ボールペン・万年筆・メカニカルペンシルなど、文房具好きの購入記を写真多めで比較レビュー。
たまーに気になったガジェットのレポートも。
物欲のままに手に入れたアイテムをレビューしたりしなかったり。

シェーファーの大人な魅力に包まれたフラッグシップ万年筆【シェーファー レガシー ヘリテージ ルックオブレザー】レビュー

2024年10月1日

皆さんこんばんは。
 
久しぶりに大好きな太軸万年筆を入手して しばらく使ってみましたので、使用感や比較をまとめていきたいと思います。
 
今回は久々となるシェーファーの万年筆。
うーむ、シェーファーは何年ぶりかというくらい久しぶりで、自身としては3本目の万年筆となります。
(一本仕様の被りにより手放しています)
 
シェーファーはクロス(CROSS)と並んでアメリカを代表する筆記具メーカーで、その歴史は100年以上と古く歴代アメリカ大統領を含め昔からコアなファンの多いメーカーです。
 

 
シェーファーの万年筆というと特徴が大きく二つ。
 
一つ目は、象嵌ニブがもたらす独特な書き味。
 
シェーファーと言えば象嵌ニブと言っていいほど、見た目の特徴と共に反ったペン先の柔らかな紙へのタッチが印象的です。
象嵌ニブは、首軸とペン先が一体化している事によりデザイン的なニブの凹凸が無いため、書いている文字が見やすくなるというメリットがあると感じています。
 
二つ目が、様々なインク吸入機構が楽しめるという点。
 
シェーファーが開発した吸入機構は面白く、万年筆界に革命をもたらしたと言っても過言ではないと思います。
ペン芯からストロー状の筒を出し、ペン先をインク瓶に浸すことなくインクを吸入するスノーケル式。
かなり画期的な吸入機構で、まずシェーファーの万年筆以外では使えません。
 
私はまだ持っておらず使ったこともないのですが、スノーケル式のPFM(PEN FOR MEN)はいつかは使ってみたい憧れの万年筆です。
 
また、その後に開発された、尻軸を目一杯引き出した後にインク瓶にペン先を浸し押し込む事で吸入するタッチダウン式。
このような空気圧を利用した吸入方法は、まるで理科の実験を行っているかのような 操作が楽しい万年筆となっています。
 
 
さて、今回レポートするのは一つ目の象嵌ニブが楽しめる太軸万年筆。
 
「シェーファー レガシーヘリテージ ルックオブレザー(ブラック)」です。
 
シェーファーの万年筆ラインナップでレガシーヘリテージは、フラッグシップモデルの位置づけ。
モンブランのマイスターシュテュック、パーカーのデュオフォールド、ペリカンのスーベレーン(M800)と並ぶ、どっしりと存在感のある万年筆です。
 
さらに、軸の処理はエレガントで大人筆記具の雰囲気を醸し出す「ルックオブレザー」。
 
近年のシェーファーというと、金属軸+ラッカー塗装に定評がありますが、このルックオブレザーもラッカー塗装(柄)でありながらうまくレザーの質感を表現しており、とてもお洒落な一本。
 
それではシェーファーのレガシーヘリテージを詳しく見ていきましょう。
 

 

 

 

大人な雰囲気を演出するルックオブレザーのデザインと存在感

非常にエレガントなデザインの万年筆「レガシーヘリテージ」。
まずはデザインの特徴を見ていきたいと思います。
 

 
シェーファーのレガシーはラインナップの中では太軸で、外観の装飾はシンプルに、ゴールドやシルバーのカラーが映える美しい筆記具です。
 
一目でシェーファーと分かるデザインは、キャップトップと尻軸がバランス良く絞られたシルエット。
キャップには大きなキャップリングと、天頂から伸びたクリップが特徴的。
 

 
ヘリテージというだけあって、シェーファーの伝統的なデザインを踏襲したモデルで、太いキャップリングは上級モデルの証。
昔の各メーカーの万年筆は、キャップリングの太さでモデルの高級感を区別していました。
(上位モデルになるほどキャップリングが太くなる)
 

 
キャップリングの刻印はシンプルに「SHEAFFER」のみ。
ルックオブレザーでいうと 軸にクロコダイルレザー調の柄が施されている加減、大きめでシンプルなシルバーのキャップリングと とても相性が良いように思います。
 
キャップリングはシルバーコーティングなのか、使っていると黒ずんできます。
この辺りはパーカーデュオフォールドと同じで、経年変化や磨く楽しみとして捉えましょう。
 
シェーファーのクリップは短めで、内部にはしっかりとバネが仕組まれている造り。
クリップ上部につくアイボリーの「ホワイトドット」は高品質の証とされています。
 
クリップの右サイドには「SHEAFFER」の刻印。
クリップ裏に刻印は無しです。
 

 
キャップを外すとどっしりとした首軸兼ペン先がお目見え。
後で詳しく見ていきますが、弟分とも言えるモデル「インペリアル」との一番の違いはこの太軸の握り心地に他なりません。
 
首の太さで言うと、ハンマー投金メダリストの室伏広治さんと一般人くらいの違いがあり、首軸の太さは筆記時の安定感に繋がっています。
 

 
シェーファー万年筆の字幅表記の位置ですが、首軸(ペン芯側)の胴軸寄りに書かれています。
(写真の赤枠内に「M」と書かれているのがお分かり頂けるでしょうか)
 
確かチョークで書いてあると記憶していますが、磨けば消えてしまう字幅表記です。
 

 
美しいレガシーヘリテージの首軸。(インク汚れはご愛敬)
この太さがたまりません。
ニブは切り割りの周りが凹んでいる独特な形状です。書き味については後述していきます。
 

 
ペン芯もシェーファー象嵌ニブ万年筆の中では最大。
ペン芯とニブの間にたっぷりとインクが満たされていることが分かります。
 
レガシーヘリテージのペン先は、ペン芯からペン先の露出が少ないため筆記時のしなりは感じませんが、たっぷりなインクフローで書き出しから擦れることは皆無、極上のヌラヌラ感を味わえます。
 

 
再度全体のシルエットとテクスチャーを。
「ルック オブ レザー」という名の通り 本革巻きではないですが、メリットとしては経年で汚れていかないことと手入れのし易さでしょうか。
 
正直、このデザインに一目惚れです。
近年希に見る、色気MAXの万年筆だと思うのです。
 
最後にスペックは、
 
全長(携帯時):139mm
胴軸径:12.5mm
重量:37g(キャップ:12g/胴軸:25g)
 
となっています。
 

 

シェーファー3モデルの比較

さて、この項では現在手元にある3本のシェーファー万年筆を比較していこうと思います。
 

 
左から、レガシーヘリテージ、インペリアル、トライアンフ。
軸の太さやニブの形状に注目して頂きたいです。
 
グリップポイントからペン先までの長さは、実はインペリアルよりもレガシーヘリテージの方が短く、使用感は若干異なります。
 
全体的なデザインだけで見ると似ている二本ですが、サイズや筆記感から 全くの別物の万年筆となっています。
インクの吸入機構は左の二本が、カートリッジ/コンバーター両用式。
右のトライアンフがタッチダウン式です。
 
キャップについても象嵌ニブの二本は嵌合式、トライアンフはネジ式となっています。
 

 
並びが変わっていますが、キャップを尻軸にポストした時のサイズ比較。
 
左:トライアンフ、全長157mm
中:レガシーヘリテージ、148mm
右:インペリアル、145mm
 
トライアンフは長い代わりに樹脂軸で軽いため軽快な書き心地を得られます。
全体の重量も15gのため、キャップは尻軸にポストして書く方がベストと考えます。
 
レガシーとインペリアルはトライアンフに比べて軸径と重量があるため、キャップ無しでも十分書きやすいうえ、胴軸自体が全重量の大半を締めているため キャップを尻軸にポストしてもさほど重量バランスが変わらないところがポイント。
 

 
ペン先の比較です。
各ペン先のスペックは、
 
左:トライアンフ(スチールニブ F )
中:レガシーヘリテージ(18金ニブ M )
右:インペリアル(14金ニブ EF )
 
左のトライアンフは巻きニブでスチールペン先。
筆記時のしなりはほぼありませんが、ペン先が反っているため紙のタッチが極上。
スチールでもこのタッチを再現しているところは凄いです。
 

 
レガシーはタッチの柔らかさとインクフローによるヌラヌラ体験が得られます。
前述したようにペン芯からはみ出るニブが短いため、インペリアルに比べるとしなりが無いように感じます。
 
代わりに太軸がもたらす、握ったときに余分な力が抜ける感じ。
力を抜いてヌラヌラとペン先を走らせる、ゆっくり・じっくりと筆記するのに向いているようなペン先ではないかと思います。
 
この中では一番しなりがあると感じるのがインペリアル。
流石は万人に愛されるモデルだけあって、書き味については他メーカーの万年筆に通じる部分がありますね。
 
この3種類のニブだけみても、それぞれの特徴があるシェーファーの万年筆。
非常に面白いです。
 

 
ニブを横から見たところの比較。
ペン先の反りはトライアンフが一番。
 
レガシーヘリテージとインペリアルのペン先を見比べると、ペン芯とペン先までの距離の違いがお分かり頂けるかと。
この微妙な違いが書き味の違いだと思うと、万年筆とは本当に奥が深くて面白いと感じるのです。
 
ついでにレガシーヘリテージの万年筆とボールペンのサイズを比較してみましょう。
 

 
各メーカーの筆記具のサイズにおいて、そのほとんどがボールペンに比べて万年筆の方が大きく作られています。
レガシーヘリテージの万年筆とボールペンはというと、クリップ、キャップの長さ、軸径について万年筆とほぼ同等。
 
そう考えると、モンブランのマイスターシュテュック#149やペリカンのスーベレーンM800と同じく、フラッグシップモデルとして筆記モードに左右されない統一感を持たせてあるのだと思います。
 

 
クロームやラッカーの質感が素晴らしいシェーファーの筆記具。
なんと言いますか、上品な輝きを持ったペンにアメリカ大統領や日本の政治家が虜になった理由が分かる気がします。
 

 

シェーファーの独特な書き味

シェーファーには何にも似ないシェーファーの書き味と使い心地があると思っています。
この項ではレガシーヘリテージの書き味に迫っていきたいと思います。
 

 
決してしなるペンではなく むしろ硬めと感じるペン先ですが、柔らかな紙へのタッチはシェーファーの万年筆としての個性を感じる瞬間。
 
レガシーヘリテージでは、太軸がもたらす安定感がそれに拍車をかけていると感じます。
 

 
キャップを外して握ってみたところ。
金属にラッカー塗装の軸は十分な重みがあり、このままでも非常に安定的。
軸の中に厚めの樹脂が設けられているところは、レガシーヘリテージボールペンのそれと同じです。
 

 
キャップを尻軸にポストしても、キャップに余計な装飾が無いため大きな重心変動は起こらず、どっしりとした書き心地を楽しめます。
文字通り、軸の長さを足したい場合はキャップをポストしてみましょう。
 

 
優しい紙へのタッチとヌラヌラとしたインクフローがもたらす書き味。
ペン先を立てても寝かせても、インクフローがいいから書きやすい。
 
ペン先を立てると少し細めの字が書けます。
ちなみにどの万年筆もですが、ニブを裏返して書くと超極細の字幅の文字が書けます。(あまりお勧めしませんが…)
 

 
細字のトライアンフと書き比べてみました。
字幅の違いもありますが、違う点はインクフロー。
 
スチール(トライアンフ)からレガシーヘリテージ(18金)となり、紙へのタッチはさらに柔らかく。
 

 
シェーファーの書き味をどのランクの万年筆でも再現できるようにか、素材として硬いスチールペン先はペン先の反りを大きくすることで紙へのタッチを柔らかに、18金は素材的に柔らかいタッチが実現できるため、前項のペン芯とペン先の距離の関係にもあるように、しなりすぎを抑えコントロールをし易くする調整がなされているものと考えています。
 

 
ペン先を拡大してみます。
ああ、なんと美しいペン先でしょう…。
刻印は「SHEAFFER®」「18K 750」「SPCo(?)」。
 
メーカー刻印や素材の刻印は分かりますが、謎なのが「SPCo(?)」「SPC0(?)」の刻印。
調べても出てきません。
コーティングか何かを表す記号でしょうか?
 
首軸の真ん中あたりにはキャップ痕がつきますが、これはシェーファー嵌合式キャップの宿命とも言えるものです。
 

 
キャップ内部を覗いてみると白いインナーキャップ。
嵌合式でありながらもしっかりとした気密性の確保のため、同軸とキャップを繋ぐ際にユーザーの力加減によって付く痕です。
首軸のキャップ痕は気密性の証と言っていいでしょう。
 

 
最後にインクの吸入機構について。
レガシーヘリテージはカートリッジ/コンバーター両用式。
 
シェーファーのカートリッジ/コンバーターは独自規格のため、ペリカン等のヨーロッパ共有規格のカートリッジ/コンバーターは使えません。
 
しかし、このカートリッジのインク容量の大きさとコンバーターのデザインの良さは独自規格の良いところではないでしょうか。
コンバーターのインクビューはスモークブラックとなっています(これが格好良いんです!)。
 
ううむ、レガシーヘリテージの前身であるPFM(PEN FOR MEN)のスノーケル式も非常に興味がありますね…。
 

 
レガシーヘリテージの書き味・書き心地について書いてきましたが、まとめると、カッチリニブに柔らかなタッチが特徴となり、潤沢なインクフローと太軸が合わさることで「力を抜いた筆記が可能」であること。
 
硬めのニブは万年筆のふわふわな書き味が苦手という方や、筆圧が強いからと万年筆を敬遠されている方にもお勧めできるような、懐の深いペン先ではないかと思います。
 

 

ビジネスライクなデザインでありながら大人な魅力を持つ筆記具

このブログを始めたキッカケが、自分が買って使ってみた筆記具の中で、仕事でも気兼ねなく使えて 且つ、筆記時のモチベーションを上げるペンを共有したい、というものでした。
 
色々なペンを触ってきましたが、万人にお勧めできる「ビジネスライクなデザインでありながら大人な魅力を持つ筆記具」とは何かを、改めて考えていきたいと思います。
 
と言いつつ、まず大前提として 筆記具に興味関心がある方以外からすると、ペンはペンなのであって書ければ何でも良いと考えている方が大半だということ。
 
筆記具に興味関心を持ち筆記具を追求するということは 言ってみれば自己満足の世界であって、決して他人にそれを強要してはならないということです。
 
あくまで、私にとって高級筆記具は自分の筆記モチベーションを上げるためのもの。
そして、他人に使ってもらう(一時的に渡す)時は、相手が書きやすいと感じるペンを携帯することだと考えています。
 
それを前提とした上で、現段階でのビジネスマンの万人にお勧めできるワンランク上の筆記具とは。
 
 
結論から言うと、「万人に勧める」という観点から、モノトーンカラーの筆記具(ブラック×シルバートリム)がそれにあたると考えています。
 
根拠としては、ビジネスマンのスーツのカラーの大半がモノトーンであること。
オフィスのデスクでペンケースから出して使う、営業先で使う、会議の場で使う等色々なシーンがありますが、身の回りや共用スペースのモノとの調和、サインの時など人に一時的に貸して使ってもらう時など、様々な要因を踏まえるとやはりシルバートリムの筆記具が馴染んできます。
 
また、仕事をする環境において、目に入る色数が少ない方が集中できるというのは事実としてあるように思います。
 
そのような観点から、主張しすぎないカラーとしてブラック×シルバーを選んでみる。
ただし、控えめでありながら、自分としての拘りやアイデンティティーは出していきたいところ。
 
高級筆記具のメーカーは数ありますが、手元のボールペン、万年筆、メカニカルペンシルを見渡すと、どのメーカーからもブラック×シルバーのランナップは出ていることに気付きます。
 

 
参考:左から、モンブラン ドネーションペン(ヨハネス・ブラームス)、ウォーターマン ナイト&デイ、ファーバーカステル クラシックコレクション エボニー、カランダッシュ RNX.316、シェーファー レガシーヘリテージ ルックオブレザー。
 

 

ということで、皆さんが今使っている筆記具メーカーにおいても、ブラック×シルバー(もしくはネイビー×シルバー、バーガンディ×シルバーも良いかも)があるかも知れません。
 
とにかく、自分が集中して仕事する、かつ相手の集中を妨げない、という視点からブラック×シルバーの選択肢はありだと思います。
(もちろん、ゴールドの方が目に優しく集中できるという方もいらっしゃると思いますが…)
 
ゴールドトリムの筆記具を使うのが好きな方も、ブラック×シルバーの筆記具を一本持っておくとTPOに合わせて使えるためお勧めです。
 
ビジネスではブラック×シルバーをお勧めしておきながらも、スーツやジャケット、身につける時計に「合わせる」と考えたとき、もちろん筆記具の多様性を利用しない手はありません。
 
ブラウン系のスーツやジャケットにはゴールドトリムが映えますし、アースカラーの軸を合わせるのもお洒落です。その組み合わせは無限大と言っていいでしょう。
 
あくまで、ビジネス一般と考えたときに「ブラック×シルバーはやっぱり良い」という意味で捉えて頂きたいと思います。
 

 
今回レポートしたシェーファーの「レガシーヘリテージ ルックオブレザー」。
この、ビジネスにも使えてアイデンティティーも出せて、かつ大人の色気が漂う筆記具という意味でもピッタリな万年筆ではないかと思います。
 
女性が使えば格好良く、男性が使えばダンディーに。
自分に合った個性的な一本をお探しの方は、ぜひ候補に入れてみてはいかがでしょう。
 
それでは、長くなりましたが今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

スポンサーリンク