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カヴェコ スチールスポーツのペン先をプレミアムスチールニブに付け替えて愉しむ【Kaweco PREMIUM steel nib レビュー】

2025年10月6日

皆さんこんにちは。
久しぶりにカヴェコの万年筆について記事を書く気がします。
 
気になって調べてみたところ 前回のカヴェコの万年筆についての記事が2023年12月でしたので、約2年振りということになるでしょうか。
 
その間もカヴェコの万年筆(と言っても主にカヴェコ スポーツのみですが…)は継続して使っており、ピストン吸入機構が実装されたピストンスポーツが出たときもなんとなく購入に踏み切れず、私としてはピストンスポーツの仏壇カラー以外のカラバリが出たら買おうかな、くらいの気持ちで ひたすらALスポーツを使い続けていました。
 
個人的にはスチールニブを搭載した万年筆の中で断トツに使いやすいのがカヴェコALスポーツで、コンパクトなサイズ感、素材とカタチから来る剛性感、軽快な書き心地が相まって、書斎のデスク上には常に転がっている万年筆となっています。
 
そんな足さず引かずで使っているカヴェコスポーツでしたが、先日XのTLに流れてきた「プレミアムスチールニブ」という存在についてのツイート。これにより今回の記事に至ります。
 
なんだそれは!と。
 
不覚にも全くのノーマークでした。
で、新発売なのかと発売時期を調べたところ、具体的な発売日は分からなかったのですが、どうも2021年9月頃に発売されていたらしい…(海外だけかもしれませんが)。
丸4年も気付かなかったということになります。
 
ほんまかいな、という感じです。
 
それにしても「プレミアムスチールニブ」とは何なのか。
素材がより高品質なものに変わったのか?と思いつつ調べると、
 
①ニブのスリットを手作業で調整
②手作業によるペンポイントの調整
③筆記テストによる品質検査
④ニブに新デザインを採用
 
という違いがあるらしい。
カヴェコのスチールニブファンとして、試さない選択肢はないでしょう。
 

 
ということで、購入の判断は0.05秒。
二日ほどで手元に到着。
 
それでは見せてもらおうか、プレミアムスチールニブの性能とやらを。
 

 

 

 

レトロで可愛いパッケージに収められた「プレミアムスチールニブ」

それでは久しぶりにパッケージ開封から順に見ていきましょう。
 

 
缶ケースの上に厚紙のカバーというカヴェコお馴染みのこのパッケージ。デザインはネイビーとホワイトのツートーン。
 
表紙にはニブがデザインされ、誇らしく「PREMIUM NIB」の表記が見えます。
価格は税込6,600円。通常のスチールニブが税込2,200円ですので、3倍の価格設定となります。
これが高いか安いかは、後の書き味比較で判断しましょう。
 

 
厚紙のケースを外すとシールで封印されたお馴染みのカヴェコの缶ケース。
このエンボス仕様のアルミ缶ケース、お洒落なのもそうですが色々な小物入れに使えて実用価値もあります。
 

 
封印シールには「PREMIUM CONTROL」と記載があり、「GUARANTEED INSPECTION(検査保証)」の文字も見えます。
 
しかしこのプレミアムスチールニブの存在を知り 概要を調べた時、スリットやペンポイントの調整、筆記テストによる品質チェックがされたニブだと分かったのですが、逆に、通常ニブでそれらを行ってなかったんかーいとツッコんでしまいましたね。
 
まあ今まで調整や検査をしていなかったと考えるより、「プレミアムスチール」にするにあたり、調整や検査の精度を上げたと考えるのが妥当でしょうけど。
 
それにしても、通常のスチールニブにおいて今までそこまで厳密なニブの仕上げや検査を行っていなかったにしては、十分書き心地がいい事に驚きです。
 

 
シール裏面の表記。
ざっくり訳すと、「開けはる前に既にこのシールが剥がれていた場合、製品の品質保証はできませんえ」という事で、これもこのプレミアムなニブへのカヴェコの確たる自信と取れます。
 

 
封印シール側面。
手作業による品質検査であることを100%保証する旨の内容が書かれています。
 
日本国内の万年筆において発売や出荷前の手作業による検品は当たり前だと思いますが、通常の大量生産で仕上げられるカヴェコスポーツやリリプットのニブとの明らかな差別化としてこの製品があることが理解できます。
 
通常スチールニブの価格の3倍ということで、3倍時間と手間暇がかかっているとも考えられる「プレミアムスチールニブ」。
いよいよカヴェコスポーツに着けていきたいと思います。
 

 

スチールスポーツにプレミアムスチールニブ

さて、今回のプレミアムスチールニブをどのスポーツ万年筆に着けようかと迷いましたが、愛用のALスポーツブラックエディションにはブラックのスチールニブが着いていますし、ブラススポーツに着けるのも何だかしっくりこなかったため、新たにスチールスポーツを新調し着けることにしました。
 

 
もともとずっと気になっていたスチールスポーツ。ソリッドな質感がたまらない。
数年前から次に新しく買うカヴェコの万年筆は、ピストンスポーツの亜種(シルバーのニブが似合う系)と考えていたのですが、あまりにもピストンの亜種が発売されないため、一旦スチールスポーツに落ち着きます。
 
これにプレミアムなスチールニブを着けることで、さらにプレミアムなスチール尽くしの万年筆へと変貌させましょう!(もともとスチールニブが着いてますけどね!)
 

 
気合いをいれてもらうため、スチールスポーツ君にはハチマキをしてもらいました。
マットな質感の本体にとてもマッチするグロッシーなハチマキ(クリップ)。
 
というか、スチールスポーツのピストン吸入仕様が出てくれたら嬉しいのですが…。
 

 
ペン先交換の前に、スチールスポーツ自体についても少し見ていきます。
 
カヴェコスポーツの金属軸バリエーション。
手前から、ブラススポーツ、スチールスポーツ、ALスポーツ。
他の金属軸バリエーションであるブロンズスポーツとピストンスポーツは買い時を逸しています。
 

 
この3本のキャップの文字の刻印の違いについて気付いた部分。
スチールスポーツはレーザー刻印、ALスポーツ(ブラックエディション)はデボス(凹)、ブラススポーツはエンボス(凸)で、それぞれ刻印の仕方が異なっています。
 
個人的にはブラックエディションのデボス(凹)のような加工が好みですね。
 

 
天冠のカヴェコロゴのメダルはシルバーとゴールドがデフォルト。
ブラックエディションのみこのカヴェコロゴもブラックペイントが施されています。
 
スチールスポーツの表面は、単にマット加工なのではなく斜めのヘアラインが入っており、よりアンティークな風合いとなっているところがたまりません。
スチールスポーツの重量はブラスと同じで46g(コンバーター込み)。ALスポーツの約2倍の重量となります。
それではいよいよペン先を交換していきましょう!
 

 
缶ケースを開けると、ブラックスポンジの真ん中に鎮座する「プレミアムスチールニブ」のペン先ユニット。
カヴェコスポーツやリリプットのペン先ユニット交換は実に簡単で、ペン先を固定した状態で首軸を反時計回りに回すだけ。
固く嵌まっているわけでもありませんので、それほど力を入れずに交換可能です。
 

 
正直、スポーツに着けることを考えるとニブのデザインは通常ニブの方が好みですが、シンプルでモダン寄りなリリプットにはこちらのデザインの方が似合うかもしれません。
 
作業時はペン芯とニブのズレが怖いので マスキングテープなどでニブとペン先を固定して行う方が良いでしょう。捻る動作はペン先側ではなく首軸側で行う方がよいです。
 

 
装着前にスリットの比較として並べます。
 
プレミアムスチールニブの大きな調整ポイントとして「スリットの調整」が挙げられますが、左のプレミアムに対して右の通常ニブ。当たり前かもしれませんが、まるで違う(スリットの幅がペンポイントまで均一)ことが見て分かります。
 
また、通常ニブでは ニブのスリットがハート穴に対して中央でない個体も見られるなか、流石は調整されたプレミアムニブのスリット。
まずしっかりと調整されたものであることが見た目で分かり安心しました。
 

 
無事にペン先ユニット交換完了です。
先ほどのシルバークリップと同様に、マットな質感のカヴェコスチールスポーツと磨かれたプレミアムスチールペン先のマッチングが素晴らしい。
 
次項では通常のスチールニブとプレミアムスチールニブの外観的な違いを見ていきます。
 

 

通常ニブとプレミアムニブの違い

ここからが本題と言っていいでしょう。
通常のスチールニブと今回のプレミアムスチールニブ。より緻密な調整が入ったペン先はどのように違うのか。外観から見て取れるのかを比較検証していきます。
 

 
ニブ正面。
左はスチールスポーツ万年筆に着いていた通常ニブ、右はプレミアムスチールニブ。
プレミアムの方がインクフローが良いとの事前情報がありましたが、純粋に同じ字幅で比較がしたいため字幅を下げず、同じM(中字)を購入しています。
 
まず、外観としてデザインが違うのは先にも書いたとおり。
どちらも撮影にあたり磨いたりはしていないのですが、プレミアムの方は最初からペン先側に至るまで美しく磨かれています。
 
そして、正面からの比較で一番分かりやすいのがスリットの幅と精度。
左の通常ニブのスリットは閉じており、右のプレミアムは均一な開きとなっています。
 
通常、カヴェコのスチールニブはインクフローが渋い事も影響して、表記の字幅よりも細い文字(細い線)が書けることで知られています。
それが漢字を書く日本人に受けているというのも事実。
ニブのスリットが均一に開くことで、インクフローが通常ニブよりも潤沢となり表記通りの字幅の文字(または線)が書けるようになったと想像できます。
 

 
ペン芯側。同じく左が通常ニブで右がプレミアムスチールニブ。
カヴェコロゴ入りのプラスチックペン芯はこれまで通り。
 
このロゴ入りペン芯は、もはやカヴェコのアイデンティティーとも言える部分です。
ペンポイントを拡大してみましょう。
 

 
ペンポイントの拡大。
左が通常ニブ、右がプレミアムスチールニブ。
 
これを見てかなりの違いがあることに驚きました。
プレミアムスチールニブのペンポイントのカタチの美しさ、輝き。ニブの裏側までしっかりと磨かれ、ニブ全体に正確な手作業が加えられていることが一目で分かります。
 
通常ニブはプレス機で形成した後、ペンポイントを溶接し、軽微な調整といった具合いでしょうか。
この加工の違いは、紙面へのタッチや筆記の滑らかさに影響してきます。
 
予想以上にしっかりと調整されていたペンポイント。
これは3倍の価値がしっかり乗っていると言えるでしょう。
 

 
ニブの形状自体は通常もプレミアムも同じ。
さて、書き心地にはどのような変化がもたらされているのか。
次項で検証します。
 

 

プレミアムスチールニブによって書き味はどう変わるのか

さて、最も肝心な部分はペン先の細かな調整が入った場合とそうでない場合の違いです。
 
ある意味、プレミアムスチールニブの登場で、同じメーカーで同じ素材のニブという条件においてペンポイントの仕上げによる書き心地への影響をダイレクトに体験することができることに感謝しなければなりません。
それも踏まえてカヴェコは最高です。(語彙力崩壊)
 

 
スチールスポーツは金属製カヴェコということもあって重量が46gと重く、正直 金ペン先との相性は良くないと考えています。その重量が、金ペン並みに調整されたスチールペン先において どのような影響をもたらすか…。
 

 
本題へ行く前にインクを補充するのですが、今回、スチールスポーツと同時に新しいコンバーターも購入していますので、そちらも簡単にレポートしていきたいと思います。
比較に使うのはこの2本。
 

 
新しく、「カヴェコ 折り畳み式ミニコンバーター」なるものがいつの間にか発売されていたため、これを試してみます。
 
正直、カヴェコスポーツでピストン操作部が折りたためるようになった恩恵が受けられるかというとそうではないのですが、基本的に胴軸部分が短いリリプットや、その他メーカーのショート軸万年筆およびカートリッジ専用万年筆に使えるのでは、というのが所感です。
 

 
折りたたんでいない状態の折り畳み式ミニコンバーター。
操作部の長さは通常のミニコンバーターと同じ。それが半分に折れるようになっています。
 
スチールスポーツの首軸部分のナンバーは製造コードでしょうか。
「2505」なので2025年5月製造?詳細は不明です。
 

 
操作ロッドを伸ばした状態でインクを吸入し、その後折りたたむ。
根元には丸い凸があるため、折りたたんだ操作部はしっかりとロックされるようになっています。
痒いところに手が届く仕様。
 

 
ロディアに書いてみました。
上が通常ニブ、下がプレミアムスチールニブ。同じ条件で比較するため、どちらもスチールスポーツに装着した状態で筆記しています。
 
筆記感は上々!
個人的にはプレミアムスチールニブの紙面へのタッチの滑らかさ(柔らかさではない)、インクフローの良さは期待した通り。プレミアムスチールニブの筆記感は、通常ニブとはまるで別物と言っていい仕上がりです。
 

 
まず筆記感について感じたこと。
 
紙面へのタッチの際の滑らかさが、金ペンに限りなく近いということ。
それでいて、カヴェコのスチールペン先特有の「硬さ」はしっかりと感じ、筆記時の「しなり」は無いけど滑らかなタッチで気持ちよく書けるという印象。
一部の金ペンのようなふわふわした書き心地ではない、硬いけどソフトな当たり。
 
これは一般的な万年筆として良い部分ではありますが、カヴェコらしさという点で違和感を感じ、馴染まないユーザーも出るのではないかと考えます。
 
カヴェコの書き心地は?と問われた場合、ザラッとした鉛筆のような紙面へのタッチ、安定感のある硬いニブ。そして渋めのインクフローにより字幅表記より少し細めに書ける。といった回答をするかもしれません。
 
現に今までそれがカヴェコ万年筆のスタンダードであり、アイデンティティーだったのだと思います。
その固定観念と指先が覚えた感覚のままプレミアムスチールニブを使うと、脳がバグり違和感へと変換されるのかもしれません。
 
しかし、6,600円という価格とこのペン先の調整クオリティを見たとき、ただの賑やかしではないカヴェコの本気を感じました。我々が昔から扱っているスチールニブの進化したカタチを是非味わってほしいと言っているように思えてなりません。
 
昔からのカヴェコの書き味として賛否両論あるかもしれませんが、私はこのプレミアムスチールニブの登場を評価します。
これだけ丁寧に調整していれば書き心地が違うのは当然ですし、個人的に間違いなく書きやすいと感じますからね。
 

 
次にプレミアムスチールニブがもたらす文字について。
 
書いた文字を見て頂いても分かることが、インクフローが潤沢になったこと。
これにより、字幅は表記通りの字幅となり、中字らしい中字が書けるようになっています。
(これが普通と言ってしまえば普通なのですが…)
 
インクはペリカンのブルーブラックを使っていますが、濃淡による文字のメリハリもしっかりと出ており、より「インク本来の色」を感じられるようになったのではないかと思います。
 
通常のスチールニブはインクフローが渋めのため、中字でも細字並みの文字が書ける個体もありました。それは裏返せば良くも悪くもで、字幅表記通り本来の中字並みの字が書ける個体もあり、いつも通り細いM(中字)を期待して買ったけど太かったといった、仕様のバラつきがあった事も事実です。
つまりは製品の精度のバラつきから、書き心地は個体差に左右されていたというのが今までです。
 
カヴェコの万年筆は初期装填されているニブがM(中字)のため、細字が使いたい人にとってはアタリに、逆に字幅表記通りの中字が使いたい人にとってはハズレという具合に、ガチャ要素が強い万年筆になっていたのではないでしょうか。
 
プレミアムスチールニブが登場した事で、そういった個体差を無くし常に一定のクオリティで使うことが出来るという事実が誕生したことは大きいと言えます。
今後においてはプレミアムスチールニブが万人にとって共通とされる「カヴェコ万年筆の書き心地の基準」になってくるのではないかと考えます。
 

 

プレミアムスチールニブの「書き味」についてまとめると、
 
・インクフローが潤沢 →スリット調整の恩恵
・インクフローが良い=速記でもインクがスキップしないというメリット
・インクタンクからのインクの流動(ペン先への到達)が速い
・今までのように細めの字幅がほしい場合は、字幅表記を下げる(通常でMの場合はプレミアムのF)
 
・紙面へのタッチが滑らか →ペンポイント調整の恩恵
・ペン先の繊細な調整により個体差が減ると推測
・ニブの形状自体は通常ニブと同じで、デザインはシンプルモダンへ
・ニブの素材自体はスチールのため変わらず硬め
 
・安価で手軽に他メーカーの金ペンのような書き心地を求める方にとっては◎
・今までのようなザラッとした硬めの書き心地が好きな方には△
・重量系のカヴェコスポーツに着けるより、ALスポーツか樹脂製スポーツに着ける方が良いかも
 
となります。(個人的見解です)
 

 
さて、結果として今回は「カヴェコ スチールスポーツ万年筆」「プレミアムスチールニブ」「折り畳み式ミニコンバーター」の3つを複合したレポートとなりました。
 
記事のメインとしてはプレミアムスチールニブ。
2021年に出ていたにも関わらず、何故今気付いたのだろうというちょっぴり後悔もあります。
 
通常ニブ&プレミアムスチールニブという、同素材で異なる仕上げのニブを選べるというのは贅沢の極みではないでしょうか。
お値段的になかなか買えない「カヴェコの金ペン先ユニット」のジェネリックペン先としても十分まかり通るものだと思います。(カヴェコの金ペン未体験ですが…)
 
大変長い記事になりましたが、最後までお読み頂きありがとうございました。
それでは今回はこの辺で。

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