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カランダッシュの金ペン廃番万年筆【ヘクサゴナルコレクション キューブ 万年筆 レビュー】

2024年10月4日

最近、仕事でカランダッシュのボールペンを使う機会が増えている私ですが、万年筆についても例外ではありません。
 
カランダッシュを使い続ける理由として堅牢性が挙げられます。
丸軸の筆記具に比べて外からの力に強く、さらにカランダッシュは金属素材のため落としたとしても容易に凹んだりしません。(胴軸にキズはあれど、凹みがあるエクリドールや849を見たことないんですよね)
 
以前、エクリドールの万年筆(レトロの旧タイプ)をレビューしましたが、今回はそ上位モデルかつ廃番モデルである「ヘクサゴナルコレクション」のキューブを取り上げていきます。
 

 
ヘクサゴナルコレクションはエクリドールの上位モデルでしたが、その座をバリアスに譲っています。
今や入手できるのはユーズド品のみですが なかなか市場に出てこないモデルのため、エクリドールを気に入っていて金ペン装備のバリエーション軸が欲しい方は見つけ次第確保が望ましいです。
 
ヘクサゴナルのボールペン(カーボン)の時も書きましたが、ヘクサゴナルコレクションは高級ライターと高級筆記具の中間に位置するようなダンディズムを感じるアイテムとなっています。
 
今回の「キューブ」も、カランダッシュの高級ライターのような表面処理に、18金ペン先というスペックを備えた所有満足度の高いモデルとなっています。
 
それでは早速、「カランダッシュ ヘクサゴナルコレクション キューブ 万年筆」を比較を交えながら見ていきましょう!
 

 

 

 

ヘクサゴナルコレクションキューブのデザイン

ヘクサゴナルコレクションはエクリドール、849とともに六角形の軸を持つシリーズ。
軸の持ちやすさはもちろん言うこと無しですが、軸のデザインについてもカランダッシュ六角軸の中でもトップクラスです。
 

 
軸の全体像。
ヘクサゴナルキューブはその名の通り、天冠から尻軸まで正方形が整然と並んだエッジの効いたデザインとなっています。
 
嵌合キャップ式の万年筆ですがデザイン的にキャップと胴軸の境目が目立ちにくく、1本のバーのように見えるのも面白いところ。
 

 
軸の表面を拡大すると、単なるラインで区切られた正方形の彫りではなくまるで切子硝子のような斜めのカットが入り、さらに面にはヘアライン加工は施されている事が分かります。
深めにカットされた正確な彫りは陰影を生み出し、それに伴い立体感が増しています。
 
ラミーのプレミエステンレスもそうですが金属のヘアライン加工は素材との相性も良く、見た目の高級感だけでなく手触りも申し分なし。
金属素材というと素材の性質上 指紋も目立ちますが、ヘアライン加工はそういった心配もありません。
 

 
クリップは胴軸と対象的に鏡面加工となっていて、付け根には「CdA」の旧ロゴ。
現在のペンシルマークに変わる前にヘクサゴナルは廃番となっていますので、ヘクサゴナルというとこの控えめな旧ロゴのみのバリエーションです。
 
クリップにはボールペンと同様にバネ等は仕込まれておらず、金属のしなりを利用してポケットなどに挟む形となります。この辺は頑張ってバネ式にして欲しかったところですね。
 

 
クリップ根元のサイド部には6桁のシリアルナンバー。
こちらもボールペンと同様です。手元のヘクサゴナル(ボールペンと万年筆)はどちらもCから始まるシリアルナンバーですが、A~やB~が存在するかは不明。(カランダッシュのCかも知れませんが…)
 

 
長いストレートクリップの下にはこちらも控えめなメーカーロゴの刻印。
カランダッシュ849のメーカーロゴ刻印もこのようにクリップの下に位置していますし、ヘクサゴナルのデザイン思想は849に受け継がれていると言っていいでしょう。
 
刻印は「CARAN d’ACHE OF SWITZERLAND」。現在の849の「CARAN D’ACHE」とクリップ上の「SWISS MADE」を合わせたような刻印です。
 
ちなみにカランダッシュの六角軸シリーズの発売順は、
エクリドール→ヘクサゴナル→849→バリアスとなっています。
 

 
ボールペン(カーボン)との比較です。
全長はペン先を収納したボールペンとほぼ同じで136mm。(ボールペンは135mm)
 
高級感のある2本。
2本差しのペンケースに挿して携帯したいところ。
 

 
クリップの形状と長さは全く同じです。
うーむ、エクリドールと同様にクリップを左に傾けた位置で置くと美しさが増すような気がします。
クリップ下の刻印やシリアルナンバー、「CdA」ロゴなど情報量も多いです。
 

 

ヘクサゴナルとエクリドールの違いとは?

続いてヘクサゴナルとエクリドールの万年筆を比較していきます。
 

 
2本を並べると携帯時の全長は全く同じで136mm。
何となくヘクサゴナルからは大人の色気を感じ、エクリドールからは気品を感じます。
デザインコンセプトは異なりますがどちらも六角軸。ズシリとした重みと高級感があります。
 
重量は意外にもヘクサゴナルの方が軽く、
ヘクサゴナルキューブ:32g
エクリドールレトロ:35g
となっていますが、差が3gのみとなり持った感じ大きな違いは感じません。
 

 
キャップを見比べてみます。
手元にあるヘクサゴナルの天冠はフラット刻印無しですが、バリエーション上フラットで「CdA」刻印があるものも確認しています。
 
このエクリドールの天冠も旧タイプの物ですので余り参考にはならないかも知れませんが…汗
 

 

どちらも六角軸の嵌合式万年筆ではあるものの、嵌合部と首軸のデザイン、そしてニブに違いがあります。
まずは嵌合部から見ていきます。
 

 
ヘクサゴナルには六角形の台座のようなものがあり、キャップを差し込んだあとにキャップが回ることはありませんが、エクリドールは嵌合部が丸形のため携帯時にキャップが回ることがあります。
→キャップの回転対策については過去記事[「「書く」を愉しむ六角軸万年筆【カランダッシュ エクリドール レトロ 万年筆 比較レビュー】]で。
 
この六角形の台座はエクリドールにも採用してほしいところです。
個人的にキャップがくるくる回る=キャップ内の密閉感に疑問、となるため精神衛生上良くない気がします。
 

 
続いて首軸はどうでしょう。
ペン先と首軸の接合部分は同じに見えますが、首軸自体のデザインが異なります。
例の六角形の台座の先には胴軸の各面に対応したスクエアのラインが入っています。完全に飾りデザインですが差別化という意味ではこのような違いがあっても良いかと。
 

 
ペン先の違いです。
ニブの基本デザインは同じですが形状は微妙に異なり、ヘクサゴナルの18金ニブの方が縦長でエクリドールのスチールペン先はより五角形に近くなっています。
 
左のヘクサゴナルは字幅がF、右のエクリドールはM。
切り割り付近の飾り刻印を見比べて気付いたこと。字幅によって飾り刻印の太さが違う?
まさかそこまで凝ってはいないと思うのですが、Mの方が飾り刻印が太く、Fは細くなっています。
 

 
ニブは18金のため、CdAマーク下の刻印は「18C-750」。
向かって右に字幅を表すFと、反対側には素材を表す刻印と思われる「Ste E(あとはペン先のマークでしょうか…)」。
 
モンブランのシルバー925部分に「Ste D」というのはよく見かけますが、これは国によって異なる刻印なのでしょうか。真意は不明です。
 
ペン先については後ほどじっくりと見ていきましょう。
 

 

インクの吸入方式についてと首軸の互換性について

ヘクサゴナルコレクション万年筆のインク吸入方法はカートリッジ/コンバーター両用式。
これはエクリドールと同じです。後継?にあたる高級モデルのバリアスもカートリッジ/コンバーター両用式。今のところカランダッシュに吸入式のラインナップはないようですね。
 

 
純正コンバーターはシュミット社のものと同じ。
「CARAN d’ACHE」の印刷が見えます。
 

 
現在はヘクサゴナルキューブにコンバーター、エクリドールにカートリッジを差しています。
インクは、コンバーターにはモンブランのパーマネントグレー、カートリッジは同じくモンブランのブルーアワー。
 
まだカランダッシュのインクを持っていないので一瓶くらい欲しいところです。
カートリッジは欧州共通規格のものが適合するため、モンブランや私の好きなカヴェコのカートリッジインクが使えます。
 

 
カランダッシュのヘクサゴナルやエクリドール万年筆の関心するところは、首軸と胴軸の間にOリングが設置されているところ。
万一のインク漏れに対応した設計。胴軸を戻す時もねっとりと閉まっていく感触が味わえます。
 
ちなみに画像を見てお気づきの方もいらっしゃるかも知れませんが、このヘクサゴナルコレクションの万年筆とエクリドールの万年筆の首軸は完全互換があり、エクリドールと首軸を入れ替えて使うことも可能です。
 
ですので、クリップ形状や軸の柄がエクリドールの方が好みという方や、純粋にエクリドールを金ペン化したい方はヘクサゴナルとの首軸交換をもってそれが叶うということになります。
(たまにタイプ55のように18金ペン先が搭載されたエクリドールも発売されていますが…)
 

 

ヘクサゴナルとエクリドールの筆記比較

最後は筆記感の比較です。
 

 
これが面白く、ヘクサゴナルとエクリドールで全く書き味が異なるのです。
まあ、スチールと金ペンで筆記感が違うのは当たり前といえば当たり前なのですが、他のメーカーのスチールと金ペンの違いに比べても180°、いや360°違う筆記感。
 

 
手元のヘクサゴナル18金ニブは細字(F)ですが、筆圧のかけ具合でM~EFくらいまでコントロールができるようになっています。
一方、エクリドールのスチールペン先は安定した字幅でのパリッとした筆記感がクセになる中字(M)。
 

 
コントロールはエクリドールの方が断然しやすいですが、これぞ金ペン!という筆記感が味わえるのがヘクサゴナル。
現行モデルではバリアスが同じ18金ペン先を装備しているため、カランダッシュの18金ペン先の書き味にご興味があるかたはバリアスをお勧めします。
 

 

ペンポイントを比較してみましょう。
 

▲上がヘクサゴナルの18金、下がエクリドールのスチールペン先。
 
ペン先の研ぎ方がまるで違います。
18金は平べったく先が少し上向いた形状、スチールは丸いペンポイントとなっているのが確認できます。
 

 
斜めから。
細字と中字の比較でもありますのでペン先の細さも違いますが、研ぎの違いを感じて頂けるかと思います。
18金ペン先はしなやかで切り割りがしっかりと開くため字幅のコントロールが容易なんですね。
 

 
キャップは尻軸にポストする事ができて、嵌合具合もパチッと明確です。
キャップをポストするとかなり全長が長くなるため私はポストせずに使用。
 
私は通常、万年筆を握る際ネジ切り部を持つのですが六角形の台座のお陰で非常に持ちやすく感じます。
ペン先のしなりと併せて、丸で細い筆を持っているかのような使用感。
使いこなすととめ・はね・はらいが効いたメリハリのある字が書けそうです。
 
 
さて、今回はカランダッシュの万年筆「ヘクサゴナルコレクション キューブ」を見てきました。
 

 
カランダッシュの高級ラインだとエクリドールが一般的ですが、如何せんスチールペン先。
その分、軸のサイズや持ちやすさ高級感はそのままに、金ペンの書き味が好きな方やペンケースのエクリドールを金ペンにグレードアップさせたい方にはヘクサゴナルコレクションはもってこいの軸ではないでしょうか。
 
すでに廃番となっているため、18金ペン先はバリアスで楽しむことができます。
オークションやフリマでたまに見かけることがありますので、上記の理由からエクリドールがお好きな方や、細軸の万年筆をお探しの方は狙ってみるのも良いかもしれません。
 
それでは今回はこの辺で。
最期までお読み頂きありがとうございました。

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