銀軸ボールペンの最高峰!YARD・O・LED【ヤード・オ・レッド】バイスロイ プレーン レビュー
皆さんこんにちは。
発作のようにやってくる銀軸欲。
なぜ人は銀軸に惹かれるのでしょう。
同じ銀色でもクロームにはない独特な温かみのある色合いと輝き、手のひらに持つと金属の中では柔らかな感触に指の温度が伝わり、まさに手指と一体化したような感覚を覚える。
銀軸を使う理由は人それぞれですが、私が惹かれるところは金属だけど硬すぎない柔らかな感触と温度。
そして時が経って黒くなった軸を磨く楽しさでしょうか。
私の場合パーカー75が発端で、シェーファーインペリアル→シルバーン→クロスタウンゼント→カスタム切子と色々使ってきました(他にも幾つかありました…)が、ついに手を出してはいけない領域に行ってしまったように思います。
厳密には手を出してはいけないと言うより、いつかは持ちたいという憧れだった銀軸筆記具。
「ヤード・オ・レッド(YARD・O・LED)のバイスロイ プレーン」
万年筆ではなくボールペンです。
なぜ、バーレイでもビクトリアンでもなくプレーンなのかというと、一番シンプルで仕事でもガンガン仕えるかなーということから。お値段も一番お手頃ですし。
ヤードというとペンシルなんですが、ヴィンテージのディプロマットバーレイがすでに手元にあるため、社会人の相棒であるボールペンを、という思いもあってのバイスロイプレーン。
やはり社会人となるとペンシルよりもボールペンの方が断然出番が多いわけで…。
やっぱり毎日使いたいですからね。
ということで、経年変化を楽しめる銀軸最高峰の中の一本、ヤード・オ・レッドのボールペンをレポートしていきます。
パッケージからやたら豪華なヤード・オ・レッド
まずは渋いパッケージから見ていきましょう。
黒い外箱には「YARD・O・LED」「England」のデボスが。
紙の質感といい、文字の書体といい、何とも言えない格調高さが溢れ出ていますね。
黒い外箱の中にはまたまた真っ黒の木箱。
蓋を繋ぐ留め具を取ってもいちいち格好いいデザインです。
開けるといよいよボールペンとご対面。
ベルベットの柔らかい布団の中に鎮座するヤード・オ・レッドのボールペン。堪りませんな。
箱の中のセットはボールペンと替え芯ケース、ギャランティー&ユーザーガイド、クリーニングクロス。
クロス付きというのもなかなか珍しいです。クロスにも「YARD・O・LED」。
ヤード・オ・レッドは熟練職人が手作業で1本1本仕上げているペンということもあり、パッケージにも拘りが見られました。
箱も鑑賞に値する出来。
クロスに「ジュエリー ケア クロス」と書いてある通り、もう単なる筆記具の域を超えてこれは宝石や工芸品・芸術品なのかも知れません。
デザインや刻印(ホールマーク)について
さて、ここからが本題です。
ヤード・オ・レッドのボールペンのデザインやイングランド製に由来するホールマークの詳細を見ていきたいと思います。
まずボールペンのサイズですが、携帯時で132mmという一般的なサイズ。
パーカーのソネットやクロスのクラシックセンチュリーとほぼ同等の全長です。
重量は25gと総金属軸では軽い部類に入りますが、しっかりと金属の重さも感じられる質感。
重さについてはカランダッシュのエクリドールと同じとなっています。
クリップを見てみます。
ヤードと言えばこのエレガントな形状のクリップですよ。
胴軸との付け根には2つのリベットが打たれ、その真ん中にはモデルナンバーの刻印。
(こちらのモデルは「5702」)
クリップのシルエットや刻印、枠を飾るライン、クリップ先の形など一つ一つのパーツも手作業で造られていることが分かります。
個人的にですが、このヤードにあるような中世ヨーロッパ的なデザインのクリップが大好きなのです。
ファーバーカステルやアウロラ等もそうですね。堪りませんな。
近年のヤードのクリップロゴの刻印は「YARD・・O・・LED」となっており、Oの前後はドットが2つ。
年代によってこの部分が違っていて、手元にあるヴィンテージのディプロマットペンシルのロゴ刻印は「YARD-O-LED」となっています。
続いては胴軸の刻印「ホールマーク」について見ていきましょう。
手元のボールペンには胴軸側に6つの刻印、キャップ側に2つの刻印が見られます。
いずれも小さな刻印ですが、マークの細かなところまで再現されていて精密感があります。
左から順に見ていくと、
「YOL」…メーカーズマーク。YOL=YARD・O・LED。
「天秤に925」…メタル&ファインネス マーク。シルバーの純度を示す。
「925」…上記に同じ。
「錨(イカリ)」…バーミンガムのアセイオフィスで鑑定されたことを示す。
「歩くライオン」…イングランド製であることを示し、純度92.5%の銀であることを示す。
「アルファベット」…デイトレター。製造年を示す。
という具合にそれぞれ意味があります。
※天秤に925と925のみの刻印の意味は同じ。製品によってはどちらか1つの場合もあります。
一番右のデイトレターですが、こちらのボールペンは小文字の「q」が刻印されています。
現在のバーミンガムのデイトレターは26のアルファベットのうち「J」を除いた25文字で構成されていて、25年を一周期として書体が変わります。
何年製かを確認するにはホールマークリストが必要なのですが、
例えばこちらのボールペンの場合、2000年が「a」から始まりますので、2024年が「z」となり、Jを抜いた25文字のアルファベットで見ていくと「q」は2015年製という答えに行き着きます。
ちなみにヴィンテージのディプロマットバーレイ ペンシルの刻印は、「歩くライオン」「豹の頭」「デイトレターのd」。
歩くライオンと豹の頭から、イングランド製でロンドンのアセイオフィス鑑定、デイトレターの書体の特徴から1959年製ということになります。
うーむ、シルバー925の刻印は奥が深いです…。
キャップ側の刻印はシルバーの純度を表す刻印のみ。
天秤に925と、同じく925のマーク。
クリップ側には「MADE IN ENGLAND」の刻印。
打ち込みが甘いのか上半分が消えている箇所もあります。これは手作業の味として捉えましょう。
ヤードと言えばこの緻密なホールマーク!ということで、刻印の詳細でした。
筆記時にはこのホールマークがちょうど見える位置に来るため、アクセントにもなってとても格好良いのです。
リフィルの交換方法と操作感
続いてはリフィルの交換方法について書いていきます。
ヤード・オ・レッドのボールペンは回転繰り出し式の機構が採用されています。
ペンシルもそうですが、回転繰り出し式は動作時の音も静かで、筆記という行為をよりエレガントに魅せてくれるんですよね。
ヤードのボールペンは回転繰り出しが独特で、右回転でも左回転でも芯が繰り出されるようになっています。
これは回転式ボールペン多しと言えど、ヤードだけではないでしょうか。
回転繰り出しのクリック感は程良い弾力があり、ペン先はカチッとロックされます。
ペン先を収納する際もスプリングの力が効いていて、軸を少し捻るだけで小気味よく収納されるキビキビとした動作。
うーん、堪りません。(3回目)
リフィルの交換は、通常の回転繰り出し式ボールペンと同じキャップに向かって胴軸を反時計回りに回すことで行えます。先にも書いたとおり、一旦ペン先が繰り出されますがそのまま回してください。
リフィルはよくあるパーカータイプ互換では無く、細いタイプのもの。
アウロラ テッシーやヴァルドマンと同じリフィルです。リフィル自体は細いですが細長いためインク容量もありそうです。
ヤードはキャップ側にリフィルを差し込んで嵌め、胴軸側に戻していくという方法でリフィル交換ができます。内部の真鍮製の繰り出しメカ二ズムも精密感・凝縮感に溢れていますね。
ヤードがパーカータイプの芯ではなく細い形のものを採用している理由として考えられるのが、ペン先のに向かう細いシルエットの確保=筆記時の視認性向上のためではないかということ。
ディプロマットのペンシルとペン先を並べても違和感のない形状です。
これは、ペンシルとボールペンどちらにおいても、ヤード独自のシルエットで視認性の良い快適な筆記感を実現するためではないかと思うのです。
インクの書き味は至って普通の油性インクで 書いていてたまにダマになることもありますが、これはリフィルやインクのせいではなく、筆記角度を寝かしすぎているため。
インクのダマでお悩みの方は、いつもより少しペンを立てて書いてみるとダマは解消されるかも知れません。
他の銀軸ボールペンと比較
それでは最後に他の銀軸との及び先に手元にあったディプロマットと比較していきます。
出番の多い銀軸ボールペンを集めてみました。
左から、クロス タウンゼント、パイロット カスタム切子、ヤード・オ・レッド バイスロイ、パーカー75、クロス クラシックセンチュリー、デルタ プレステージ。
軸径はパーカー75と同等で一般的な太さと言えます。ただしヤードのバイスロイプレーンは表面に模様が無いためパーカー75ほどのグリップ感はありません。
実は持っている銀軸で模様の無い軸は今回が初めて。
クロスはストライプ、カスタム切子とパーカー75がチェック(厳密には切子はチェックではないですが…)、プレステージがボーダーです。
プレーンはダイレクトにシルバー925を味わえる軸として、この先どのように手に馴染んでいくのか非常に楽しみ。
それぞれの軸のリフィルはこのようになっています。
パーカー75のみキャップノック式でそれ以外は回転繰り出し式機構。
銀軸ですのでパーカー75とクロスの2本はかなり硫化が進み黒ずんでいます。
黒ずんだ銀軸を磨くのも楽しみのひとつ(毎回書いてる気がしますが)。また、磨かずに渋い色合いのまま使うのも粋です。
続いてヨーロピアンなクリップ周りを持つボールペン3本。
中世のスピアのような出で立ちのクリップ~天ビスがとても格好いいですね。
軸径はファーバーカステルのクラシックコレクションよりも若干細いかなと感じるくらい。
個人的にはクラシックコレクションが最高に握りやすいため、もう少し太ければ…!というところです。
同じヤード・オ・レッドのディプロマット ペンシルと比較。
この世代のペンシルがスモールサイズなのかも知れませんがペンシルの方が短いです。
そしてタンニン鞣しの手帳に挟んでおいたらかなり硫化が進み、ほぼ真っ黒に…。
黒ずんだ銀軸は嫌いではないので、このカーボンブラックのまま使いたいと思います。
バイスロイも今後、渋い変化が出てくる事に期待!
さて、今回は銀軸ボールペンの最高峰(と言っても過言ではないかと)、ヤード・オ・レッドのバイスロイをレポートしました。
精密感溢れるシルバー925のボディにイングランド製品ならではの緻密なホールマークが光る、英国紳士的なボールペンでした。
リフィルの互換性が低いため取り回しがしやすいかと言えばそうではないかも知れませんが、それを補って余りある所有満足感。
ヤード・オ・レッドは銀軸好きならいつかは通る道なのかも知れません。
それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。
ディスカッション
コメント一覧
最高に面白いブログです‼応援円してます!!いつもありがとうございます‼
いつも楽しく拝読しております。ありがとうございます。
一つ質問させてください。
ファーバーカステル伯爵コレクションのスターリングシルバーのボールペンを、タンニンなめし(ヌメ革)のロールペンケースに入れて持ち運ぶ運用を開始しようとしているのですが、この記事で、ヌメ革はスターリングシルバーを速く硫化させると知って驚きました。
愛用されている土屋鞄のペンケースもヌメ革かと思いますが、スターリングシルバーのペンを入れていらっしゃいますか?
入れていらっしゃるとすれば、何か硫化対策はされていますか?
急なご質問で申し訳ありません。
ご教示いただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
AKさん
コメント、そしてご愛読ありがとうございます。
返信が遅くなり申し訳ありません。
伯爵コレクションのスターリングシルバーをヌメ革のロールペンケースに入れて持ち運ぶにあたり、の注意点ですね。
記事にも書いた通りで、本革製のペンケースには硫化を促進させる作用があるようです。
土屋鞄のトーンオイルヌメロールペンケースは愛用しており、その中にシルバー925が使われているペンもいくつか入れています。
まず、伯爵コレクションスターリングシルバーのローラーボール、こちらを一番右の大きなポケットに入れていますが、徐々に黒化してきています。
あとは、モンブランの作家シリーズのように部分的にシルバー925が使われているペンも同様です。
私自身、「黒くして磨く」という行為が好きですので、早く黒くなってほしい派なのですが、馴染みのない方からすると薄汚れたペンのように見えている可能性も…。
もしかすると、AKさんもそれを気にされているのかとお察しします。
話を戻して、硫化対策としてしていること。
それは、「日常的に(頻繁に)使うこと」だと思っています。
鞣し剤等の作用で徐々に黒化するとして それは慢性的な条件化、つまり「長期保管」によるものだと確信しています。
そのため、日常的にそのペンを使っていれば自然と硫化速度は抑えられるものと考えます。
実際、私は大量のペンを所有していますので、お気に入りのペンを順に使うとてローテーションに時間がかかります。
お気に入りの一本を使い倒す、または毎日ペンケースからは一定時間出して使います、という運用であれば、気にされる必要はないのかなと思います。
黒くなったら黒くなったで、磨くのも楽しいものですし。
(少し黒くなったくらいであれば、消しゴムでゴシゴシすれば表面を摩耗させず綺麗にできます)
ようは、なるべく死蔵せずに使うことが一番の硫化対策、ということになりますね。
是非とも素敵な革製ロールペンケースと一緒に伯爵を使ってあげてください。
ご参考になれば幸いです。
たにけんさん
シルバーの温かみのある雰囲気が好きなのですが、お察しのとおり、あまり黒ずませることなく使いたいと考えておりまして。
ボールペンは毎日使うと思いますので、それほど心配しなくても良さそうですね。
丁寧にご教示いただき、ありがとうございました。
はじめまして このボールペンかっこいいですね。
私も購入を考えているのですが、リフィルは日本のボールペンのものも使えるのでしょうか?
zeebraのsarasaがインクが濃くて好きなのですが、流用できるでしょうか?