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モンブラン作家シリーズ「アレキサンドル・デュマ」メカニカルペンシルのレビューと0.5㎜化

2024年10月10日

皆さんこんにちは。
 
今年もあと2週間というところまできました。一年経つのは早いものですね。
文房具界隈において年末年始になると必ず聞こえてくるのが、「忘年筆」や「新年筆」といった言葉。
 
そういえば去年の忘年筆はモンブラン#149にしたっけ…などと思い返しながら、今年の忘年筆は何にしようかなどと考えてしまう危ない脳みその自分がいます。(いました。)
 
まあ、1年間仕事を頑張った自分へのご褒美としていいかと思いつつ、やはりモンブランの筆記具が完成度的にも間違いないであろうと。
 
今年の秋口からは再度ペンシル系に注目をしだして、廃番のメカニカルペンシルや芯ホルダーを買ってみたりもしました(まだ全ては記事にはしてないですが…)。
 
普段、仕事ではボールペンや万年筆がメインですが、サブのノートに色々メモを走らせたり子供に勉強を教える時はやはり鉛筆や芯ホルダーやメカニカルペンシルの出番があるんですよね。
 
ですので今年の忘年筆は万年筆やボールペンではなくメカニカルペンシルもいいかな、と思った次第です。
 

 

ということで前置きもほどほどに、今年の忘年筆として手にした筆記具は…、
 

 
モンブランの作家シリーズ1996年「アレキサンドル・デュマ」のメカニカルペンシル。
 
普段、作家シリーズはチャールズ・ディケンズのボールペンを使っていますが、使いやすいかどうかは別として使っていて一番モチベが上がる筆記具なのです。
 
「使いやすいかどうかは別として」と書くと、使いにくいのではと思われるかもしれませんが、ここで言うところの使いやすいとは「普段使いに適しているか」ということですので誤解を解いておきたいと思います。
 
作家シリーズは数量限定かつ高額な筆記具ですし、コレクターではなくユーザーとして使うにしても落下させないようキズがなるべくつかないようにと少なからず気を遣ってしまいます。
また、デザインが豪華なため人前でどんどんメインとして使うものではないかな、と。
 
しかし、やはり筆記具である以上は棚で眠らせるのではなく持ち歩いて使いたい派ですので、必ずロールペンケースに忍ばせて、ここぞという時に出番!となるわけです。
 
一本一本が手作業で作られ、凝った装飾が施されている筆記具はある意味浮世離れしていて、それを使うということが日常的に行っている「書く」という半無意識的な行為を特別なものにしてくれているように感じるのです。
 
それでは、その特別なメカニカルペンシル「アレキサンドル・デュマ」を詳しく見ていきましょう!
 

 

 

 

モンブラン作家シリーズ1996「アレキサンドル・デュマ」のデザイン

アレキサンドル・デュマのデザインは作家シリーズの中でも人気があり知名度も高いのではないでしょうか。
無論 デュマで最も人気があるのは万年筆で、ユリの紋章が刻印されたニブはデザイン的にもバランスが取れており、万年筆という道具ともマッチしていると言えます。
 
デザインのモチーフは彼の作品である「三銃士」からインスパイアされており、各部に三銃士の舞台の時代背景やシンボルが刻まれています。
 

 
全景がこちら。
モンブランの筆記具では珍しい玉クリップと美しい胴軸のマーブルレジンが目を引きます。
デュマと言えばこの胴軸のレジンのイメージが強いですね。
 
軸は太軸タイプでスペックは、
全長:134mm
重量:31g
 

 
外観のほとんどがレジン製ということもあり、持った感じは見た目ほど重くはないという印象。
写真に写らない色と評判のキャップとペン先はダークブラウンのプレシャスレジンです。
 

 
むむ、自然光だと本当にブラウンだということが分かりにくいですね。
蛍光灯下ではもう少し黒との比較がしやすいのですが…。
 
後ほどマイスターシュテュックのシルエットの比較は詳しくしますが、握り心地はペン先に向かって細くなるル・グラン#167よりも太軸で、何となくデルタのドルチェビータミディアムのようです。
 

 
クリップには三銃士のシンボルである剣(サーベル)のレリーフが立体的に彫られ、クリップ先はアウロラのような玉クリップ。玉のサイズはアウロラやパイロットと同等となっています。
 
サーベルに護拳が備わっているところや形も直刀型であることから三銃士の時代背景を忠実に再現していると言えます。
 

 
クリップリングには「GERMANY」の刻印のみ。位置はクリップと反対側に位置しています。
ちなみにクリップの裏に素材の刻印等はありませんでした。
 

 
グリップの右側にはアレキサンドル・デュマのサイン。
作家のサインは作家シリーズ全般の特徴ですが、皆さんご存じの通り、デュマのサインには例外的に2種類のサインがあり、それがデュマ(父)とデュマ・フィス(子)のもの。(一般的に大デュマ・小デュマと区別される)
 
手元のものは大デュマのサインとなっています。
本格的な販売前に流通したとされるサインミス版(デュマ・フィスサイン入り)が数も少なく希少とされますが、ペンのモチーフが「三銃士」ですので大デュマサインとの組み合わせの方が自然ではあります。
(もし正規でデュマ・フィスのサインであれば椿姫がモチーフになったのでしょうか)
 

 
デュマのサインの反対側にはシリアルナンバーが刻印されています。
ペンシル単体は9000本の生産ということで/9000なのですが、その後に「N」と刻印されているのが気になるところ。
真意は分かりませんが、サインミス版との区別のためについているアルファベットなのではと考えます。
 

 
キャップリングには4枚の羽が刻印されています。
こちらも三銃士の正義の印である帽子の羽で、4枚なのは、ダルタニャン、アラミス、アトス、ポルトスを表しているのではと思います。
幅が細い方のリングにも装飾が施されていますね!
 

 
胴軸はグレーとホワイトのマーブルレジンがクラッシュされていて、ヨーロッパの石畳のようでもあります。
複雑なマーブル模様は螺鈿細工のようにも見えますね。
 
うーむ、無性にアワビや牡蠣が食べたくなります 笑。(そういえば12月は牡蠣のシーズンですね~)
 

 
チャールズ・ディケンズのホワイトスターと比較。
左がデュマ、右がディケンズです。
ホワイトスターの大きさは随分と違いますが、色はどちらもアイボリー。
 

 
手元の作家シリーズが2本になりました。
どちらも絶妙な色合いの軸なんですよね。写真に軸色がうまく写らないのが難点ですが…。
 
デュマはゴールドトリムにブラウンのレジン、マーブルの胴軸。
ディケンズはシルバートリム(SV925)にグレーグリーンのレジン。
それぞれのデザインは各作家の代表作を、デザインとカラーで本当にうまく表現していると感心します。
 
メカニカルペンシルとボールペン。あとは他のモデルで万年筆とローラーボールが欲しいところです。
 

 

モンブランのマイスターシュテュックメカニカルペンシルと比較

さて、アレキサンドル・デュマのメカニカルペンシルの字幅は0.7mm。
この項では、手元にあるマイスターシュテュックシリーズのペンシルと比べていきたいと思います。
 

 
左から、Pix172、以降マイスターシュテュックのル・グラン#167、アレキサンドル・デュマ、モーツァルト#117、クラシック#165。いずれもメカニカルペンシル。
 
デュマはこの中ではミドルサイズのペンシルで、Pix172より大きめ#165より小さめとなります。
ミドルサイズではありますが、豪華な胴軸と太さで存在感が凄まじい。
 

 
キャップ部分を拡大してみます。
マイスターシュテュックのシンプルかつベーシックな形状のクリップと並べると、サーベルの装飾に玉クリップ、キャップリングも文字ではなく羽の刻印ということで印象がまるで違います。
 
キャップリングのブラックとゴールドの幅の統一感などは流石モンブランのひと言に尽きます。
 

 
さて、それぞれのメカニカルペンシルですが、使える芯の太さが違います。
先ほどと並びは同じです。
対応する芯の太さは写真の通りですが、意外だったのが芯の繰り出し機構について。
 
左から、
Pix 172 ペンシル:ノック式
モンブラン#167:回転繰り出し式
アレキサンドル・デュマ:回転ノック式
モーツァルト#117:回転ノック式
クラシック#165:回転ノック式
 
作家シリーズのメカニカルペンシルには、芯の繰り出し機構が#167のような回転繰り出し式と#165のような回転ノック式の2種類が確認されています。
(私が今気になっている作家シリーズのエドガー・アラン・ポーのペンシルは回転繰り出し式)
 
あれほど造りが良いとされるデュマの芯繰り出しが回転ノック式とは。
分かった上で買ってはいるものの、やはり作家シリーズには#167のようなクラシカルな回転繰り出し式の方がしっくりくるような気がします。
 
まあこれは個人の意見でありこれを言ったところでどうにもならないのですが…。
この太いデュマのペンシルを捻って、にゅるっと0.9mm芯を出したかったなーというのが本音です。
 

 

ついでに手元にある使用頻度の高いモンブランのメカニカルペンシルとボールペンを並べてサイズの比較をしてみましょう。
 

 
左から、ソリテールドゥエシグナムクラシック(ローラーボール)、Pix172ペンシル、ル・グラン#167、デュマ、ディケンズ、ヘリテイジルージュ・エ・ノワール(ボールペン)、ソリテールドゥエスターリングシルバー(ボールペン)。
 
この中では見た目と握った感じでデュマが断トツに太く、#167とディケンズが同じような握り心地(重心バランスは全然違いますが)です。
 

 
作家シリーズは作品の特徴をデザインとして軸に盛り込んでいるため太軸になりがちですが、軸の全長は一番ベーシックなクラシックシリーズ(ここではソリテールドゥエ)と同サイズ。
普段#164(ボールペン)等のクラシックを愛用されている方の手にも収まりやすいのではないしょうか。
 

 
恒例となりましたホワイトスターの比較です。
近年のレギュラーモデルは純白のホワイトスター。作家シリーズはアイボリーの傾向にあります。
ヘリテイジモデルのルージュ・エ・ノワールも過去モデルの伝承としてアイボリースター。
Pix172はそのままヴィンテージですのでホワイトスターはアイボリー。
 
それぞれサイズの違いがありますが、今回仲間に加わったアレキサンドル・デュマは真上から見たホワイトスターのサイズでいうとクラシックやル・グランと同サイズとなっています。
 

 

メカニカルペンシル機構の比較と書き味

先ほどの項でも触れましたが、アレキサンドル・デュマの芯の繰り出しは回転ノック式。
個人的には少し残念な部分ではありますが、内部機構がどのようになっているのか比較しながら見ていきます。
 

 
キャップを外してみました。
左から、ル・グラン#167(回転繰り出し式)、アレキサンドル・デュマ(回転ノック式)、クラシック#165(回転ノック式)。
いずれのペンシルもこのようにキャップを真上に引き抜いて芯の補充を行います。
 
0.9mm芯を回転繰り出し式で使う#167は他の2本と根本的に構造が違い、芯はペン先から入れるクラシカルな使用方法。
※詳しくはこちらのル・グラン#167の記事を参照。
 
一方、デュマとクラシックの回転繰り出し機構はぱっと見同じに見えます。
というか、消しゴムの色と胴軸との接点以外は同じではないかと思います。
 

 
拡大してみてもやはり全く同じと言えます。
手元の個体は大丈夫ですが、このモンブランメカニカルペンシルの回転ノック機構には持病があり、経年劣化で黒い樹脂の部分が割れてくるという症状が散見されています。(割れても使用には問題ないようです)
 
そのクラシックと同じ機構を搭載しているデュマもまた、同じ症状発生の可能性をはらんでいると言えます。
 
ただ、そういった経年劣化の心配を抱えながらも良い点というのもあって、それはレギュラーモデルと同じ機構を搭載しているため修理が容易に行えるということ。
(といっても回転ノック式だけでなく回転繰り出し式の作家シリーズも、おそらくル・グランと同じ回転繰り出し機構なのでしょうけど…)
 
基本的にモンブランは作家シリーズの製造にあたり、生産ロットが全て終了した時点でレシピを廃棄するそうです。
 
これは完全な特別生産品であることとコピー防止の両面からであると考えますが、筆記具である以上使用に伴って劣化もしますし壊れもします。
そうなった時点でおしまいという事では筆記具ではなく単なるコレクション(飾り)になってしまいますので、特別生産品と言えど、内部機構は現行品と互換性があるに越したことはないのです。
 
ということで、次の項で試しますが、デュマとクラシックのメカニカルペンシルの間で芯の繰り出し機構に互換性があることの利点を見いだしていくことができそうです。
 

 

と、その前に、肝心なデュマペンシルの書き味をレポートしていきたいと思います。
 

 
ル・グラン#167よりもさらに太軸のデュマはゆったりと力を抜いてペン先を走らせることができるペンシルです。
デフォルトで装填されている芯の硬度はHB。
 

 
デュマで使うのにこのHBは少し硬いと感じましたので、もう少し柔らかい芯に変えようかと思っています。
そしてやはり芯は柔らかくて太い方が滑らかにゆったり書ける気がします。個人的にですが。
 
モンブランからもペンシルの芯は発売されていて、0.5mmと0.7mmが770円(税込)、0.9mmが880円(税込)となっています。10本入りで硬度はいずれもHBのみ。
 

 
ケースはこのようにUSBメモリのようなデザイン。
とても格好いいのですが、キャップの「Made in Japan」からも分かるとおり、芯の製造は日本で行われているため芯は最初から国内メーカーのものを買う方が良く、コスパも高いです。
 
カランダッシュもそうですが、海外ブランドの芯はブランド料が大半を占めているのか替え芯一つ取っても非常に高価。
しかしながら、中身(芯)は日本製ということで品質は間違いないですし何だか誇らしいですね。
(そういえば、ブラックウィングの黒鉛も日本製だったような…、世界における日本の芯のシェアは凄い)
 
個人的に柔らかくて濃い芯が好みですので、今後は同じHBでもパイロットのグラファイトを入れての運用となりそうです。
 

 

アレキサンドル・デュマで0.5mm芯を使う方法

0.7mmの芯というのは日本語のとめ・はね・はらいが表現しやすくバランスの良い芯幅であると同時に、細くもなく太くもなく中途半端な字幅であるとも言えます。
 
中学高校をはじめとしたメカニカルペンシルの第一線で、一番使われている芯の太さは0.7mmではなく間違いなく0.5mmか0.3mmでしょう。
 
回転ノック機構を持つ作家シリーズをより一般的な0.5mm字幅にすることで、もっと作家シリーズのメカニカルペンシルを使う人が出てくるのではないかと。
(かといってこんな高額な筆記具を中学/高校に持っていくのは大変リスキーなのでお勧めしませんよ)
 
 
ということで、同じ回転ノック式機構を持つマイスターシュテュッククラシック#165の0.5mmペンシルユニットをデュマへと移植することで、デュマを0.5mm芯で使おうというコーナーです。
 
早速、回転ノック機構を外してきましょう!
 

 
クラシックとの違いはその太い胴軸との接続部。
回転ノック機構をゆっくりとねじり外していきます。
 
接続部を見ても分かるように、胴軸側のネジ受けは真鍮製(真鍮にメッキ)。
この凹凸共に金属製という作りによる堅牢性と安定感はル・グランに通じるものがあります。
(クラシックは金属ネジに対して樹脂のネジ受け)
 

 
中のペンシルユニットを取り出しました。
やはりクラシックとまったく同じ物が使われていますね。(クックック…)
 

 
本当に胴軸との接続部分以外は同じです。
消しゴムの色が変えてあるのは作家シリーズとしての証でしょうか。消しゴムは交換可能です。
 

 
試しに作家シリーズデュマとクラシック#165の回転ノックユニットを交換して着けてみました。
何の問題もなくハマりますが、やはり接合部に違和感あり。
 
このままでお互いのモデルのキャップを交換して着けることもできましたが、見た目がかなりキメラなので写真を撮ることは自粛しました。
 
ちなみにデュマにおいては、クラシック#165の回転ノック機構のままキャップを嵌めても外観は何の違和感もないため、最悪デュマの回転ノック機構が壊れても#165のものを代用できそうです。
(精神衛生面は良くないですけどね)
 

 
今回の試みはキメラを作ることではなく、#165(0.5mm)のペンシルユニットをデュマで使うこと。
いや、試みというと大袈裟かも知れません。実際ペンシルユニットの形状自体は0.5mmも0.7mmも変わらないため入れ替えるのみ。
あとは回転ノック機構を戻せば変更完了です。
 

 
上が0.7mmの本来のデュマペンシル、下が0.5mmのカスタムデュマペンシルです。
ペンシルユニットが同じということはこういう事ができて便利ですね。
 

 
ついでにこのペンシルユニットですが、構造がシンプルなこともあり非常にメンテナンスやアレンジがしやすい作りとなっています。
 

 
パーツ構成はこの3つ。
ペン先の真鍮パーツは外すことができるため、掃除やアレンジに利用できそうです。
 

 
言ってみれば、チャックの内側部分を少し削って真鍮パーツの口金幅を0.9mmに広げれば、おそらく0.9mm芯にも対応できるのではないかと思われます。
 
これは時間ができたらぜひやってみたいですね。
その時はクラシック#165がもう1本必要になりますが…。
 
以上、デュマの0.5mmペンシル化でした。
 

 


 
さて、今回は忘年筆として入手した、モンブラン作家シリーズのメカニカルペンシル「アレキサンドル・デュマ」をレポートしました。
 
作家シリーズを購入する上で一番需要が少ないかと思われるメカニカルペンシル。
万年筆にばかりスポットが当たりがちですが、万年筆・ボールペン(又はローラーボール)・ペンシルとそれぞれの筆記モード全てが、作家が人生をもって体現してきた「書く」という行為に敬意を払える特別な軸となっています。
 
コレクターの方はもとより普段使いとしてペンシルの利用がある学生の方や社会人にとっても、モチベーションを上げる特別な1本となるのは間違いありません。
 
私としてはこの先、作家シリーズの収集というのは考えていないのですが、各筆記モードにおいて1本は持っておきたいと思えるモデルです。(と言いつつボールペンはもう少し使いたいものがありますが…)
 
現在、ボールペンとメカニカルペンシル。縁があれば万年筆とローラーボールも作家シリーズのいずれかのモデルで迎えることができたらと思います。
 
それでは今回はこの辺で。
大変長い記事になりましたが、最期までお読み頂きありがとうございました。

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