パーカー デュオフォールドの歴史を感じるペンシル【1930年代 アンティークペンシルの使い方・芯の交換方法】
皆さんこんばんは。
最近また、パーカー デュオフォールド熱が出ていまして、それもビッグレッドやオレンジといったデュオフォールドの歴史が感じられるモデルにロマンを感じてしまうのです。
デュオフォールドについては過去にも何回か記事を出していますが、改めてデュオフォールドアンティークペンシル(1920~30年代)の芯の換え方等、操作方法とデザインについて掘り下げていきたいと思います。
今回は前置きは少なめに、それでは早速 見ていきましょう。
造りが良い1930年代のデュオフォールドペンシル
以前の記事の1920年代のデュオフォールドペンシル(コーラルエボナイト製)もそうでしたが、1930年代のペンシルも造りが良い。
口金のミルグレイン装飾や、豪華なゴールドのリング、玉クリップを残しながらも近代に向かうデザインに好感が持てます。
素材は美しいコーラルレッドのセルロイド。
デザインは、キャップの長い初代のデュオフォールドから黒い樹脂の天冠となり、万年筆とのデザインの統一化が図られていますね。
軸の中央にはダブルのゴールドリングがあしらわれています。
その丁度中央にはキャップ部分と胴軸を分ける分割線。
1920年代のデュオフォールドは天冠を回してペン先を繰り出す方式でしたが、1920年代のものはキャップ(軸の上半分)を回してペン先を繰り出します。
クリップは1920年代と同じ玉クリップ。
特許だった「PAT SEP. 5-16 PARKER」の刻印。
ワッシャーと一体型のクリップの特許は既に切れていますが、今ではどのメーカーも当たり前のように使っている技術となります。
デュオフォールドの天冠は、1930年代のプリン型(台形)から1990年代の復刻時はキャップと同じ幅へと変更となり、その後プリン型へ戻っていくこととなります。
玉クリップのデュオフォールドは正にアンティークという様相で、個人的にはかなり好みですね。
口金にはミルグレイン技法によって打ち込まれたディティールが見られます。
職人が手作業でしっかりと打ち込んだ事が分かる、デュオフォールドがフラッグシップモデルであることを象徴するデザインです。
刻印は薄くなっていますが、キャップの側面には「PARKER DUOFOLD MADE IN U.S.A.」の刻印。
デュオフォールドと言えば、こういった刻印が軸に入っているのも見所のひとつ。
現行のデュオフォールドについても、オレンジ“のみ”軸に刻印ありという、デュオフォールドの歴史を意識したラインナップになっています。
全長は122mmと、必要最小限のコンパクトなサイズ。
サイズの割に重量は24gとずっしりとしており、デュオフォールドとしてチープさは微塵も感じない仕様となっています。
赤というよりも朱色に近い、文字通り「赤珊瑚」といった色合いのビッグレッド。
1990年に復活を果たすと「オレンジ」というカラーでのラインナップとなりますが、そのコンセプトは変わらずコーラルレッドやオレンジと言えばパーカーのデュオフォールドが連想されるような、強烈なインパクトを与えていると言えるでしょう。
アンティークペンシルの芯の換え方
1920~30年代のメカニカルペンシル(英:プロペリングペンシル)には、1.18mm芯を使用します。
ヤード・オ・レッドやモンブランも然り、この時代のペンシルには1.18mm芯。
今となっては太めの芯幅ですが、毎回書くとおり、書き方や研ぎ方によっては0.5mm~1.18mmの字幅をコントロールできる、優秀な芯幅と考えることができます。
同じ1.18mmの芯を使うアンティークペンシルにおいても、芯の供給方法によって対応する芯の「長さ」が変わることは注意しておきたいポイントです。
この年代のデュオフォールドにおいては、約30mmの長さの1.18mm芯を使用します。
1920年代および1930年代のデュオフォールドにおいて、デフォルトで装填されている芯の長さは約30mm。
「約」と書いたのには理由があり、装填されている芯の長さには幅があり、だいたい30mmがということです。
デュオフォールドのメカニカルペンシルの構造上 これ以上の長さの芯は対応しておらず、その理由が芯の供給方法にあります。
左から、カヴェコスペシャル、デュオフォールド、モンブランPix L71、ペリカン450。
どれも同じ1920年代~40年代のアンティークペンシルですが、左右の2本において芯繰り出し機構の根本的な違いにお気づきでしょうか。
左の2本は回転繰り出し式、右の2本はノック式となっています。
そしてそれぞれの機構で対応する芯の全長も異なります。
回転繰り出し式のアンティークペンシル(右の2本)には約30mmの芯が対応し、ノック式のアンティークペンシルには46mmの芯が対応します。
その理由は前述したとおり、芯の供給方法。
回転繰り出し式のペンシルは口金から芯を供給し、ノック式はノック部(キャップを外す)から芯を供給します。
1930年代のアンティーク デュオフォールドの芯の交換・補充は、
①口金を外す
②キャップ部を回転させて芯を繰り出していき、真鍮のチャックを露出させる
③芯を付け替える
の手順で行えます。
③の芯の付け替えは、真鍮のパイプに差し込むと言うよりは「挟む」という表現の方が合っているかと。
パイプの深さが浅く、長い芯が差せないというのが約30mmの芯が対応する理由となります。
ヴィンテージの回転繰り出し式ペンシルを買ってみたものの、芯の入れ方が分からないという方は当記事を参考にして頂ければと思います。
消しゴムの互換性について
続いて、メカニカルペンシルには付きものの簡易消しゴムについて。
このデュオフォールドのペンシル購入時、残念ながら消しゴム及び消しゴムを付けるための金具が着いておらず(おそらく前オーナーが紛失されたものと思われます)、消しゴムが使用不可でした。
最も、ペンシルに付属する簡易消しゴムは気休め、もしくは単体の消しゴムを忘れた場合の緊急回避程度の意味合いと認識しています。
しかし、無ければないで心許ないもの…。
どうにかならないものかと、手元にあるペンシルの消しゴムをあてがってみたところ、あるメカニカルペンシルの消しゴムが適合することに気付きました。
それはこちらのパーカー製メカニカルペンシル「インシグニア」です。
1990年代のインシグニア用の消しゴムが、1930年代のデュオフォールドにフィットするという怪異。
キャップを外すとそれとなく互換性が確認できるサイズ感。
インシグニアはノック式、デュオフォールドは回転繰り出し式ですが、機構を超えた互換性であると言えます。
消しゴムを移植します。
パイプの軸径も全く同じ。
消しゴムはピタリと収まります。
偶然ですが消しゴムのカラーもコーラルピンクで、デザイン的にもデュオフォールドにピッタリ。
おそらくですが、同じ1930~40年代のペンシルである「パーカー51」(※復刻ではなくオリジナルのメカニカルペンシル)の消しゴムも互換性があるかと思われます。
アンティークペンシルは消しゴムが硬化しているものがほとんどですが、こういった新旧含めた互換性の確認することで流用できるケースも発見でき、面白いです。
ビッグレッドのサイズ感と素材について
最後はビッグレッドのサイズ比較と使われる素材の変化について。
デュオフォールドの軸素材は大きく分けて3種類ではないかと考えていて、年代が古い順に、エボナイト、セルロイド、プラスチック(アクリル樹脂・アクリライト樹脂)となります。
3本あるデュオフォールドのうちの、左はエボナイト、中はセルロイド、右はアクリル樹脂となります。
他の筆記モードも加えてみましょう。
真ん中はデュオフォールドのフェルトチップペン、一番右はローラーボールです。
この中で、右の2本は触り心地からもアクリライト樹脂なのですが、中のフェルトチップペンの軸の素材が謎。
近年のデュオフォールドに使われるアクリライト樹脂のような透明感は無く、かと言ってその前世代のセルロイド軸のようなしっとりとした触り心地でもない。
プラスチック産業が爆発的に発展した世代の、若干のチープ感が漂う質感のビッグレッド。
素材はより強度がありコストがかからないものに変化していきましたが、やはりデュオフォールドの歴史を感じるにはエボナイトやセルロイドの軸がお勧めです。
さらに一番右にデュオフォールドのセンテニアル(万年筆)ブラックを加えてみました。
今回の記事の主役である1930年代のメカニカルペンシルが、いかにコンパクトかが覗えます。
こう見ると、様々なサイズが展開されているデュオフォールド。
多様性があるということは、それだけ誰の手にも合うデュオフォールドがあるということ。
パーカーの歴史を感じるために、自分にとって使いやすいデュオフォールドを探してみるのも一興です。
さて、今回はパーカー デュオフォールド ビッグレッドのメカニカルペンシルをレポートしました。
デザインの良さと美しい軸色、1.18mmのペンシルを使う方は必見のペンシルではないでしょうか。
そしてそこにはパーカーの歴史が詰まっており、言わばロマンの塊。
筆記具好きならいずれは辿り着くであろう、アンティークペンシルの沼。
その前に立ったとき、この記事を思い出して頂ければ幸いです。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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