ペリカン スーベレーン万年筆のペン先を交換してOBニブの書き味を楽しむ!
皆さんこんにちは。
前回の記事ではクロスのタウンゼントをシステム化し18金のペン先(首軸)を着けてなめらかな書き味を堪能しました。
一般的に万年筆(メカニカルペンシルや使い捨てのボールペンもですが…)と言うと購入する時にペン先(字幅)を選び、以降その万年筆については字幅を変更することなく、そのペン先と付き合い続けることになります。
しかし、前回のクロス(CROSS)や私がよく記事にするカヴェコなどは比較的簡単にペン先(または首軸)を交換することができ、一本の軸で様々な字幅(もしくはペン先の素材)を楽しむことができるのです。
万年筆というと安い買い物ではないのでペン先が交換できるに越したことはないのですが、値段の高い万年筆ほど容易にペン先交換できるものが少ないというのが現状…。
更に万年筆のインク吸入機構が吸入式のものだと首軸と胴軸が一体となっているものも多く、字幅やペン先を交換しようものなら、専門的な知識や道具も必要となるためペンドクターにお願いする運びとなります。
ただ…!
老舗の万年筆メーカーの製品で容易にペン先交換できる万年筆があります。
それがペリカンの万年筆!
ひとえにペリカンの万年筆と言っても全てのペリカン製品がペン先交換できるわけではないのですが、フラッグシップモデルであるスーベレーンシリーズとその系譜にあたる万年筆でそれが行える、とてもユーザーライクな万年筆なのです。
今回の記事は、ペン先交換に若干ハマりつつある私が手にしたペリカンの旧型ペン先を現行品の軸に着けて楽しもう!というもの。
ペリカンのスーベレーンであれば何でも互換性があるのかというとそうではありませんが、これからペリカンのペン先を交換してみたいとお考えの方に、私が実際ペン先交換してみて気付いた点、注意点などを共有できたらと思います。
それでは見ていきましょう。
ペリカンスーベレーンM400とペリカン#400
ネットに漂う過去のペリカンの廃番モデル。
沼の入り口と呼ぶに相応しいですね。
私がペリカンのスーベレーンを購入したのはまだ万年筆にハマりだして間もない頃。
ファースト万年筆はウォーターマンのカレンデラックスでした。
ペリカンスーベレーン、特に「M400」を使ったことがある人には分かると思うのですが、心配になるくらい軸が軽い。軽量かつコンパクトなのが今も昔もスーベレーンM400の売りでもあるのですが、最初に万年筆では重い方のカレンを使っていたこともあり、その重量ギャップに驚いたものです。
(当時は金属軸が好きでしたのでスーベレーンM400の出番は少なかったと記憶しています)
最初に手にしたのはブルーストライプというスーベレーンではオーソドックスな青縞モデル。
スーベレーンと言えば縞でしょ、という事で手にした青縞モデルでしたが、個人的には(仕事で使うには)少し派手すぎるかな…などと思っていました。
それから、クラシックで控えめなデザインとカラーリングのペリカン#120を手にし、その後スーベレーンのボールペン数本に道を外しながらも、時を置いて(満を持して?)M800を購入。
そして、ペリカン物欲が消滅したと思い込んだ矢先、じっちゃんが踏み入れてはダメだと言っていたガチの廃番ペリカンを握りしめた私がいるのでした。
それまで、ペリカンの万年筆はペン先交換ができるとは知ってはいたものの、実際に行うこともなく(というかペン先だけで結構な値段なので ついでに軸ごと買った方がいいでしょという認識だった)しばらく経ち。
夜中にスマホを弄ってた時にたまたま発見してしまった「ペリカンの旧型バイカラーペン先」の格好良さに惚れてしまったのです。
※私は本当にダメな大人です。健全な皆様は深夜にスマホを弄らないようにしましょう!
以上、私のペリカン遍歴でした。(誰も聞いてない)
ということで、まずはペリカンスーベレーンM400と廃番もでるであるペリカン#400を比較していきたいと思います。
▲左が#400(緑縞)、右がM400(青縞)
全長に数ミリの違いはあるものの、ペリカン#400はスーベレーンM400の先輩(先祖?)にあたるモデル。
パッと見で分かる外観の違いはキャップリングと尻軸のリング、そして天冠の違いです。
キャップリングは#400がシングル、M400がダブル。
刻印も#400は「PELIKAN – GERMANY – 」のみとシンプル。#400のような型番らしきものは刻印されていません。
一方、M400は「PELIKAN SOUVERÄN GERMANY」と明確に“スーベレーン”というモデル名の刻印があります。
尻軸(ピストン操作部)の比較。
左の#400はリングが無く非常にシンプル。M400はダブルリングでゴージャスな印象を受けます。
よく見ると尻軸末端の膨らみは#400の方があってエッジも柔らかめですね。
お馴染みのペリカンクリップは先祖代々伝わっていますが、現行のペリカンは少し痩せましたかね。
天冠の違いが私のペリカン#400のお気に入りポイント。
左が#400、右がM400です。#400の天冠ペリカンマークはシンボリックで雛が二匹なのに対して、M400はゴールドメダルに雛一羽。#400のノスタルジックなマークがとても可愛いです。
それから地味な違いとして、クリップの厚みとクリップリングのエッジ処理。
#400はクリップに厚みがあり、クリップリングは角が取れて丸みがあります。これもモンブランマイスターシュテュックのクリップと同様に年代による仕様変更ですね。
続いて美しい#400のグリーンストライプについてM800(同じく緑縞)と比較します。
#400の緑縞は金属光沢が控えめな濃いめのストライプがシックです。
左が#400、右がM800。
ストライプ一本一本の歪みの少なさや間隔の均等さは現行M800の方が上ですが、#400の濃いグリーンかつ透明感のあるストライプも捨てがたい。
ペリカン万年筆の良いところは、コンパクトなサイズの割に凝縮感のあるデザイン。
ソリッドなカラーの万年筆も良いですが、胴軸のストライプと吸入式が更にこの万年筆の精密感を高めているように思います。
現行のゴージャスなM400に対して控えめでクラシックな#400でした。
気になるペン先については次項以降で見ていきます。
ペリカンスーベレーンM400のペン先交換の仕方
さて、今回は手に入れた旧型ペン先を現行モデルに着けて楽しもうというのが本題。
入手したペン先がこちらの18金バイカラーペン先。
刻印は「Pelikan 18C-750 OB」。
字幅はOB(オブリーク)ということで、Bの字幅を斜めにカットしたペン先です。
それにしても美しいペン先。
現行のニブとデザインが違うほか、ゴールドの色味もどこか控えめな感じがします。
ペリカンは2000年代になりOBの生産を終了しているため、このニブデザインを含めたOBペン先はなかなか希少ではないかと。
早速、ペン先のゴールドプレートが剥がれかかった#120のスチールペン先と交換していきましょう!
交換を行う際は、しっかりとインクタンクを洗浄し十分に乾かしてから行います。
ティッシュや柔らかい布でペン先を保持し首軸に向かって反時計回りに回します(通常のネジと同じ)。
この際、ペン先をゆがめないように細心の注意を払い、ペン芯の中心に均等に力が加わるよう親指・人差し指・中指の3点で保持するのが好ましいです。
最初は少し固めですが、焦らずゆっくりと回していきます。
固い部分を乗り越えたら、胴軸側をゆっくりと回して取り外します。
ペン芯はこのような構造になっていて、ベースの金属部分の先にネジ切り、その中にペン芯という構造です。
本当に簡単に外せました。
ペン芯を外した首軸~胴軸側。
ぽっかりと穴が空いていてインクタンクに直接アクセスできます。インクタンク内のインク汚れなどは綿棒を使って取り除くことができますので、このシンプルな機構はメンテナンスにももってこい。
あとは新しいペン先を同じようにクルクルと差し込めば交換完了!
締める際も余計な力が入らないよう注意し、ペン先保持にはティッシュや柔らかい布を使いましょう。
無事にペン先交換が完了し、18金のペン先を持った#120が完成しました。
この丸いキャップと尻軸にブラック×グリーンカラーの#120は、旧型のペン先がよく似合う気がしませんか?
ペリカンのペン先交換の注意点とペン先比較
このように、ペリカンスーベレーンシリーズとその前身モデルや亜種モデルは簡単にペン先を交換することができます。
取り扱いの注意点とすればニブとペン芯がズレないように、慎重に行うこと。
力加減と力点は重要だと思います。
左が#120にもともと付属するスチールペン先。
右が交換に使った18金OBペン先です。
気軽に交換できるだけあって、ペン先ユニットの構造は全く同じ。
カヴェコの時もそうでしたが、このペン先交換のし易さは万年筆そのものの楽しさも広げていると言っていいでしょう。
ペン先を付け替えてもちゃんと首軸の分割線(?)がペン先に対して側面に来るように設計されています。
クラシカルなデザインのペン先にはこのタイプの首軸がとてもしっくりきます(※個人的見解)。
ペン先の研ぎの違いを見てみます。
まずはもともとの#120のスチールペン先。
#200シリーズのペン先よりもデザインが凝っていてこれはこれで格好良いですね。
字幅はF(細字)でペン先も細く、左右均等で綺麗なペンポイントです。
こちらが18金OBニブのペン先。
ニブのデザインは現行よりもかなりシンプルで、ペン先の飾り刻印は2本のラインのみ。
代わりに真ん中のペリカンマークはロゴと素材の刻印入りで情報量多めです。
ペンポイントの研ぎはこれぞオブリークな斜めカット。
B(太字)がベースとなっているだけあってとても太くて美しいペン先です。
この美しい18金オブリークペン先、当初の予定では14金OBニブを持つ#400に着ける予定でした。
そう、「予定でした」。
実際、#400のペン先を抜いてみてその夢が途絶えたのはお察しの通り。
実は、#400のペン先ユニットとM400のペン先ユニットに互換性はありません。
ニブのデザインが同じだけに、てっきりこの2本は互換性があるものだと思い込んでいました…。
(もしかすると互換性の有無は万年筆の製造年代にもよるのかも知れませんが…)
これは大きな誤算!
左から#400(14Cー585のOB)、#120(18C-750のOB)、M400(14C-585のEF)。
確かにペン芯ユニットの形状が違います!
もしかしたらニブとペン芯をバラす(ことができれば)交換可能なのかも知れませんが、私のようなペン先の素人がやって壊してはいけませんので素直に諦めます。
ここに関して、もし旧型ペン先と現行ペン先を交換しようと思われている方がいればご注意を。
次はこのオブリークニブの書き味について、#400の14金のOBニブと書き味を比較していきます。
B(太字)よりもOB(オブリーク)が使いやすいと感じる訳
ペリカンをはじめ海外メーカーの字幅は、日本のものと比べて表記より太めに出る傾向があります。
それもそのはず、アルファベットを書くように調整されているペン先ですので、漢字などの複雑な日本語は得意としません。
そういった背景から、私は今までM以上の字幅の海外製万年筆を買ったことがありませんでした。
そんな中、以前レビューしたイタリアはモンテグラッパの万年筆「ミクラ」。
こちらのMニブがMでありながらOMのような書き心地で、漢字を含めた日本語も書きやすく現在も出番が多いです。
そこで過ったのが、太字でも斜めカットのペン先であればミクラのような書き味で字が書けるかも、とうこと。通常の太字だとべったりと潰れてしまう漢字も、縦と横で字幅の違うOBなら太字も楽しめるのではないかと思ったのです。
ということで、前述していたペリカン#400に付属していた14金のOBと今回入手した18金OBを書き比べてみることにします。
左が18金、右が14金。
縦線と横線の太さの違いがハッキリと出ていて面白い。
万年筆はこうでなくては!
書ける字幅は同じですが、使うインクの色によって濃淡の違いも顕著でペリカンブルーブラックのような青みの強いインクの方が趣があります。
書き心地はどちらも柔らかく、18金は特に紙との摩擦を感じず滑りが良い印象。
一方、14金の方が良くしなり、太さのコントロールが容易です。
これは単に18金か14金かというより、年代による書き味の違いも含まれていそうです。
ヴィンテージのペン先はよく“しなる”と聞いたことがありますが正にその通りかと思います。
それぞれのペン先を拡大してみると、若干研ぎ方にも違いが見られます。
正面から見た時、14金OBの方がハッキリ斜めに削られている事が分かります。18金は書いてみた感覚の通り少し丸みがあり、紙に引っかかる要素がありません。
OBニブを装備したグリーン軸2本。
どちらも控えめなデザインが好印象です。しかし、18金バイカラーペン先を#400に着けたかったのが本音。悔やまれます。
ちなみにM400と#120のペン先ユニットには互換性があるため、このようにM400に18金バイカラーOBペン先を、#120に現行の14金EFペン先を着けることもできます。
※M800(M805)とM1000(M1005)はペン先のサイズが違うためM400/M600と互換性がありません。
さて、今回はペリカンスーベレーン(または#120)のペン先を交換してOBニブを楽しんでみました。
ペン先の交換自体は非常に簡単に行うことができ、現行のモデルに旧デザインのペン先を、スチールペン先を持つエントリーモデルに14金のペン先を着けたりと、かなり自由度は高いです。
手元にお気に入りの軸を一本持ち、ペン先だけを色々付け替えてカリグラフィーペンのように楽しむのも面白いかも知れません。
いやしかし、新たに広がっているペン先交換沼。
ペリカン沼はただでさえ広いのに、楽しめる要素が多々あるのが悩ましい…。あまりどっぷり浸かってしまわないように注意したいと思います。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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