ボールペン・万年筆・メカニカルペンシルなど、文房具好きの購入記を写真多めで比較レビュー。
たまーに気になったガジェットのレポートも。
物欲のままに手に入れたアイテムをレビューしたりしなかったり。

注目すべきモンブランの細軸ボールペン!【ノブレスとノブレスオブリージュ 比較】

2021年6月9日

今回は久々にモンブランの細軸ボールペンに関する記事です。

 

モンブランのボールペンは今まで色々と使ってきましたが、個人的な好みから仕事で使うのは太軸寄りのボールペンがメインとなり、細軸モンブランはコレクション的な位置づけになってしまっています。

 

しかし、万人にお勧めするとなると太軸でなく細軸になってくるのが悩ましいところ。

(細軸・太軸それぞれの良さがあれど、最終的には使う人間の好みということに他なりませんが…)

 

私の職場では若年層になるほど細身のペンが好まれ、そして使われているという傾向にあります。

細軸のボールペンは使う人を若々しく見せ、また、それを持つ手も美しく見せます。

逆に太軸のボールペンは使う人に威厳と貫禄を。

 

ということで、上記の私の経験から来年から社会人になるという方は少しの参考になるかも知れません。

 

 

今回取り上げるモデルは廃番ですが、ユーズド市場でも玉数が多いモデルとなり価格もある程度こなれていますので、モンブランのボールペン(リフィル)の書き味を試したいという方に一番おすすめのモデルとなります。

 

なんだかんだで最終的に好きなボールペンを使い続ける理由は、軸のデザインが好みであるか、持ちやすいか、リフィルが自分に合うか、という三点になりますが、歴史の長いモンブランだからこそ新旧含めて様々な軸があり選択肢が広がるわけですね。

 

リフィルのメーカー間互換性の問題から、モンブランのリフィルを使えるのはモンブランのボールペン(軸)でしかありませんので、モンブランリフィルの書き味が好きな方はモンブランのボールペンを、反対にモンブランリフィルの書き味が好みでない方はそれ以外のメーカーのボールペンということになります。

 

「モンブラン ノブレスオブリージュ ボールペン」

 

 

 

細軸のモンブランといえばノブレスやノブレスオブリージュというほど、細軸モンブランの代名詞的なモデルではないでしょうか。

 

手元のノブレスは軸の特徴からノブレスオブリージュの初期型モデル、すなわちノブレスからノブレスオブリージュへと変化していく途中のモデルです。

モンブランの試行錯誤が垣間見える一方、最高の筆記具を作らんとしていた拘りも見えるモデルとなっています。

 

それではその特徴やノブレスとノブレスオブリージュの違いなどをまとめていきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

【ノブレスとノブレスオブリージュの違い】

ノブレスとノブレスオブリージュを比較すると単なる前身と後継モデルという枠に止まらず、この2本は全く毛色の異なるボールペンだったりします。

 

 

どちらもモンブランの筆記具の中では細身のボールペンになりますが、ノブレスはノック式、ノブレスオブリージュは回転繰り出し式と軸の構造の違いに始まり、軸の素材や表面の仕上げなど何から何まで違っていて、名前の一部は同じものの、もはや別モデルと言って良いかも知れません。

 

 

ノブレスは1970年代~80年代の製品で、口金部分の長い洗練された細身のデザインでリフィルの繰り出しはノック式。軸の仕上げが多彩でモノによってはオークションやフリマで見かけることの多いモデルです。

 

ノブレスにも前期型と後期型があり、その違いはリフィルの収納方法。

前期型はクリップを持ち上げることでペン先が戻る機構を備えていて、後期型は現在のノック式ボールペンのように1ノックでペン先出し、2ノック目でペン先を収納するタイプとなっています。

 

手元にあるノブレスは前期型。

見た目は後期型と変わりませんが、ノックした時のノックボタンの沈み具合で判断できます。

詳しくは後述していきますが、たまにオークションを見ていると前期型のノブレスが「ペン先が戻らないジャンク品」として安く出品されていることがあります。

 

手元のノブレスもそんな理由で安価で購入したものです。

 

しかし、造り自体はかなりしっかりとした印象で、個人的に樹脂軸の後期型ノブレス・オブリージュを買うくらいならノブレスを買った方が良いと思うくらい。

 

モンブランが好きで細軸が好きなら押さえておきたい1本となっています。

 

 

一方、ノブレスオブリージュは1980年代~2000年頃まで販売されていた製品で、軸は樹脂軸、回転繰り出し式の機構を備えた、先代のノブレスよりもちょっとだけ太軸のモデル。

 

ノブレスオブリージュというとオークションやフリマでも後期型をよく目にしますが、私がお勧めしたいのは前期型の方。

前期型の方が断然に造りが良いのです。

 

前期型も後期型も1万円を超える価格で出品されていることが多く、廃番品となれど人気が覗えますが、同じ1万円を出すなら前期型を買うべきです。

 

ということで、前期型と後期型それぞれの特徴は以下となります。

 

 

[前期型の特徴]

・金属軸でシルバープレートや美しいマーブルラッカー塗装の仕上げがある

・クリップがバネ式

・軸径はノブレスと同等で細い

・クリップはフラットなタイプと中抜きのタイプがある

・天冠のホワイトスターはフラット型とドーム型がある

・キャップリングの「MONTBLANC・NOBLESSE・」刻印の有り無しがある

 

前期型を細かく分けると前前期型と後前期型に分けられ、

フラット型クリップ・フラットなホワイトスター・「MONTBLANC・NOBLESSE・」刻印無しが前前期型。

中抜き型クリップ・ドーム型のホワイトスター・「MONTBLANC・NOBLESSE・」刻印有りが後前期型。

 

 

[後期型の特徴]

・樹脂軸で軽く様々なカラーバリエーションがある

・クリップは固定式

・軸径はノブレスより少し太め

・クリップは中抜きタイプのみ

・天冠のホワイトスターはドーム型のみ

・キャップリングの刻印は「MONTBLANC・NOBLESSE・OBLIGE」

 

 

軸の仕上げや造りでいうと間違いなく前期型ですが、金属軸×細軸は人によっては滑りやすいと感じるため、持ちやすさという観点だと後期型という選択肢になります。

 

 

 

 

【ノブレスオブリージュの前期型と後期型の比較】

それでは前項の前期型と後期型のオブリージュを比較していきます。

 

厳密に言うと手元のノブレスオブリージュは後前期型で、軸径8mmの細軸、真鍮にシルバーコーティングの胴軸、中抜き型クリップ、ドーム型のホワイトスター、刻印は「MONTBLANC・NOBLESSE」。

 

早速、後期型の樹脂軸オブリージュと並べてみます。

 

 

大きく違うのが軸径。

左からノブレス#1957、オブリージュ(後前期型)、オブリージュ(後期型)。発売順も左から右に行くほど後発となります。

 

ノブレスとオブリージュ(後前期型)は軸径が同じ8mmですが、後期型のオブリージュは9mmで一回り太くなっています。いや-、軸の造りは後前期型が良いのですが、握りやすさ・グリップ感は樹脂軸の後期型に軍配が挙がります。

 

 

クリップの比較です。

中抜きのデザイン自体は後前期型と後期型で似ているのですが、クリップ付け根の造りがまるで違うことがお分かり頂けるのでしょうか。

 

 

前期型のノブレスオブリージュはバネ式のクリップとなっていて造りとしてもかなり手が込んでいると言えます。こういった言わば高級志向の機能を持つものはStデュポンのボールペンにも近いものがあります。

 

 

ついでにクリップ裏の刻印ですが、前期型のノブレスオブリージュのクリップ裏には「MONTBLANC GERMANY」。場所はクリップ先端寄りです。

 

 

一方、後期型はクリップの付け根裏に「GERMANY」のみとなっています。

 

 

続いてクリップ先端の形状。

左の後前期型のクリップはエッジが効いている印象で、後期型は面取りされています。

後期型の方が金属の荒さ(鋳造感)が無く滑らかですが、これも人の好みによりけりです。

 

 

キャップリングの刻印を見ていきます。

私が個人的にかなり気に入っているのがオブリージュ後前期型の刻印フォント。

太めのフォントで深めに彫られており、この字体が拝めるのも前後期型のみ。(前前期型にはキャップリングの刻印自体がありません)

 

後期型オブリージュの刻印は字体が細く密かに縦のラインが入ったフォント。

「A」の文字を見ても分かるとおり、マイスターシュテュックにも共通するものがあります。

 

 

ホワイトスターはどちらもドーム型。

ドーム型は後前期型以降のオブリージュのみで、前前期型はフラットなホワイトスターとなっています。

ぽっこり膨らんだホワイトスターは可愛いですね。

 

よく見るとそれを受ける台座の形状も異なっています。

こうやって細かなデザインのマイナーチェンジを繰り返しながら発売されてきたわけですね。

 

▲左が前期型(後前期型)、右が後期型。

 

正面から見たクリップの形状は中抜き型で似ていましたが、実はクリップ上部のデザインは違っています。

後期型になるにつれてクリップはシンプルに変化していったことが覗えます。

 

 

ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)=「貴族たるもの、身分に相応しい振る舞いをしなければならぬ」というフランスのことわざで、身分の高い者はそれに応じた社会的責任や義務を果たさなければならないという欧州の道徳観。

 

ノブレスオブリージュ、素晴らしい名前の筆記具だと思います。

 

 

 

 

【ノブレス#1957とノブレス#1947の魅力】

話を少し戻してこちらはノブレスについて。

先にも書いたとおり、ノブレスは金属製の細軸ということもあって非常に凝縮感と精密感に溢れています。

 

 

ノブレスの軸には様々な仕上げがあり、手元にあるのはプラチナプレートとゴールドプレート。

万年筆も加えると、他にもステンレススチールやクロームプレート、ブラッククローム、ローズゴールドなど種類は多いです。

 

型番はプラチナプレートが#1957、ゴールドプレートが#1947。

 

特にこの2本は胴軸にファーバーカステル伯爵コレクションのようなリブパターンが刻まれており、高級感が増しているとともに細軸の天敵である軸の保持のしにくさの軽減に一役買っていると言えます。

 

 

ペン先は長めの口金で、ノックボタン付近のデザインともマッチしたシルエット。

また、クリップはエッジの効いたこれまた細身のデザインで非常にエレガントな雰囲気を醸し出しています。

 

70年代のノブレスはクリップを持ち上げる事によってペン先を収納する機構。

これはポケットに収める際にペン先が仕舞われた状態になるためと推測しますが、この辺りのモンブランボールペンはハンマートリガーのものもそうであるように、ユーザーの事をよく考えたボールペンを作っているな、と感心します。

 

これが80年代になると通常のノック2回によるペン先の出し入れに変わっていきます。

どちらがいいかは好みになりますが、個人的に70年代のモンブランの筆記具はこのような痒いところに手が届く仕様なので好感が持てるんですよね。

 

 

ノックしてペン先を出した状態。

ノックボタンはここまで沈み込みます。

 

確かに、このままでは再度ノックしてノックボタンを戻せないので、このボールペンの仕様を知らない人は壊れていると思っても仕方ないでしょう。

 

クリップを支える金具のノックボタンに近い方がペン先を収納するためのスイッチを兼ねていて、ペン先を収納する際はクリップ先を持ち上げるかクリップの上部を押し込みます。

 

同じ70年代のノブレスですが、尻軸の刻印には違いがあります。

手元の#1957(プラチナ)には「MONTBLANC-NOBLESSE-GERMANY」、#1947(ゴールド)には「MONTBLANC-NOBLESSE」。

これも製造年代によって変わってくると思われますが、こういったバリエーションを追い続けると切りがありませんね。

 

 

ホワイトスターも造りが良く、プリントではなくしっかりとした樹脂の象嵌となっています。

サイズはかなり小さく、ノブレスオブリージュやマイスターシュテュックのような通常サイズと比べて4分の1程度。

 

このように妥協点がなくしっかりと作り込まれた感があるのがノブレス。

特にリブパターンが刻まれたプラチナコートやゴールドコート(20金張り)のノブレスは一見の価値ありですので、細軸モンブランの歴史に触れたい方はチェックしてみてはいかがでしょう。

 

 

 

 

【装填するリフィルの注意点】

最後にリフィルについての注意点です。

 

モンブランのボールペンリフィルは「ジャイアントリフィル」と呼ばれているのですが、昔のジャイアントリフィルはかなり長いリフィルでした。

 

1980年代にかけてリフィルの形も変わり、現在の長さになったのですが、70年代のモンブランボールペンを使う際は対応するリフィルのサイズに気をつけておかねばなりません。

 

 

ノブレスオブリージュとノブレスのリフィル交換時の分解図。

オブリージュはキャップと胴軸の堺から分解し、ノブレスは口金を外して分解します。

 

同じモンブランのリフィルを装填しますが、右側のリフィルに注目です。

 

 

70年代のモンブランボールペンに現行のリフィルを入れて使う際に必ず必要なもの。

リフィルの尻に着いている黒い(又は青の)アタッチメント。これがないと始まりません。

 

昔はこのアタッチメントの分までインクが入っていたと思うと、かなりお得なリフィルだったのではないかと。

リフィルの形状変更はコストカットに他ならないと思いますが、こういったアタッチメントが用意されているお陰で70年代の素晴らしいボールペン達を今でも使い続けることができるのです。

まさに70年代ボールペンの心臓部分。

 

 

さて、今回はモンブランの70年代の細軸ボールペン「ノブレス」と「ノブレスオブリージュ」を比較しながら見てきました。

 

やはり70年代~80年代にかけてのモンブランボールペンは造りが良い!

オークションやフリマの価格もある程度こなれていますので、手に入る機会も多いながら、造りがしっかりとしているためお勧めできます。

 

特にベストバイだと思う前期型ノブレスオブリージュのお勧めポイントをまとめると、

 

・金属製かつシルバーコーティングや美しいマーブルラッカーの胴軸

・バネ式クリップ

・前期型オブリージュのみの美しいキャップリングのフォント刻印

・回転繰り出し式かつ現行リフィルがそのまま使える

 

 

現在のモンブランボールペンは樹脂軸が中心ですが、こういった精密感のある金属軸も良いものです。

カランダッシュにハマっている金属好きの方にも嵌まるボールペンではないかと思います。

 

▲左から、ノブレス#1957、ノブレスオブリージュ(前期型)、カランダッシュエクリドール

 

それでは長くなりましたが今回はこの辺で。

最後までお読み頂きありがとうございました。

スポンサーリンク