ、スポーツシリーズのようにユーザーでも簡単にペン先交換(ペン先ユニットの交換)も可能な「カヴェコ オリジナル」として復活させて欲しかった。
うーむ、求めすぎでしょうか…。
 
カヴェコには、カメラ業界で言うところの「Lomography(ロモグラフィー)」のような、お洒落でいて尖ったプロダクトを生み出すという一面を期待してしまいます。
 

 

カヴェコシリーズでサイズ比較

さて、書き味のレポートへ進む前に 今回のカヴェコ オリジナルのサイズを、カヴェコのクラシックラインな各モデルと比較していきましょう。
 

▲左から、スカイラインスポーツ、ALスポーツ(ナイトブラック)、オリジナル、ルックス、スポーツV16、スペシャル。
 
キャップを閉めたときの全長が126mm、スポーツが106mmですので、20mmの身長差があります。
写真には無いですが、ちょうどスポーツとパケオの間くらいの全長となっています。
 
それに伴い軸径もアップしており、これは個人的には嬉しいところ。
 
この写真の中では唯一文字通り「オリジナル」なのが、右から2番目のV16。
これだけ小型でありながら、金ペンとインク吸入機構を備えたモデルです。
 

 
筆記体勢での比較。
並びは先ほどと同じです。
 
ここで注意なのが、カヴェコ オリジナルはキャップを尻軸にポストできないということ。
キャップを尻軸に重ねることは一応はできますが 保持できません。
 
筆記時の全長が123mmということで、キャップを尻軸に差して筆記バランスを取られる方は要注意です。
私は普段キャップはポストしない派ですので あまり問題ではありませんが、ここは差す差さないの選択肢があった方がユーザーには優しいかと思います。
 
しかし、一際目立つのが大きなペン先。
 
今回カヴェコ オリジナルを購入した一番の動機がこの大きなペン先にあると言っていいでしょう!
筆記感については後述となります。
 
ちなみに、写真内のスペシャルはBOCK社製のチタンニブに付け替えてあります。
 
 
続いてペン先を比較していきます。
 

 
並べることで大きさが際立つオリジナルのペン先。
サイズで言うとスプラのペン先と同等サイズと思われますが、どこかの販売サイトでスプラ用ペン先との互換性がない(付け替え不可)と書いてあった覚えがあります。
 
これは是非試してみたいのですが、残念ながらどこのサイトを見ても 今のところスプラ用14金バイカラーニブが売り切れているという現状…。
 
入手したらペン先交換もトライしてみようと思います。
 

 
天冠のカヴェコロゴを並べてみましょう。
 
オリジナルはスカイラインスポーツと同じクロームプレートのロゴ。
一番左のスペシャルは若干ニッケルっぽい色合いをしていて違いが見られます。
一番右のV16は昔の八角形のカヴェコロゴ。
 
クリップ備え付けモデルはカヴェコロゴの「CO」がクリップ面に来るようにできていますね。
 

 
キャップのサイズだけを比較してみます。
実はスペシャルとぼほ同サイズであるオリジナルのキャップ。
 
カヴェコと言えば今では八角柱のキャップ及び胴軸ですが、V16のみ12角柱+丸胴軸。
復刻される前のカヴェコは丸軸のモデルも幾つか発売されていました。
 
今後はそういった丸軸のバリエーションにも期待したいです。
(現行品だと復刻モデルとしてはディアやスチューデントくらいでしょうか)
 

 
バリエーション豊かなカヴェコシリーズ。
皆さんはどれがお好みでしょうか?
 
太めの軸かつクラシックな外観で大型ペン先を使いたい場合は、オリジナルが選択肢に入るかと思います。
 

 

大型スチールペン先の書き味は?

過去の記事でも、散々カヴェコのスチールペン先を褒めてきた私ですが、サイズが大型になったことでスチールペン先の書き味はどう変化したのでしょうか。
 
この項ではその違いをなるべく分かりやすくお届けできればと思います。
 

 
前々からスプラを使っている人からすると見慣れたペン先かも知れませんが、スポーツユーザーからすると見違えるほど大きなスチールペン先。
 
であると同時に、このカヴェコ オリジナルの仕様で惜しい部分が、標準搭載のペン先がスチールであること。
この価格帯の万年筆であれば、せめて14金ペン先は搭載してほしかったところではあります。
(別売のスプラ用14金ペン先が税込みで35,200円することから、搭載したら5万超えになりそう…)
 
そう思うと、リーズナブルな価格で金ペンが楽しめる日本製万年筆は凄いとしか言い様がありません。
 
ペン先のサイズは、首軸から見えている部分で、
 
大型:24mm
通常:16mm
 
となっています。
 

 
筆記してみての大きな違いは、力点が指先、支点が首軸~ペン先、作用点がペンポイントだとすると感覚的な違いは…、
 
大型ペン先:支点がニブの中心あたり
標準ペン先:支点が首軸の真ん中あたり
 
と表現できるのではないかと思います。
※グリップポイントが首軸の胴軸寄りである場合
 
なので、大型のペン先で書く場合、よりニブのしなりや素材感を感じながら書くことができると考えます。
 

 
グリップポイントは、首軸の胴軸寄りが一番大型ニブの恩恵を受けられる部分ではないかと。
先にも触れた通り、キャップは尻軸にポストできないためこの全長での筆記となります。
 
カヴェコのスチールペン先の書き味は大型になっても健在で、擦れなく安定した書き心地。
 
ペン先のしなりはなくガチニブですが、グリップポイントが胴軸寄りにあるというだけで 余計な力が抜けると言いますか、やはり大型ニブで書いているという独特の柔らかな筆記感に変わります。
 

 
ペン先のデザインは通常ニブと同じ。
ここは変えてもよかった部分ではないか、と思うのは私だけでしょうか。
 
もともと嫌いなデザインではないためこれで良いと言えば良いのですが、新鮮味もほしいところ。
 

 
ペン芯はどこかで見たことがあるプラスチックペン芯。
通常サイズはペン芯にも「KA/WE/CO」のロゴがありますが、こちらはプレーンなデザインです。
 
デルタの万年筆でこれと同じペン芯が付いたモデルを見たことがあるような…。
 

▲左:スカイラインスポーツ、右:オリジナル
 
大きさの差が歴然な250のペン先。
これで金ペンだったら…!と思うと、やはりスプラ用の14金ペン先を試すしかないですね。
 

 

大型ペン先の比較例「モンブランのペン先と比較」

最後の項はおまけとして、モンブランのマイスターシュテュックとの比較です。
 
当ブログサイトに訪れる方であれば、高い確立で持っているであろうモンブランのマイスターシュテュック。
 
今回はカヴェコスポーツとの比較がメインでしたが、カヴェコスポーツ自体が小さな万年筆ですので、一般的なサイズの万年筆かつ サイズのバリエーションが豊かな万年筆として、マイスターシュテュックを比較例に挙げていきたいと思います。
 
これは万年筆のスペック云々の比較ではなく、純粋にサイズ感を測るという点でご参考に頂ければと。
 
ということで、ずらっと並べてみました。
 

 
左から、マイスターシュテュック#114、カヴェコ オリジナル、マイスターシュテュックP145、マイスターシュテュック#146、マイスターシュテュック#149。
 
各メーカーから出ている通常サイズの万年筆が#145や#146のサイズとなりますので、カヴェコ オリジナルはそれらよりは15mmほど背の低い万年筆となります。
 

 
ペン先を並べてみました。
 
金ペンと並んだカヴェコのスチールペン先。
オリジナルは右から2番目です。
 
サイズでいうと#146と#149の間となります。
これだけ見ても大きなペン先だということが分かりますね。
 
うう…、金ペンにして並べてみたい。
 
ニブの形状については、モンブランが自社製造、カヴェコはBOCK社製となります。
モンブランのニブは流石に美しいラインを形成していて、正に剣先と呼ぶに相応しいペン先です。
 

 


 
さて、今回はカヴェコの新製品「カヴェコ オリジナル 万年筆 250」をレポートしました。
 
カヴェコのスチールペン先の書き味が好きであれば、大型ペン先の書き味もきっと気に入られるかと思います。そして、クラシック然としたデザインも、私を含め往年のカヴェコファンのハートを掴んで離さないモデルとなるでしょう。
 
カヴェコを持っていない方からすると、大きなペン先をクラシックな胴軸で楽しむことができる、選択肢の一つとしてのラインナップ。
しかし、一方でカヴェコ経験者においては 真新しさを求めて買ってしまうと危ない商品となります。
 
ここがカヴェコ オリジナルを買うかどうかの一番のポイントとなるのではないでしょうか。
 
ALスポーツと類似した表面処理、カートリッジ/コンバーター両用式、スチールペン先。
全体的な仕様がALスポーツの延長線に止まってしまっているという事実が本当に惜しい部分です。
(逆にスポーツシリーズはクリップ形状やペン先をオプションとして選べるというカスタマイズの幅あり)
 
あえて厳しい言い方をすると、「オリジナル」という復刻の名を冠した割に中途半端な仕上がりとなってしまっているように思います。
 
拡張性という意味では、可能かどうかはやってみての判断となりますが、スプラ用金ペン先への交換。
クリップは固定式ですので変更不可となりますし、軸のカラバリも今のところはなし。
 
限定モデルを含めた今後の動きに注目ですが、やはり、思い切って吸入式で金ペンというカヴェコとして尖ったと思えるモデルを出してほしかったというのが本音です。
 
これはオリジナルのボールペンの方に期待するしか…!
 
ということで、良い部分も今ひとつの部分も含めてレポートとなりましたが、厳しい意見もカヴェコを愛するがゆえ!と思って頂ければ幸いです。
 
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

スポンサーリンク