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ハンマートリガーの魅力 【モンブラン #782 ボールペンレビュー】

2021年9月11日

皆さんこんにちは。以前の記事でいつも愛用しているボールペンや一般的にビジネスに向くであろうボールペン等様々なボールペンをレポートしてきました。どちらかというと現行品よりヴィンテージ品をご紹介することが多い当ブログですが、今回もその例にならって今は廃盤となっている過去の名品を振り返っていきます。私が過去に発売された筆記具を探すとき、意識的に基準にしていることがあります。それはちょうど自分の生まれ年あたりの筆記具を探すということで、年代でいうと7080年代。

 

 

 

ボールペンや万年筆はよほど完成されたデザインやメーカーにとってヒストリカルなシリーズでない限り、どこかのタイミングでモデルチェンジします。その廃盤と誕生を繰り返す各メーカーの長い筆記具の歴史の中で消えていったモデルというのが必ずあるのですが、消えていったモデル・現行にまで続くモデル共に、7080年代に世に出た筆記具というのは開発時間とコストを惜しまず、メーカーの技術も熟してきている頃のため名品が多い傾向にあるのです。

 

今回レビューするのはそんな70年代~80年代にかけて販売されていたモンブラン#782ボールペンです。モンブランも例によって70年代~80年代にかけてのものは大変出来が良いと言われていて、万年筆のマイスターシュテュック№149などが分かりやすい例ではないでしょうか。オーションやフリマサイトでも見かけることが多いこの#782ボールペンもしかり、普及モデルですが当時のボールペンとしては近代的なデザインと使いやすい操作感でファンが多いモデルです。それではモンブラン#782ボールペンを見ていきましょう。

 

 

 

 

 

 

【#782のデザインとスペック】

782を見ていく上で他のモンブラン製ボールペンとの大きな違いは、その大きめに作られた口金やセーフティーレバーメカニズムと呼ばれる芯繰り出し機構をはじめとした特徴的なフォルムではないでしょうか。Ballpixシリーズとして発売されたこのモデルは、手元にあるシルバー×マットブラックの他にシルバー×グロスブラック(#780)、ゴールド×マットブラック(#784)の3モデルが出ていました。

 

#782(上)とマイスターシュテュック164(下)の重心の違い

 

ヘアライン加工の口金は127mmという短めなペン全体の長さの7分の2程の長さを占めており、美しいデザインを含め#782ボールペンを大きく印象づけているポイントです。この口金の重量は約6gあり、ペン全体の重量(約16g)の37.5%を占めるため、筆記感はフロントヘビーとなっています。

 

 

また、ヘアライン加工の口金が滑ることもあって口金を握って書く筆記方法には向いていません。そのためグリップポイントは口金上のマットな樹脂部分となり、筆記点から離れた言わば万年筆ような持ち方となります。

 

 

メーカー名などの刻印はマットな樹脂軸の口金寄りの、ちょうどグリップする部分にあって控え目に「MONTBLANC」「GERMANY」と入っています。製造年によって「782」とモデルナンバーが入っているものもあるようです。

 

 

尻軸の方に目をやるとクリップもヘアライン加工が施されていて統一感あり。モノトーンカラーにヘアラインというと、まるでついこの間レビューしたラミー2000のようですね。クリップにはハンマートリガー(セーフティーレバーメカニズム)が付いており、芯を収納しているときは何色の芯が入っているか分かるようにリフィルの一部(リフィルアダプター)が見えるようになっていて機能的です。クリップは一枚の金属板が曲げられ作られているため、バネなどは仕組まれていないのですが「しなり」も十分。

 

 

天冠にはお馴染みのホワイトスターがあり、こちらは膨らみはなくフラットなデザイン。山のような天冠に白い雪が乗ったデザインもいいですが、こういったさりげないホワイトスターもお洒落ですよね。独特な芯の繰り出し機構から、胴軸の部品は樹脂パーツ一つというシンプルさ。ノックするボタンも無ければ回転させるキャップも無いという、発売当時にしたらこのデザインはかなり近代的な、時代の先を行っていたデザインだったのではないかと思います。

 

 

 

【特徴的な芯の繰り出し方法】

一般的にハンマートリガーと呼ばれている芯の繰り出し機構は、正式にはセーフティーレバーメカニズムといいます。セーフティーレバーメカニズムは#782の発売時からできた繰り出し機構ではなく、1956年頃のモンブランカタログにも載っているとおり歴史の古い繰り出し機構です(以前のモデルのトリガー部分は金属製)。現代のモンブランのラインナップからはこの機構を持ったボールペンは姿を消していますが、50年~80年代にかけてモンブランのボールペンではポピュラーな機構だったことがうかがえます。

 

 

芯繰り出しレバーはクリップ側に付くため、天冠にボタンがあるノック式に比べて全長を短くできるというメリットがあります。ですので他のノック式ボールペンに比べてコンパクトにでき、ノック式のように片手の親指だけで簡単に芯が繰り出せるため機能的でした。

 

セーフティーレバーメカニズムにはどのような機能上のメリットがあるのでしょう。ボールペンを胸ポケット等に挿す際、うっかり芯をしまうのを忘れていてシャツを油性インクで汚してしまったという苦い経験がある方もいらっしゃるかと思います。それを防止することができるのがこのセーフティーレバーメカニズム。芯を出したままポケットなどに挿した際、ポケットの生地でレバーが上に戻り、同時に芯を引っ込めるという仕組みです。

 

 

このような機構を持つが故に、発売当時のリフィルは現在の純正リフィルより長めに作られていました。現行の純正リフィルを使う際、リフィル交換は一手間が必要となっています。

それはと言うと、このリフィルの尻に付いたアダプター。今は無き産物のため当時モノのリフィルに付いてあるものを使い回すか自作するしかないのですが、このアダプターが無いと現行品のモンブランリフィルは使えないので注意が必要です。手元にあるものは青いリフィルに付いていたアダプターのため青色ですが、黒いリフィルに付いているものは黒いアダプターとなっています。当時モノのリフィルと一体化しているため誤って捨ててしまいそうですが、引っ張ればスポンと取れるので残しておきましょう。アダプターには出っ張りがあるためリフィルにしっかり固定されます。

 

 

最近はモンブランのボールペンに他社のリフィルを入れるのが密かなトレンドでもありますが、それらに対してアダプターが使用できるのか検証してみました。

まずはネットで手に入りやすいドイツ製の無地モンブラン互換リフィル。これは現行モンブランリフィルと同じインク容量(この手のリフィルは中が確認できないので厳密には同じ容量かは不明ですが…)でありながら無印のため非常に安く手に入ります。コスパの高い商品ですが、これにBallpixシリーズで必要なアダプターが着けられるかというと

 

 

着けられません!

一見、純正リフィルと同じようなリフィルの形のためいけそうに思うのですが、出っ張り部分に対応していないのか奥まで差さらずダメです。続いて4C規格の芯をモンブランボールペンで使うためのアダプター「MB-01」に着けられるか試したところ、…こちらもNG!こちらはアダプター側の穴が小さすぎて全くささりませんでした。

 

 

ということで、アダプターが使用できるのはモンブラン純正リフィルのみということになります。少し残念な気もしますが、やる気があれば自作もできそうですのでどうしても他社リフィルを入れて楽しみたい!という方はアダプターを作ってみるのも手ですね。

 

 

 

【サイズやデザインを比較】

それでは、キャップやノックボタンが無い形状ゆえにコンパクトにまとまっている#782を他のボールペンとサイズ比較していきます。比較に使うのは、王道のモンブランマイスターシュテュック164、デザインが若干似ているラミー2000(ペンシル)、サイズ感が近いカランダッシュのエクリドールです。これから入手を考えていらっしゃる方へサイズ感の参考になれば幸いです。

 

左から、マイスターシュテュック164、#782、ラミー2000、エクリドール。

 

並べてみるとデザインは現代的な部類に入るためラミー2000とマッチしますね。ヘアラインの部分は#782の方が明るいシルバーで、ラミー2000はライトグレーっぽい色です。クラシカルなハンマートリガーが欲しいんだ!というクラシック派にはプレシャスレジンを用いた#281や#380がありますのでそちらをお勧めします(同じく廃盤品ではありますが)。全長ですが、#782とカランダッシュエクリドール(849シリーズも同様)の身長差が1mmとほぼ同じ長さ。#782はグリップポイントが高いのと重さも軽いので筆記感はまるで違いますが、コンパクトなボールペンが好みの方にも良いかもしれません。

 

 

 

【まとめ】

さて、今回は70年~80年代のモンブラン筆記具の名品「モンブラン #782 ボールペン」をレビューしてきました。現行品にはないセーフティーレバーメカニズムを搭載したモダンなデザインのボールペンからはモンブランの筆記具の歴史を感じることができます。使用感も、現代のノック式・回転繰り出し式の機構慣れしている身としてはかなり斬新(過去のものですがあえて斬新)に思いました。シンプルに芯の繰り出しが楽しい!

ということで、Ballpixシリーズの残り#780と#784も気になりだしましたし、さらにクラシカルシリーズの#281や#380も気になりだしてしまうという7080年代のモンブランには新たなボールペン沼も広がっていそうです。

それではまた。

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