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1970年代デザイン!使ってみて分かるアウロラ テッシーの魅力【AURORA Thesi レビュー】

2024年9月22日

皆さんこんばんは。
 
昨今の筆記具のデザインはシンプルな傾向。
学生やビジネスマンに優しい、手が出しやすい価格帯の筆記具でもミニマルで格好良いものが多く、所謂、重厚で高級感溢れる筆記具とは良い意味で棲み分けがされているという状況です。
 
私自身、筆記具については国内メーカーよりも海外メーカー(特にヨーロッパ圏)の筆記具をレポートする機会が増えているのですが、海外メーカーの老舗の筆記具でミニマルなデザインものを探そうと思うと、LAMYやロットリングくらいしか思い当たりません。
 
レギュラーなラインナップでクラシックな筆記具を展開しているメーカーでも、ミニマルなデザインの筆記具は無いものだろうか?と考えていると…、
 
あるではないですか。
私が気になっていた筆記具が。
 

 
その名もアウロラのテッシー。
 
1970年代に発売されていた、アウロラの代表的モデル。
建築家のマルコ・ザンヌがデザインし、ニューヨーク近代美術館に永久展示されている、色褪せないデザインのボールペンです。
 
しかし、アウロラ テッシーに対してのイメージは私を含め「デザインは優れているけど、100%使いにくそう…」という方がほとんどではないでしょうか?
 
使わなくても、使いづらいだろうな…という形状。そのようなオーラを漂わせているのがテッシー。
孫悟空が言うところの「おめえはオラに勝てねえ。戦わなくても分かる」と同じ。
 
ニューヨーク近代美術館に収蔵されているんです。
デザインなんです!一旦、書き心地ではありません!
 
という主張が見え隠れしますが、本当に使いづらいかはその筆記具を使った人が判断するもの。
百聞は一見に如かず、ということで実際に使ってみようではありませんか。
 

 
ということで手元にやってきたアウロラのテッシー。
テッシーというと「君の名は」が浮かんでしまうのですが、こちらは約50年前からある筆記具のテッシーです。
 
ファーストインプレッションは、意外と細くて小さい!です。
画面越しに見るのと実際に手に取るのとではこれほど印象が違うとは…。
 

 
しかも軽い。金属製だけど軽い。17g。
いやでもこの薄さ細さ且つこのデザインで17gなので、軽すぎる訳ではないと気付く。
 
これまで重い筆記具を使いすぎて、それに慣れてしまってる自分がいました。
いつも使うボールペンが30g前後ですので、約半分くらいの重さしかなく、しかも最近、筆記具のメンテでサンエーパールを使って磨き作業を行っているので腕や指がムキムキで、余計に軽く感じてしまうだけなのである。
 

 
それにしても、やはりデザインは素晴らしいものがあります。
アウロラの筆記具であることを忘れてしまうようなデザインと使用感。
 
そう、肝心の使用感についてですが、意外や意外。
使いやすくはないですが、使いにくくもない。というのが実際に使ってみたリアルな感想です。
 
そういえば、テッシーはボールペンでした。
考えてみれば、筆記するときのペン先の向きが決まっている万年筆と違って、ボールペンはペン先の向きがある程度「自由」です。
 

 
要は、なるべくペン先を立てるようにして持ち、紙に対してペン先のボールが回転するのであれば字は書けます。ということは、何も「AURORA」のロゴが横から見える向きで握る必要性はなく、ロゴが下を向いた状態やボディー底面のスイッチ類が上に来る向きで持って書いても良いのです。
 
すなわち、自分が書きやすい握り方で持って書くというスタイルをとれるのがテッシーというボールペン。
そのデザインと同じで、「型に囚われてはいけないよ」と言われているようです。
 

 
軸径(と言ってもよいのだろうか…)?ペンの幅は10mmで、日常的に我々が使うボールペンと同じくらいの幅があるため、不思議とそこまで「薄い筆記具を使っている」という感じはしません。
 
そうなると、デザインが良い分 俄然使うときのモチベーションが上がってくる。
そういうことか、アウロラ テッシー。
 
これは使った人だけにしか分からない感覚かもしれません。
※決して、使いやすい!と言ってる訳ではないですが、予想以上に使いにくくなく愉しいボールペンという事ですのであしからず…。
 

 
さて、少しテッシーについての誤解が解けたところで、デザインや使い方について書いていこうと思います。
 

 
まず、全体像。
そのまま表現すると、楕円形の円柱の先端が斜めにカットされた金属棒のようなデザイン。
右側(ペン上部)の黒い部分はクリップ。
底面に当たる部分には各種の操作スイッチがあり、ペン先側に「AURORA」のロゴがひとつ。
 
おおよそペンらしくないペンというか、1970年代発売ですが1980年代のポストモダンを先取りしたようなデザインに見えます。
 

 
底面にあたる部分のスイッチ類とペン先から覗くリフィルの先。
スイッチは3つあり、詳しくは後述しますが、ペン先を出す・しまうという操作に親指を天ビス(ペンの上部)まで持っていく必要がなく、ペンを握っている動作の延長で操作できるようまとめられているところが素晴らしい。
 

 
各部の操作スイッチについて。
テッシーの取説からの抜粋ですが、各スイッチにはそれぞれ名称が付いており、
 
スライダー
リトラクター
イジェクター
 
という3つのスイッチからなっています。
 
「スライダー」をペン先側にスライドすることから筆記動作は始まり、そのすぐ横の「リトラクター」を押し込む事でオートマチックにペン先を軸内に収納します。
 

 
片手で使う場合、スライダーは親指でスライドさせることになりますが、指の腹で操作すると痛いため爪を使って操作するのが良いかと。
 

 
テッシーに口金という概念は無く、斜めにカットされたペン先からダイレクトにリフィルが出てきます。
持ち方については写真のようにロゴを自分の身体に向ける持ち方が一般的。
紙面への視認性も悪くはありません。
 

 
「リトラクター」を押すとペン先がスコッと音を立て一瞬で軸内にしまわれます。
ということで、テッシーは軸内に仕組まれたスプリングによって、ペン先を出す・しまうの動作を行っているのです。
今で言うところのレバー式のボールペンと同じ要領なのですが、このテッシーの「特性」を知っておくことで後々面倒なことを回避できるかと思います。
 

 
ボディカラーがホワイトの場合、クリップのカラーはブラックで側面がゴールドと非常にお洒落。
テッシーのクリップはスプリング内蔵で動作しますが、あくまでおまけのようなものという印象たっぷりです。
クリップの端を指で押してクリップ先を持ち上げますが、薄いシャツの生地を挟む程度に止まり、実用性という面では今ひとつ。
いや、このペンは実用性ではありません。デザインです。
 

 
クリップの裏側には「METAL」の刻印と、その右側にも何か彫られていますが不明。
かなり注意しないと見えない部分です。
 

 
天ビスのデザイン。
ボディカラーがホワイトの場合は、黒いリング+ホワイトの天ビスパーツ。
 
他のカラーラインナップは、シルバーカラーのエコスティール、ブラッククロームのブラック、そして素材がシルバー925のスターリングシルバーと、シルバー925にゴールドプレートを施したバーメイル。
それぞれのモデルでクリップのカラーや天ビスの色は異なります。
 
テッシーのリフィル交換は少し特徴的ですので、前述したテッシーの特性を踏まえつつ その操作を見ていきましょう。
 

 
ペン先が出ている、出ていないに関わらず、「イジェクター」のスイッチが見られます。
リフィル交換の際は、まずスライダーを操作しペン先を出した状態で、このイジェクターを押し込みます。
(ペン先が出ていない状態だと押しても変化なし)
 

 
あとは親指でイジェクター部をグッと押さえると、内部ユニットがびょーんと飛び出てきます。
これでユニットごとリフィルを取り出して、リフィルの交換を行います。
 

 
取り出したユニット+リフィル。
リフィルは軸内のガイドパイプに収まりクリップ先のあたりまで格納されています。
こう見ると同軸自体はカランダッシュのエクリドールと同じように金属素材の一体形成で、パーツが少ない=堅牢性も併せ持っていることが伺えますね。
 
それにしても特徴的なペン先繰り出しユニット。
ボールペン本体のデザインもさることながら、こういったパーツひとつを取っても素晴らしいデザインです。
 

 
ユニットからリフィルを外したところ。
リフィルには出っ張りがあり、その部分までをユニット内に収納するかたち。
 
リフィルは今でも購入可能。
他に、ヴァルドマンやシュミットにも同じ形のリフィルがあるため安心です。
 
こちらの純正リフィルは年月が経っていることもあり、書いていたらそのうち出なくなりましたが、リフィルをドライヤー等で温めると一時的に復活しますので、いざという時にお試しを。
 

 
格好良い内部ユニット。
突き出たパイプ部分がスプリングで可動するようになっています。
底面に見えるのがイジェクター。
 
この内部ユニットに新しいリフィルを装着して軸内に戻すのですが、リフィルを装着せずに(ユニットだけで)軸内に戻すのはタブーとされています。
※取説にも、必ずリフィルを装着して軸内に戻すように注意書きがあります。
 
その理由として、この内部ユニットと長いリフィル、そして胴軸内のガイドパイプが共に作用して内部ユニットが「取り出せる」のであり、リフィルがないと内部ユニットを取り出す動力(スプリングのテンション)が得られず、結果ユニットが取り出せなくなるというトラブルが想定されるため。
 
実際にリフィルを装着せずに内部ユニットを戻したことはありませんが、初めてテッシーを使う方は覚えておく必要がありそうです。
 

 
近代的なデザインのテッシーですが、リフィルはヤード・オ・レッドの総純銀モデルと共通。
ということで、ヤードを持っておられる方は、気分転換にテッシーにリフィルを入れ替えて使うことも可能。
デザイン性は真逆ですが、リフィルが共通というなんとも言えない互換性。
 

 
ついでに横に並べてみました。
同じサイズのリフィルを使うだけあって、ペン自体のサイズも似ている(コンパクトである)この2本。
クラシックなヤード、ミニマルなテッシー。
 

 
テッシーで文字を書いてみました。
意外といつもの文字が書ける(というと語弊がありますが…)アウロラ テッシー。
 
オリジナルのインクがリフィル内で固着していたりと心許ないため、シュミットのリフィルに置き換えています。モンブランもそうですが、青インクの場合、個人的には昔のインクの枯れた色合いの方が好みですね。
 

 

 
さて、今回は筆記具好きやデザインに精通している方、LAMYやロットリングが好きな方であれば一度はみたことがあるであろうドイツデザインのボールペン「アウロラ テッシー」をレポートしました。
有名デザイナーが手掛けたデザインということで、筆記具としては使用快適性をかなりど返ししたボールペンですが、実際は普通に使える逸品。
 
「普通に使える逸品」という謎なワードが出てしまうほど、使用感以上に手元に置いておきたいデザインと言えます。快適性だけでモチベーションが上がらない筆記具よりも、多少クセがあってもデザインを気に入っている筆記具の方が使っていて愉しいものです。
 
百聞は一見に如かず。これは今回テッシーを使ってみて私自身が一番感じたこと。
これからも情報に囚われず、筆記具も握り方に囚われず、使っていて愉しい筆記具を追い求めていきたいと思います。
 
それではこの辺で。
今回も最後までお読み頂きありがとうございました。

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